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お風呂場エスケイプー母という呪縛娘という牢獄
親子というのは歪な関係だ。なんでも言えてしまうからケンカは白熱する。
友だちや職場の人には吐けない暴言をぶつけることができるのに、ささいな恋の相談はできなかったりする。
近いほどこじれることが増える関係。
家族と口げんかしちゃった日、この本の表紙が目についた。母の呪縛を受けてるわけじゃない。ただ、愛とか思いやりという言葉にすり替えられる押しつけは娘にとって呪いだ。
血のつながってない他人なら、鬱陶しい相手は縁を切ればいい。親子はそれが難しい。血のつながりは消せないし、簡単に切れない。迷惑なことも「私のためを思って」という側面があることを理解してしまっているので、ぞんざいにできない。
「母という呪縛娘という牢獄」は、実際に滋賀で起きた殺人事件を題材にしたノンフィクション。医学部9浪を強いられた娘が母親を殺してバラバラにしてしまった事件。記者が被疑者と手紙のやり取りをかわし、事件に至るまでの経緯、事件の日の心持ち、裁判の途中で容疑を否認していた娘が自白に至った理由など事細かに書かれている。
ポカポカのお風呂で読むには、いたく冷酷な内容の本だったか…。事件こそ、お母さんをバラバラにしているのだから、非日常的な、自分とはかけ離れた世界の話なのだろう。
ページをめくってみたら、誰もが共感できる親子の話がそこにあり、ひとつ間違えればどの親子でもこういう悲しいことが起きる可能性を秘めているのかなと思わされた。
すべて娘サイドで受験命、学歴命の母親の話を書いてある。ひどい母ちゃんだなと同情もするし、暗い気持ちが芽生えるのもチョビッとだけ分かる。窮屈で行き場がない切っても切れない縁。娘という牢獄。
ただ、母親サイドのストーリーも見てみたかった。最初はきっと、愛する娘のために…の純度100%の気持ちがすべてだったと思うから。
こじれて、ねじれて、愛が呪いになり、親子というものを牢獄に化けさせたんだと思う。
終盤は裁判のことが描かれている。結局、母親殺害という過ちを犯した娘が救われるのは血のつながりだった。父親が見放さないでいてくれたことで読んでいる私も救われた。
血のつながりには敵わないや。
私も息子を想う気持ちが呪いにならないよう、せめて魔法どまりでいられるよう、親子であっても距離を大事にしたい。もし、息子が何をしでかしてもいちばんの味方でいるぞ!
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