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ビジネス出張記038 : オマーン (ベリーダンス)
1. 古都
“シンドバッドの冒険”、“千夜一夜物語”と言えば有名な物語で、貿易商人シンドバッドの冒険話である。しかし、正直なところ物語の内容は今一ぴんと来ないが、シンドバッドのイメージだけは想像できる。ソハールは、そのシンドバッドの出身地と伝えられるオマーンの古都であり、海岸付近の小さな街として栄えている。
2. シンドバッド
街中に近いソハール・ビーチホテルに宿泊した。古都のホテルだけあって、ベリーダンスのショーも開催していた。1階の奥に、ひっそりと閉ざされたドアがあった。その重そうなドアを開けると、階段一段分の高さに椅子が三脚置かれた舞台があり、その向かいには小さなバーカウンターがあった。まだ準備中なのかと円卓を囲んでビールを飲んで雑談していると、Tシャツにジーンズ姿で3人のモロッコ人女性が登場した。彼女たちの表情は皆一様にやる気が無く、チンタラ歩いてきた。
3. 首飾り
気だるく椅子に座って少し経つと、急にバー内に音楽が流れ出した。音楽の唐突さとは裏腹に、3人が3人とも腰痛持ちのおばあさんのようなスローな動きで立ち上がり、少し揺れていた。最初は認識できなかったが、どうやら踊っているらしい。これが、本当のベリーダンスなのか、それとも彼女たちが素人ダンサーなのか…。しばらくすると、花の首飾りを持って店内を歩くインド人男性が現われた。説明を聞くと、首飾りを購入して気に入った女性の首に掛けてあげるシステムらしい。恐らくこの首飾りの数でダンサーの手取りが増えるのであろう、せっかくの機会だし、3人の中でも強いて言うなら1番やる気が感じられる女性にのみ花の首飾りを購入して首に掛けてあげた。それを見て、周りの客から、「3人全員にあげろ!」と野次が飛んだ。やる気の無い人にあげる筋合いは無いと、無視していると、恐らく野次った本人が残りの2人分の首輪を買っていた。どうやら共産主義的発想が根付いているらしい、中東の奇妙なエンターテーメントの経験であった。