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3月:変化を楽しみ、安定した心を作るレシピの作り方〜料理編

3月のテーマは、目には見えないけれどアーユルヴェーダで物質と捉えられている「心」がテーマ。月の半ばをすぎてお客さんと話していると、緊急事態宣言が解除されたのもあって異動が決まったり、子供の卒園、卒業などで大きな変化を感じている方が増えているようです。
変化には嬉しいことも多いはずなので、できるだけ前向きにその新しい波へと乗りたい!という方が多いことを願いますが、変化は体に大きなインパクトを与えますのでケアが必要です。

ただ、心のささやかな問題というのは、ちょっとした飲み物や食べ物の工夫、それから誰か近しい人のケアによってすぐに鎮静を感じることができることも特徴。そのため、心のレシピには日々の食事がとっても大切です。後編では「どんな料理が良いか」以外にも「どう食べたらいいか」について詳しくお話ししていきます。

心のアンバランスには、シンプルなスープが一番効く

アーユルヴェーダの食事法にはいろ色な言及がありますがそのうちの一つに「味付けが複雑すぎない」というのがあります。

疲れている時ほど、考えなければ理解できないような複雑な料理よりも、実家の味噌汁のような慣れ親しんだ味の方がずっと美味しく感じるものですよね。この「慣れ」のことをサンスクリット語では「サートミヤ」と言って大切にしているポイントです。

「心のささやかな問題というのは、ちょっとした飲み物や食べ物の工夫によってすぐに鎮静を感じるもの」と冒頭でお伝えしましたが、実際に、すごく怒っているときに一杯の白湯を飲んだり、寒くて凍えて不安になった夜に温かいスープを一杯飲めば、嘘みたいに気持ちが晴れた。という経験がある方は多いのではないのでしょうか。

この時、白湯はもちろんのこと、スープも味付けは簡単なものがよく、例えば人参をゆっくり煮て攪拌して、岩塩とギーで味付けをしただけ。といった一杯の方が美味しく感じるものです。

気持ちがざわざわしている時、複雑な奥行きのある味を解釈して楽しむような心の余裕はなくなっています。その代わり、簡単な一杯でもすぐにそのざわざわを消し去ることができるくらい、食べものは心のケアにとてもよく効きます。

温かい良質な油分を内側からも摂る

心のグナは「サットヴァ/ラジャス/タマス」の3種類。それぞれがドーシャでいうとラジャスはvataと、タマスはkaphaと関係性が近いこと。春の変化が多い時期はvataが増えるので、ラジャシック(ラジャスが多い)になりやすいとお伝えしました。

心のバランスを取るにはラジャスを減らす、タマスを減らす、と努力をするよりも「サットヴァを増やす」と考える方が近道ですが、vataケアも欠かせません。

vataケアといえば、その乾燥した感じ、冷えた感じ、軽くてふわふわした感じをケアするためにも「温かいオイルで内側からしっとり」するのが鉄板です。そのオイルはやっぱりギー。消化が軽く、純度が高く、生薬や食材の栄養を体の隅々まで届けるのを手伝ってくれます。

ギーは簡単に作れますので、日常的に取り入れるためにもご自宅で作ってみましょう。

ギーは炒め油にしたり、パンに塗ったりしても良いのですが「そのまま摂る」方がベターです。酸化させないに越したことがないので、手段としては
・味噌汁の最後に小さじ1/2杯入れる
・ホットミルクに小さじ1/2杯入れる
と言ったように、最後にひとさじ入れて飲む方がギーの良さを引き出してくれます。

気持ちがざわざわしやすいな、という人ほどギーをこんなふうにして摂ってみてください。
ちなみに、太白ごま油は温性で重性なので摂りすぎると消化に重く、ココナッツオイルは冷性で身体を冷やすので夏以外は控えるようにしましょう。

大切なひとと、やさしい気持ちで一緒に食べる

「サットヴァを増やす」行為のことをアーユルヴェーダでは「サットヴリッタ」と言います。日本語に訳すと「正善行為」。良い行いのことです。

サットヴリッタはそれだけで一つの記事が書けるくらい様々な1日の行動が記載されているのですが、一言で言うと「人に対していい感じの自分でいる」ことを目指せばいいのだと思います。

例えば、
・四つ辻で目があった人に微笑む
・道端で困っている人を助ける
・清潔な身なりを心がける
と言った親切な行為や人目に触れるのはもちろんのこと、
・日々の浄化法を行い、未消化物のない体で出かける
・玄関を掃除し、花を飾る
・寝具を清潔に保ち、適宜入れ替える
と言った人目に触れない自分の身の回りのことも出てきます。

一つ一つ紹介していくと大変味わい深いのが「サットヴリッタ」ですが、よく確認せずとも日本人なら誰もが理解できる「親切で清潔な行為」です。ただ、それを意識して過ごしてみると、自分自身も気持ちがよく、周りもいい気分になることなのです。

それは食事への向き合い方も同じ。消化の力を保つために「胃腸の火が神様だと思って、大切にお供物をするように食事を摂りましょう」とよくお伝えしていますが、これもサットヴリッタの一つです。

栄養がすごい!と話題のスーパーフードを揃えるよりも、茶碗一杯の白いご飯と味噌汁をゆっくり、感謝して食べることの方がずっとサットヴリッタです。

中でも、私がおすすめしているのは「大切なひとと、やさしい気持ちで一緒に食べる」こと。1人で黙って食べることを推奨しがちなアーユルヴェーダですが「美味しいね」とニコニコ笑いながら食べることは人の気持ちを和らげます。

不安な時、ざわざわする時ほど、大切なひとと向き合って、喋りすぎず、ゆっくりやさしい気持ちで食卓を囲む時間を大切にしてみましょう。そして、そうした時間を持てたことに感謝することが身体を滋養します。

変化を楽しみ、安定した心を作るレシピの作り方:重ね煮するカレーで腸内から安心するカレープレートを作ろう

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テキストでのお話と、料理のレモンストデーションの動画(*動画は2020年4月以降)の両方があって、見ながら実際に食事を作って楽しめるところがポイント。

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