豚
重賞レースのパドックで人間達が目を光らせる中、二頭の馬が会話をしていた。
駄馬「この間のレース見たよ。ベストタイム更新!サラブレッドくんはすごいなぁ!」
サラブレッド「大逃げの『かけっこ太郎』くんには敵わないよ」
駄馬「その名前はよしてくれ、演歌歌手に買われて変な名前付けられちゃったの気にしてるんだから」
サラブレッド「ごめんごめん。かけくん」
駄馬「僕も脚には自信あるけどさ、サラブレッドの君にはとうてい及ばないよ。あぁ、せめて高地トレーニングのできる練習施設があればもっと逃げ切れるのになぁ」
サラブレッド「練習施設が足りないのかい?」
駄馬「僕ら馬だろ? 人間みたいに酸素カプセルに入れるわけじゃないし、山に行くのも無理がある。高地トレーニングができればもっと速くなれるのに…」
サラブレッド「うーん。それは問題だ。よし、買ってあげるよ」
駄馬「いやいや、そんなぁ。悪いよぉ」
サラブレッド「気にしないでくれ、僕と君は複勝の友じゃないか!」
駄馬「ありがとう!嬉しいよ!」
サラブレッド「どうせ非合法的に手に入れたお金だし、手元に置いておくほうが足がつくからね」
駄馬「うまい!かけっこだけに!」
サラブレッド「はっはっは。馬だけに!君といると本当に楽しいよ」
駄馬「僕だって同じだよ」
サラブレッド「それじゃ、レース頑張ろう」
駄馬「じゃあ、また後で」
そこへ、二頭のやりとりを一部始終見ていた他の馬が話しかけた。
「かけさん、アイツ約束守ってくれますかね?」
「大丈夫だよ。彼ほど木登りのうまい奴はいない」
「どういうことですか?」
「豚もおだてりゃ木に登るってね」
✳︎政治家がキーワードのショートショートで不採用。
加計学園問題と世襲政治家をストレートにdisった内容なのでどうせ忖度されて採用されないと思ってたので別にいいや感。 豚と馬のギャップをそのままオチにした。
#小説 #ショートショート
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