【第19回】満足感のある授業をつくる④ARCSモデルを用いた授業設計と評価について教えてください
~看護教員から教育学者へ~
前回、「希望の登校・満足の下校」を目指していきたいと述べましたが、それをかなえるためにはARCSモデルを学校全体に広げていくことが大事であるというアドバイスをいただきました。まさに、組織として教育力を上げるために必要なことだと思いました。学校全体に広げていくにあたり、もう少し教えていただきたいことがあります。今回は、梅澤からの質問を中心に書いていきます。
1.ARCSモデルを活用した授業の効果をどのように評価するか?
私は最終学年である3年生の科目「医療安全」を担当しています。この科目では、他の科目で学習してきた援助場面で起こりやすい事故とその防止策を踏まえ、個人だけでなく組織として医療の安全をどのように守っていくかを学ぶ科目です。学生のリスク感性を高めたいというねがいもあります。この「医療安全」に西野先生から教えていただいたこと(学生の興味をひく授業のタイトルづくり、授業で何ができるようになればいいのか学生がわかる明確な目標設定、学生が価値を感じられる課題の提示、経験との関連づけ、LMSを活用した小テスト、etc)を取り入れてみました。
グループワークの様子や学生のレポートの内容を見て、意欲的に学んでくれたかなと感じています。グループワークでは、どのグループも想定以上のよい意見をあげてくれました。また、アウトプットの機会を設けるために毎回の授業後に「授業を受けて考えたこと」を記載してもらっているのですが、学生は自分の傾向や経験を踏まえ、患者さんの安全を守るためにこうしていきたいという考えを述べてくれました。負担になりすぎないよう100~200字程度に文字数を指定しているのですが、その倍以上の文字数で熱心に書いてくれる学生が7割以上いました。さらに科目終了時のレポートには、ほぼ全員の学生が「今後も学び続けていきたい」と記載してくれました。このような学生の反応から、学習意欲を高めることができたのではないかと感じたのです。
しかし、医療安全については卒業後の日々の看護業務に直結する内容なので、今後も学び続けていく必要性を強く感じやすいという科目の特徴があります。また3年次の科目であり、学習意欲が高まる学年でもあります。さらに、学年の傾向として真面目に取り組む学生が多いということもあります。そのため、学生が意欲的に学べたのはARCSモデルの効果であるとは言い切れず、あくまでも私の主観でしかないのではないかと感じています。教員の自己満足だけで終わらせたくはありません。是非、ARCSモデルを活用した授業の効果を評価する方法について教えてください。
2.ARCSモデルを踏まえた授業設計について教えて下さい
前述したように「医療安全」の授業では、西野先生からアドバイスをいただいた具体的な方法を取り入れてみましたが、正直ARCSモデルを活用したという実感がもてていません。実感がもてるようにするにはどうしたらよいでしょうか。「私はARCSモデルを取り入れて授業を行っているんだ」と胸を張って言えるようになるためには何かが不足しているように思います。授業設計の段階でARCSモデルを踏まえることができていないのではないかと考えたりもします。学習指導案のフォーマットレベルで工夫できることはありますか?西野先生がARCSモデルを活用した授業設計において、留意していることなどを教えていただきたいです。
3.ARCS-Vモデルとは?
インターネットで検索すると、ARCSモデルの定義や具体的な実践報告がたくさん見つかります。その中で「ARCS-Vモデル」というものが目に留まりました。ARCSモデルをより進化させたものなのでしょうか?欲張りですが、「V」についても少し教えていただきたいです。
西野先生から「先生方はARCSモデル修得の最終段階にある」と言っていただき、謙遜する気持ちはありますが、私たちにとって満足感の高い学びができているのは間違いありません。酒井先生は、自分が感覚的に行っていた教授活動をARCSモデルに当てはめて振り返ることで、教育的な意味を見出すことができました。板倉先生は出向元の病院に戻りましたが、明確な目標設定の重要性を学んだため、自施設で活用できる看護師のキャリア別のルーブリックづくりをしていきたいという目標ができました。このように私たちの意欲が高まったのは、きっと西野先生が記事のやりとりにおいてARCSモデルを活用したからだろうと思ったりしています。