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ラストが秀逸「カラマーゾフの兄弟」(ドストエフスキー・著)を読んだ感想。【ネタバレ】

ロシアの巨匠・ドストエフスキーの最高傑作として上げられるのが「カラマーゾフの兄弟」です。

無神論や当時のロシアの格差社会がこれでもかと描かれます。
まさに現代の預言書です。
今回は「カラマーゾフの兄弟」を読んだ感想です。


「カラマーゾフの兄弟」の登場人物とあらすじ


まず「カラマーゾフの兄弟」の登場人物を紹介しておきます。

フョードル・カラマーゾフ


カラマーゾフ3兄弟の父。
金欲・色欲・飲んだくれと煩悩の塊(かたまり)。
子供に対しても、傍若無人の振る舞いだが、アリョーシャだけには愛情を示す。

ドミートリイ・カラマーゾフ(ミーチャ)


カラマーゾフ家の長男。
いわゆる放蕩息子で、激情型の人物。
金使いの荒さや泥酔が原因で様々なトラブルを引き起こす。
典型的なロシア人でもある。

イワン・カラマーゾフ


カラマーゾフ家の次男。
理系の大学を出たインテリで無神論者。
アリョーシャも知性的な兄として慕っている。

アレクセイ・カラマーゾフ(アリョーシャ)


カラマーゾフ家の三男。
伝統的な良心を持った青年。
温厚篤実な性格で、父や兄たちのために奔走する。
ゾシマ長老を敬愛している。

スメルジャコフ


フョードルの私生児。
カラマーゾフ3兄弟にとっては、腹違いの兄弟にあたる。
カラマーゾフ家では使用人のような扱いを受けている。
皮肉屋で、ドミートリイやイワンにとっては常に目障りな存在。

ゾシマ長老


アリョーシャが所属する僧院の長老。
アリョーシャが最も敬愛する人物。
生前、アリョーシャには還俗する事を勧める。

グルーシェニカ


フョードル、ドミートリイ親子を翻弄する女性。

金と色に目のない俗物・とにかく素寒貧の貧乏人が出て来る、などの点がドストエフスキー作品の特徴です。
よって妙にリアリティがあります。
そして生に対する執着心が尋常ではありません。
どんなに貧乏でも悲惨でも生きてやる、という気概が登場人物から伝わって来ます。

ラストは「友愛」で締めくくる。


エピローグではアリョーシャと少年たちが、「今後どんな大きな不幸に出会おうとも、今日の気持ちを一生忘れないようにしましょう。」と誓いを立てます。
そしてアリョーシャは、クラソートキンやカルタショフたちと共にイリューシャの追善供養へと向かうのです。
このエピローグは秀逸です。
思わずペテルブルグの風景が頭に浮かんでくるわけです。
これまで散々ドロドロな世界を描いきて最後、実に爽やかなシーンで終わっています。
「罪と罰」と共通する点ですね。
またラストが男女の愛ではなく、アリョーシャと少年の友愛であるという点に好感が持てます。

ドストエフスキーの死因


ドストエフスキーが亡くなったのは、1881年1月28日です。
原因は肺動脈破裂です。
3日前に落ちたペン軸を拾おうとして重い棚を動かした時、喀血しています。
これがなかったら、もっと生きていたんじゃないかと思うと残念です。
ドストエフスキーの場合は、ペン軸が死の遠因でした。
何が命取りになるかわかりませんね。
見出し 「カラマーゾフの兄弟」は未完なのか。
いわゆる発表された部分が前半で、後半はアリョーシャが修行の旅に出る構想があったと言われています。
ドストエフスキーが前半部を書き上げた3ケ月後、肺の病気で突然亡くなってしまったので、後半の内容に関しては、はっきりしません。
作者自身が自らの死をさとるような病気であれば、続編の構想も資料として残っていたかもしれませんね。
よって「カラマーゾフの兄弟」のその後は、読者の想像に委(ゆだ)ねられています。

まとめ

どんな艱難辛苦に会おうとも、「良心」や「友愛」と言ったメンタリティを持ち続けられるか、がこの作品のテーマです。
どの時代でもそういう「徳」を養うのは難しいものがあります。
真正面から物事を見つめる事が大切です。
都合の良い、キレイ事ばかり書いていては読み応えもありません。
最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。

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