岸見 一郎、古賀 史健『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』
2013年12月発売の本書ですが、本日のAmazonのランキングでも、倫理学入門で堂々のベストセラー1位でした。
世界的にはフロイト、ユングと並ぶ心理学界の三大巨匠とされながら、日本国内では無名に近い存在のアルフレッド・アドラーの思想が分かりやすく学べると人気のようです。
アドラー心理学を、哲人と青年の問答式で紐解いていくのですが、まさに「劇薬」的処方と言えるもので、私たちの日常で当たり前になっている考え方がことごとく打ち砕かれるところから始まります。そして読者は、青年とともに、哲人の語りを通して「どうすれば人は幸せに生きることができるか」を理解していくことになります。
初っ端の衝撃は、過去の経験の結果が今の自分であるという「原因論」で考えがちな私たちの認識にノーがつきつけられることです。ノーの理由については問答に詳しく、そこの論法がアドラー独自のもので面白いところではあるのですが、割愛するとして、
という道筋が示されていきます。
また、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と言い切り、「他者の課題には介入せず、自分の課題には誰ひとりとして介入させない」という考え方も思い切った考え方です。「他者の期待を満たすために生きているのではない」のだからと、「他者から承認を求めることを否定し」、「自分の信じる最善の道を選」んでいくなど、「他者を変えるための心理学ではなく、自分が変わるための心理学」が展開されていきます。自分であり続ける「自由」、こそが「他者から嫌われること」であり、この「嫌われる勇気」はタイトルにもなっています。
とは言っても主観的に生きろというのではないところが、一番の特徴です。「自己受容」した人間だからこそ「自己への執着を、他者への関心に切り替えて」「他者を信頼」することができる。生かされている自分としての「共同体感覚を持」って、自分が「なにを与えられるか」を考えながら「いま、ここ」を充実させていく。アドラー心理学とは、「今この瞬間から変われるし、幸福に」なれると背中をおし、また「勇気」とありのままの自分であることに自信をくれる心理学だなあと感じました。他人を気にせずに、しかし他人と生きることを第一に考えるというのは、私たちに一番に必要なものなのかもしれません。
続編も発売されています。続編については、また明日……。
(余談:限定特装版が出ていたので購入したのですが、かなり金ぴかで驚きました@笑)