本屋というアップデート
本屋に行くと、自分の情報が更新される気がするのだ。
僕は本屋に行くことを習慣にしている。特別な理由などはなくて、物心ついた時から暇な時は本屋に行くのが習慣だった。
本屋は、ただ本が置いてある場所ではない。その時の時代のトレンド、世間が注目していること、求めているものが形となって現れている場所だ。
コロナ感染症についての書籍、自粛期間の過ごし方の雑誌、最新ファッションや最新家電の話。平積みされている今人気の漫画や、本屋が売りたい小説など、世の中のニーズと供給が凝縮されている場所が、本屋なのだ。
気になったタイトルの小説を手に取り、パラパラとめくってみて、気に入ったら買ってみる。お気に入りの漫画の新刊が出ていることを知る。実用書のコーナーでうんうんと何を買うか迷ってみる。そういった行為も、愛おしい。ネット販売では得られないものが、本屋にはある。
本屋によって用意されたコーナーもそれぞれ魅力的だ。
入口には、人気作や話題作が並んだ、一番見てもらいたい本が並ぶ。ここを見ることで、今一番売れている本はなんなのか(一番売りたい本はなんなのか)、世間がどんなことに注目しているのかを、見て取れる。例えば、頭のいい話し方の本や、泣ける小説の本、世の中がどんな本を求めているのか、感じられるような気がする。
小説のコーナーには、店員さんが作ったポップがつけられている。一番衝撃を受けたミステリーだったり、悲しい物語に涙が止まらなかったり、恋愛小説に共感したりしている。大事なことは、そこに店員さんの想いが込められていることだ、その感動が大きかったにせよ小さかったにせよ、作品を読んだ体験を文章にしている。その文章の向こうの感情を読み解くのも、また乙なものだ。
漫画本コーナーを見ると、今映像化している作品や、子供たちに人気の連載漫画などが見て取れる。鬼滅の刃は爆発的な人気で最新刊が売り切れていた時期もあった。僕のヒーローアカデミアや、ワンピース。別のコーナーに行くと、少し大人向けの漫画も並んでいる。キングダム、王様ランキングなど、長く続いている作品や、最近注目を浴びた作品が、堂々と陳列されている。漫画家の血と汗の結晶が、数百円で買える現代は恵まれた時代だ。
児童書コーナーを見ても面白い。子供に読ませる本というのは、安心して読ませることのできる本で、ある程度の質が保証されているものが多い。そして、そういうものは昔の名作が多いのだが、そこに交じって最近出てきたキャラクターの本などもあるから、時代の流れを感じる。チコちゃんや、おしりたんていの本など、子供にヒットするキャラクターというのは、大人の感性とはまた違うものだ。
それぞれのコーナーの顔は、時代によって変わっていく。消えていく本もあれば、いつまでも人気であり続ける本もある。本屋には、そんな時の流れを受け入れてくれる大きさがある。1冊を作るのに、何日も何か月もかかる本には、きっと魂が宿っていて、その魂の集まるところの本屋には、特別な雰囲気を感じるのだ。
本屋に行くと、時代に触れることができる。本屋に行くと、自分の情報が更新される気がするのだ。1年前、マスクが当たり前の世の中になるなど、誰も予想しなかった。そんな激動の時代だからこそ、自分の中の情報を新しいものにするために、僕は本屋に行くのだ。