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あなた

 あなたと普通の話がしたい。パンを買うなら何パンを買うのか、カレーパンとあんパンは外せないとかベーコンエピが好きだとか。洋服を選ぶときのポイント、ラーメンなら麺はどうか味噌か塩かしょうゆか豚骨か。

 あるいは22時台のニュースで、住宅街に突然カルガモが出現!みたいな、重大報道があれば吹っ飛んでしまうようなものについて語りたい。

 私が知らない、あなたの得意分野についての話を、三割分かったふりして、実は全然理解できないまま、時々質問しながら聞きたい。あなたの話に被せて質問してしまうので、あなたは少しムッとする。私は焦ってごめんねと言う。サイドテーブルには紅茶。

 私はあなたがどう答えたか、つぶさに覚えている。半熟卵など余計なものが入ってないカレーパンを買いに行ったり、味噌ラーメンのスープに必ずにんにくを入れるようになる。

 あなたは「そんなこと言ったっけ?」と言う。あなたが私をどう評したかも忘れている。私は今も心の支えにしているのに。

 でも、あなたは私が何かの折りにこぼした言葉を覚えていて、「そういえばこういうことがあったよね」と言う。私が全く忘れてしまっているような、そんな些細なことを覚えているだなんて。あなたはしまったという顔をする。私は顔がにやけてしまうのを抑えないといけない、あなたのために。

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紅茶と蜂蜜
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