空を飛ぶ瞬間、星を見上げて地面を蹴り上げる
ついに来た。
6月末にブレスレットを購入したのだが、作品の美しさと作者の下田裕也さんの人柄に惚れ込んでしまって、すぐにオーダーメイドを頼んでしまった。
私は基本的に、16年前にブログで知り合ったアクセサリー作家さんからしか天然石アクセサリーは購入していなかった。
その方は光栄にも私のブログ、小説のファンでいらして、現在のnoteに書くように赤裸々に自分の内面をさらしていたから、特に石やデザインを指定しなくても、しっくりくるものを作ってくださった。
お体の弱い方で、また数年前からご家族の不幸も続き、今はものを作る気力がないとお休みされている。
だから、下田裕也さんのブレスレットを見るまで新しい石が欲しいとか思わなかったのだが、一目惚れしたのだ。目が合ったのだ(私はこれを本でも洗剤でもフライパンでもよくやる)。
完全なオーダーメイドしか頼んだことのない私は、予算と、現状と、こうなりたい未来を伝えてお願いした。
そのときに言った言葉は、
「なぎの人生において最後の一本になるような特別なブレスレットを作って欲しい」
思い切ったお願いである(予算も自分が出せるだけの最大の金額を設定する)。
完全お任せでお願いしたのだが、こういう石を使ってこういうデザインでいかがでしょうと提案があったとき、即決でもよかったのだけど、なにか気になる。
それは、プラチナルチルクォーツと、ゴールデンルチル、シトリン、水晶で構成された、きらびやかでありながら透明感もあるブレスレット。
ため息が出るほど美しかったが、私は素直に感じたことをメールした。
「プラチナルチルがシリウスなら、ゴールデンルチルはカペラ、シトリンは明けの明星と宵の明星とするなら、それを彩る『夜空』として、紫系の石を組んで欲しい」
オーダーしたときは星空をイメージしてなど思ってもいなかったはずだった。
しかし、すらすらとこの言葉は出てきた。
次の日、美しいアメシストを組み入れた写真が送られてきた。
その日朝からYouTubeをかけ流していたのだが、異常なほどガーデンクォーツの動画が上がってくる。
ガーデンクォーツ。
昔欲しかった石。
しかし、好きな「庭」を見つけれず、手に入れることを諦めた石。
忘れていた石。
私は、このシンクロニシティーの件をメールして、ガーテンクォーツを組み込んで欲しいとお願いした。
良い仕入れ先があるので数日待って欲しいと返信。
数日後、ガーデンクォーツを組んだブレスレットの写真が送られてきた。
見た瞬間、これだ、と思った。
「夜空を飾る星達を見上げるには、地球という大地が必要でした」
この組み合わせで制作をお願いしたときに書いた言葉。
私は自分でブレスレットを組んだりすることもあるけれど、どう組み替えても納得出来た試しはないし、テクニックがないのでよく切れる。
餅は餅屋。
身も蓋もない言葉だけれど、信頼してお任せ出来るならプロに任せた方がいいと思った。
そうして、完全オーダーも素敵だけれど、こうやってアイディアを出し合い、最初は自分でも思ってもいなかった具体的なイメージが沸いてきて、それを視覚的にイメージできるように言葉で伝えられて、最終的に納得出来るブレスレットが出来た。
不思議。
自分の家にあふれるほど石はあって、ビーズもネットで買えるけど、この組み合わせは下田さんでなくては作れなかっただろうし、そうしてそれを「なぎの最後の一本」に最終的にカスタマイズしたのは私。
「視覚的、色彩的なイメージがないと制作は難しい」
と最初に言われていたから、私のあさんぽ写真をメールしたり、こうやって言葉で伝えて出来た、私のブレスレット。
人に自分の希望を言葉で伝える難しさ、曖昧なイメージを視覚化出来るような言葉選び、それが繋がって、最高のブレスレットが出来た瞬間、震えるように喜びが私に訪れた。
それが、ついに来た。
下田さんは制作途中に何度も写真を送って下さったから、知っているはずなのに、見たこともない輝きを放つブレスレット。
私はこだわりの強い人間だから、今も手元にある石はどれも思い入れの強いものばかりだ。
その石たちも愛おしい。
しかし、このブレスレットは、可愛い子猫の集団に豹が飛び込んで来たような圧倒的迫力のしなやかな強さを感じた。
私は石に特別は力があるとは思っていない。
美しい、ただそれだけで選んできたので、こういうことを言うのは憚られるのだが…
初回、下田さんのブレスレットを購入した次の日、全く思ってもみなかった所からブレスレット代分の臨時収入があった(ポメラ代くらい…)。
(ポイ活で貯めたアマギフを投入したので若干支払った金額は安いが)
今回のオーダーブレスレットが完成したと連絡が来た日、はじめて私の記事がnoteでオススメされた。何がどうあれ、文章が売れた。
プラチナルチルは今回初めて知った石だが、興味を持って調べたら、「自分の人生の舞台で真剣に生きているか問いかけ続ける」、「不要な情報を見極めて自分を守れる」、「本当の自分に戻っていく」という意味があるようだ。
まあ、難しいことは考えないで、このまばゆさを楽しめばいい。
これだけの質の石、作品としてのクオリティを考えると、むちゃくちゃ安かった(提示した予算よりかなり安くて驚いた。石代だけしか取ってらっしゃらないのか?)。
「最後の一本」、などと言っておいて、すでに新しいブレスレットの具体的な石やデザインを考えている。
「石は石を呼ぶ」「石に呼ばれる」といったことがあるそうだが、私に似た石好きな人間が世界にあふれていると考えると、現実ではどれほど離れていても幾つもの星座を象る星達に見守られるように、私の孤独を癒やしていく。
石たちは何も語らない。
けれども。
見つめるだけの愛があるなら、私は石を愛してる。
大切にしよう。