ジュジュ
昔、池袋のとある百貨店に石焼ステーキのお店があった。
子どもの頃、親に連れられてよく行ったのだが、ホントにとても美味しかった。
赤身のステーキを、自分たちでトングで熱い石に置いて十分な焼き加減になったら食べる。
ここまではどこのステーキ店と変わりがない。しかし、使用している国産のお肉が良かったのだろう。
熱さはほどよく、タレもお店限定?のものだったのか子どもが食べても素直な味だった。
しかし、そんな石焼ステーキのお店もとある形で閉店することになる。
それがBSE(狂牛病)騒動だ。マスコミで盛んに報道されていて、肉を食べると人体に悪影響だ、人の脳にも何か異常がでるとか連日のように報道されていた。
その日日本のお店から、肉屋が消えた。
かろうじて、やっている肉屋は鶏肉や豚肉を扱っているお店が少々。
しかも、そういう店ですら人はまばら。
私が家族と通っていた石焼ステーキは、誰もお客さんがいなかった。
「ステーキ、食べないの?」私は母に尋ねる。「危ないでしょ、今。」母がそっと呟く。
そして、、
1年だか半年かは忘れてしまったが、ようやくBSE騒動は落ち着いた。
地元のステーキ店にも少しずつ客足が戻っていく。しかし、石焼ステーキの店は赤字に耐えられなかったのか閉店してしまった。
店が閉店して、しばらくして何も無かったかのように新しい店が立つ。
マスコミの報道は時に激しさをます。コロナが猛威をふるった頃、潰れた飲食店がいくつあっただろう。
お店がたとえつぶれても、誰かが手を差し伸べてくれることはない。多少の補償金やら何かはあるのかもしれないが。
自分がオトナになるまでの間に、多くの店が出来ては潰れていった。
栄枯盛衰、というのか。会社自体、数年持って妥当というのが日本の常識だ。
あの頃、ステーキ店で働いていた大学生らしきバイトや若そうな店長は今何をしているのだろうか。
社長や個人事業主はたえず何かあった時の責任がある。
世の中の人は、「自己責任」で軽く済ませてしまうのだろう。