田畑の授業を東京理科大学生が参観すると①
「夏の葬列」の授業二クラスの授業を参観しての感想と質問です。ご一読ください。田畑が回答していきます。
田畑先生
本日は貴重な授業を見学させていただき、誠にありがとうございました。私が中学生時代に受けた授業とは全く異なる、生徒主体で展開される授業形式がとても興味深かったです。また、先生の授業では眠そうな生徒が一人もおらず、皆が考えながらメモを取っている姿が非常に印象的でした。また、私自身も手を挙げて参加したくなりました。
質問
先生はクラス全員とコミュニケーションを取っていらっしゃいましたが、これは意図的なものなのでしょうか?
田畑回答 今日は意図的に声をかけています。原則、思考中は控えますが、今日は発言への促しを試みました。参観者がいる時こそ子どもたちは、やってみようかなあーと揺れているからです。背中をそっと押してあげたいからです。
それは、子どもたち一人一人は考えの根拠と理由を持っているのを私は知っているからです。あとは、踏み出せるかどうかなのです。
最初のクラスは乗っていたので、原則見守りました。元気良すぎるくらいでしたね。
次のクラスは固定化していたので、一人一人にそっと促しをしました。多くの子に発言のチャンスを作りたいのです。一歩踏み出すことの価値を体感させたいからです。
2.1組と2組では、少しクラスの雰囲気が異なると感じました。それぞれのクラスの特徴や、授業を行う際に気を付けている点について教えていただけますでしょうか?
田畑回答 それぞれのクラスには集まったメンバーによる「関係性」があります。基軸は変わりませんが、クラスの個性に応じて授業づくりをし、そして私自身も、そのクラスのカラーに合わせます。子どもたちの関係性が授業に大きな影響を与えます。この関係性づくりが授業づくり・改善には欠くかとができません。ここポイントです。
特に「冷たい笑い」はしないようにと4月から繰り返しています。
今日の授業見学の感想です.
いただいた資料の”こんな国語教室を目指したい”のところ,及び”「意見をつなぐ学び合い」の授業像”のところで書かれていた「理念」をどのように実践されているのか,という点で見学しました.
2コマを続けて拝見して,意見をつなげる・広げることを楽しんでいる生徒と,自分の意見を強く押し出したい生徒がみられる中で,議論を通して成長するとは自分の意見が変わることなのではないかと考えました.そう考えると,教材の選び方も,幾つもの解釈ができるものを選ばれていて,多くの生徒の多様な解釈を通して自分の中に多声的な解釈を作れることが発達であり,その声によって支えられる安心感を得られるのではないでしょうか.総じて「国語『で』教える」授業だと感じました.
黒板に「ねらい」=達成したい状態,「課題」=達成のために実行すること,を書いて確認するところから始まることで,授業のルールを共有し,ぶれさせないことを大事にしているのだなと感じました.
4月の初めのゴールデンタイムにどんな導入をしているのか伺いたいです.
田畑回答 ねらい・課題・振り返りは毎回です。国語は言葉の学習で盛り上がると何をやっているかわからなくなる危険性があるからです。
「意見をつなぐ学び合い」の約束事を伝えましたよ。そのためには
・否定しない国語教室づくり
・冷たい笑いをしない…です。
それから,田畑先生はあの文章から「読み取らせたいこと(正解的な読み方)」は決めていないのでしょうか.各クラスでそれぞれに構成された読み取りや理解,結論のゆくえはどこでもいいのでしょうか.
田畑回答 文学教材の読みは原則自由です。ただし、言葉に拘る教科ですから、「なんとなく」ではなく、文章の根拠に拘ります。私自身の解釈やゴールは原則示しません。それは、話し合いを通して、子ども一人一人が自己決定することを重視しているからです。この積み重ねによって、自己肯定感の向上や自己効力感が育つと考えています。
発言していない生徒の考えの変化はどのように看取るのでしょうか.
田畑回答 話し合い途中はメモ等です。途中はそっと見守ります。話し合いをした後に、一人一人が学習作文を書きます。それを通して評価します。ここをとても重視します。発表しなくても子どもたちの心の中は揺れ動いています。多くは表現したくて堪らないのです。それでも積み重ねてた学校教育によって多くは自信を失っています。その内なる力を引き出したいのです。私が育てたいのはここです。
あと,1組の無罪組で川に流れてしまった人を助けるかどうかと比較したこと,2組の無罪組でヒロ子さんを殺したのは艦載機であって彼ではないと指摘したこと,あのとき中2もやるじゃない,と感じました.
あの1コマのうちに変わっていく生徒を見届けられて嬉しかったです.ありがとうございました.
田畑回答 子どもたちは可能性を秘めています。それを信じることだと思います。
ありがとうございます。
次回に続きます。