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身体を使い切るということ
経済アナリストの森永卓郎氏が亡くなった。
情報番組でヘラヘラ笑いながら歯に衣着せぬ発言。
皆が賞賛するようなお手本や綺麗事も、自身が胡散臭く感じたらあっけらかんとバッサリ斬り捨ててしまうスタイル。
口調は穏やかなのだけれど、聞いてるこちらがヒヤヒヤするほど辛辣な発言をしている時もあった。
有識者と喧嘩腰になっている姿も見たことがある。
あまりにも革新的すぎて周りの人たちからからかわれている時もあったし、ホンマかいな?と疑いたくなるような発言も…。
森永卓郎氏の発言が正しいのか間違っているのかは、正直、私にはわからない。
ただ、真っ直ぐで嘘がない人、
自分の信じた道を泥臭くてもひたすら突き進む人だということは画面越しでもよく伝わってきた。
自分の頭で考えず大勢に流されてしまう国民に対して、「考えろ!騙されるな!考えろ!」とガンガン警鐘を鳴らし続けていたように思う。
「膵臓癌なんですよ」
2023年末に突然の公表。
私が初めて知った時は情報番組の電話インタビューだったような気がする。
いつものあのヘラヘラした口調で話していた。
あまりにも淡々と話しているので、
これはブラックジョーク?
と一瞬戸惑ったほど。
その後、久しぶりにテレビでお見かけした時は少しお痩せになった印象があった。
以前からジムの広告塔になってスリムになっておられたから、そのせいもあったのかもしれない。
仕事をセーブされて闘病生活に入るのだろうと思い込んでいた。
ところがどっこい…
以前より露出はかなり減ったものの、ずっと仕事をしておられた。
顔色が悪そうでかなりお痩せになっていたけれど口調は相変わらずヘラヘラとバッサリ斬っていくスタイル。
数ヶ月前にネットで見た記事には家庭菜園を楽しんでいることも書かれていた。
仕事で同席した芸能人とニコニコしながらオフショットを載せておられた。
末期の癌だと言ってたけれど案外元気そう…。
そういえば高須クリニックの高須克弥医師も何年も前に癌を公表されていた。
全身癌だと言ってたけれど、最近もCMで元気な姿を見かけた。
少し前に亡くなられた樹木希林さんも全身癌だと言いながら何年も何年も元気そうな様子だった。
もしかしたら森永卓郎さんも癌だ癌だと言いながら、これからも論客として大なたを振り続けるのかもしれない…そんな風に思った時もあった。
しかし、先日とうとう亡くなられてしまった。
前日までラジオにも出演されていたのだそう。
ここにきて本も沢山執筆されておられた。
時折テレビにも出演されていた。
身体を極限までしっかり使い切って天に召されたような気がする。
病気のご本人やご家族にとっては不愉快に聞こえるかもしれないが、私は天晴れな生き様だなぁと思ってしまった。
「人は何のために生きるのか」
正直、私は意味などないと思っている。
人間も池の中のミジンコも大きな視野で見たら大差ないだろうと思っている。
神様もいるんだがいないんだか…理不尽な事が多すぎる世の中だ。
ただそんな世界だけれど、最期の瞬間に自他共に「しっかり身体を使い切った」と思われることは凄いことなんだと思う。
医療は最終的にそれを目指して存在しているのかもしれないと思う時がある。
さて自分は身体を使い切れるだろうか。
何のために?
他人のため、家族のため、自分のため…
善行を積むのも良いし、金を稼ぐためでも、旅行するためでも、趣味を楽しむためでも、何でも良いと思う。
(ただし犯罪を除く。)
最期の瞬間に「しっかり身体を使い切ったなぁ」と思えたらいいなぁと思う。
自分は考えすぎて、色々なことを心配しすぎて、身動きできなくなることが多い。
少しずつ変えていこう、人生の課題だ。
そして最後に、
森永卓郎氏のご冥福をお祈りいたします。
素晴らしい生き様を見せていただきました、ありがとうございました。