「分かる」ことは「分ける」こと
道徳科の目標について理解を深めるには、道徳授業の実践家である坂本哲彦氏の考えが非常に参考になる。
道徳科の目標は「よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うため、道徳的諸価値についての理解をもとに、自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考え、自己の生き方についての考えを深める学習を通して、道徳的な判断力・心情・実践意欲と態度を育てる」である。
道徳科の目標は、一言でいうと「道徳性を養う」ことであり、これは、学校教育活動の全体を通じて行う道徳教育の目標と同じである。
道徳授業の目標は「道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度を育てる」ことになる。
先ほどの道徳科の目標である「道徳性を養う」というのは、「成長・方向目標」であるのに対し、道徳授業の目標は「より具体的な実践目標」と言えるのである。
道徳授業の目標を達成するための学習とは、 ①道徳的諸価値についての理解をもとに、 ➁自己を見つめ、 ➂物事を多面的・多角的に考え、 ④自己の生き方についての考えを深める学習である。
この①~④の4つは、道徳科の授業の特質であり、学習活動を支える要素、道徳科で保障すべき子どもの思考でもある。
だから、①から④のいずれかが抜けていたら、それは十分な道徳科の授業とは言えない。
①~④は2つに分けられる。
➁➂の「自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考える」は手段・方法的な特質、一方、①④の「道徳的諸価値についての理解を深める、自己の生き方についての考え方を深める」のは目的的、内容的な特質になるのである。
シンプルに言い換えると「①道徳的諸価値の理解をもとに、④自己の生き方を考え深める」学習を行うことで「道徳的判断力、心情、実践意欲と態度」を育てることになる。
そのために、➁自己を見つめ、➂物事を多面的・多角的に考えるという方法をとることになる。
①④の目的的な学習は、➁➂が相互に往還しなから充実していくのである。その結果、道徳的判断力、心情、実践意欲と態度が育つのである。
坂本氏の話を聞いて「分かることとは、分けること」という言葉を思い出した。文を分解し、分類し、つながりを考えることで理解が深まることを改めて実感したところである。