【観劇記録】ピローマン
10月12日に新国立劇場で上演された「ピローマン」を観に行きました。
はじめての観劇記録でつたない文章ですが、よろしくお願いします。
※あらすじなどは紹介しておらず、観に行った人向けの感想です。
※共感や解釈違いなどがあればコメントいただけると嬉しいです。
▼観に行こうと思った理由
今回、上演されるのを知ったきっかけは成河さんの告知です。
ただ観に行こうと思った理由はズバリ『チケット代』と『物語』でした。
ピローマンはチケット代がA席7,700円。B席3,300円です。
普段はミュージカルを見ることが多く、
S席15,000円越えが当たり前の自分にとっては驚愕のお値段!
(新幹線片道代より安いチケット初めて…)
でも正直、この価格帯だからこそ
「観に行ってもいいかな」という気持ちになったと思います。
はじめて観に行くお芝居で、自分に合わなくても許される値段というか。
正直失敗してもまあいいかなと思える値段というか。(大変失礼)
また作品ですが、告知直後は観に行く予定はありませんでした。
あらすじを読んで楽しそうなお話ではなかったので。
ただ成河さんが出演されるのでどんな作品か気になり、
過去の上演時の感想レポートや
物語の全容が書かれた論文があったので読んでみたところ、
主題である「ピローマン」の物語がじんわり心に残り。
これは、舞台全体を通して物語を深く知りたいと思ったのが
観に行こうと思った理由になります。
▼観劇後の感想
悲劇なのに?
ピローマンはトリガーアラートに書いているように
児童虐待や暴力的なシーンも含まれている物語でした。
(私はそれよりも扉を閉める音にビビりまくっていましたが)
ただ観劇後はなんだか晴れやかな気持ちでした。
そして妙に晴れやかな気持ちのまま、流れるように
入口前で販売されていた雑誌『悲劇喜劇』を購入しました。
そして新幹線の中でどうして悲劇を見たはずなのに
こんなに晴れやかなのか?疑問に思いました。
半分我に返ったに近い感覚です。
悲劇の中に最後は『救い』を感じてよかったと思ってたけど
本当に『救い』のあるラストだったか?と。
救いのあるいい結末だと思ったのは
撃たれる数秒前、カトゥリアンの物語の中で
ミハエルは弟の書く物語を選んだから?
カトゥリアンの物語が燃やされなかったから?
事実だけをいってしまうと
ミハエルが兄の物語を読むためにピローマンに応えなかったのも
カトゥリアンにとって都合のいい物語(妄想)ですし
物語もただ50年間、保管されただけです。
誰にも読まれることなく、ゴッホのように死後評価されることもなく。
…
自分なりに考えた結果、『救い』と感じたのは
『カトゥリアンが物語から解放されたから』かなと思いました。
ミハエルは直接的に両親から暴力を受けている被害者ですが、
カトゥリアンも両親の実験に巻き込まれた被害者の一人です。
両親からの洗脳と言ったら、カトゥリアンの作家人生を
否定することになりそうですが、
警察の取り調べ中に自分の物語を読む(読まれた)ときの嬉しそうな表情。
そして、自分の死よりも物語の保存を願うカトゥリアンは
物語に囚われているようにも思えます。
だからこそ、流行りの救いのない結末ではなく、
中途半端でも物語を「これでもいいんだ」と、
諦めるカトゥリアンを見て、私は安心したのだと思います。
「よかったね」と受け入れることができたのだと思いました。
ちなみに最後のシーン。
私はちょうどカトゥリアンの背中の位置に座っていたので
表情が分かりませんでした。
弟が物語を書けるように、今のままでいいといったミハエルを
カトゥリアンはどんな表情でみていたのか…。
反対の席の人は表情がみれており、もちろん『正解』があるわけですが
物語の余韻だと思って、どんな表情をしていたのか
想像するのを楽しもうと思います。
ただ、誰か最後の表情についてブログやXで呟いていないかなと
調べたりもしています。やっぱり気にはなる(笑)
これがブラックコメディか…!
今までコメディミュージカルは観たことあったのですが
ブラックコメディは初体験です。
コメディミュージカルは「ここ!笑うところ!」のような
分かりやすいボケやツッコミがあるのに対して
この作品は「ここで笑いをいれるんかい(笑)」シーンや
会話の掛け合いでクスっと笑えるシーンがありました。
ちなみに、ここで笑いを入れるんかいシーンはもちろん(?)
『小さなキリスト』に登場する女の子です。話し口調がギャル。
センターステージの良さ
真ん中に舞台があり、舞台を挟む形で客席がありました。
舞台と客席が近く、ほとんど段差がありません。
また役者さん越しにお客さんが目に入ります。
いつもなら舞台と客席には明確に区切りがあるのですが、
客席で挟んでいるためか、今回はそれらを感じませんでした。
とてもフラットな空間。
なので、ピローマンに置いて私達は観客ではなく
物語を見守っている”傍観者”のような気分でした。
(…ここもっとうまいこと言語化したい)
役者さんもエンドステージとセンターステージでは、
演じるうえで意識の違いはあるのか気になるところです。
▼感想まとめ
「面白かった」の一言に尽きます。
役者さんの演技、センターステージを生かした演出、
物語の構成。すべてにおいて大満足の劇場体験でした。
そして「もっといろいろなお芝居を観たい」と思いました。
やっぱり私は劇場に行ってお芝居を見ることが好き!
批評家でもなんでもないので無意味かもしれませんが
観劇後に『あのシーンは良かった・あのシーンは何の意味があった?』など
あーだこーだ頭の中で反芻する時間や
観終わったあとに、物語で頭がいっぱいになるこの時間が
たまらなく好きだなあと思いました。
まだまだ小川さんや役者さんのインタビュー記事、ほかの方の感想を読んで
この作品を味わいつくしたいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
(余談)
いつもミュージカルを観に行くときは
当社比「気合を入れたお洒落」をしていくのですが
今回はこの格安チケット代も含めて、魅力だと思ったので
「ふらっと東京にきて偶然お芝居を見に来た人」の装いにしました(笑)
郷に入っては郷に従え。(意味が違うかもしれない)
ふらっと観に行ける値段なのに、この満足感とクオリティ。
東京住みの人がうらやましい限りです。
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