日々記:海とユーミンの青春
山も海も本格的なシーズン到来だ。
とりわけ地元では、静かだった海岸に、今年も海の家がどんどん建ってにぎやかになってきた。
夏が本番を迎えようとしている。
今も昔も、ここ湘南の海はわたしの心のふるさとだ。
まだ十代の頃、
わたしは親の仕事の都合で、東京都八王子市のJR八王子駅近くの繁華街の中に住んでいた。
近所のアーケードには「荒井呉服店」があって、それはつまりユーミンこと松任谷由実さんの実家だった。
昭和のおわりに近い頃の話。 あの頃のわたしたちの世代は、ニューミュージックと呼ばれるジャンルの登場に洗礼を受け、そのトップを疾走するユーミンのことをリスナーの皆が崇拝していた。
それと時期を同じくしてサザンオールスターズも「勝手にシンドバット」で華々しくメジャーデビューし、「いとしのエリー」をはじめとしたラブソングを多数ヒットさせていた、そんな時代だった。
(話についてこれない若い方、ごめんなさいね)
その頃、わたしが特に気に入っていたユーミンの1曲が「天気雨」。
🎵白いハウスを眺め 相模線に揺られてきた
茅ケ崎までのあいだ あなただけを想っていた
ちょうど初代のウォークマン(カセットテープで音楽を聴ける携帯ツールのこと、え?カセットテープ自体がわからない?? もう、ググってね)が発売された頃だったが、自分を含めて友達にも、持っている人は未だいなかった。
なので、音楽を聴けるのは自宅でラジカセ(ググって!)を前にした時に限られる。気に入った楽曲は、テープが伸びてしまいそうになるまで聴いたものだった。
「ねえねえ、日々樹ちゃんの彼氏って、湘南ボーイらしいよ。相模線に乗って、会いに行ってるんだって! ユーミンの曲を、地でいっちゃってるよね」
学校でそんなうわさが立った。
ちょっぴり羨望も混じっていて、わたしはむしろ得意な気分で、自慢こそしなかったが隠しもしなかった。
相模線の終点 茅ヶ崎までは、片道で2時間近くもかかるものだった。
休日には、朝早く始発に乗って出掛けて、日が暮れても帰って来ない娘の事を、親は良く思っていなかった。茅ヶ崎からわたしが帰宅すると、たいてい不機嫌な顔をしていたものだ。
1度だけ「今日は彼氏に江ノ島に連れて行ってもらったんだよ」と話すと、母が「あら、良かったじゃない。お母さんは修学旅行で江ノ島に行ったわよ」と、笑顔になったことがあったかな。
いろいろあったが、親の反対を押し切って、わたしはその湘南ボーイのところに嫁いで行った。
旧友たちは「湘南マダムの日々樹ちゃん」と呼んでくれて、そういうものがあるんかい!と初めて知って、くすぐったく思った。
その後わたしは、ちっちゃな湘南ボーイを2人産んで、この地で子育てをしながら年月を過ごし、新しい友達もたくさん出来て、いつの間にかオバサンになって、気がついたらもうすっかり湘南がふるさとになっていた。
それでも、
あの海とユーミンに彩られた輝く青春の日々は、ついこのあいだの出来事のように心に蘇ってくる。
🐟🐟どちらさまも、楽しい夏をお過ごしください🐟🐟
海の日に🎵
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