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中東特派員はシリアで何を見たか

はじめに

こんにちは、dZERO新人のHKです。今回は、イスラム国が台頭する中東をつぶさに現地取材した『中東特派員はシリアで何を見たか』を紹介させていただきます。

現地取材から見えて来た「イスラム国」とシリア内戦の真実

概要

シリア内戦は泥沼化し、「イスラム国」が勢力を広げています。現地取材だからこそ見えて来る中東の情勢。内戦で破壊されたシリアの街並み、苦悩の表情を浮かべる人々の姿がつぶさに書かれています。アラブの春からイスラム国台頭までの流れの詳細な解説。反政府組織が勢力を拡大するにつれて宗教間の争いが激化する様子、内戦で国が破壊されて住む場所を失った人々の暮らし、欧米にまで広がる難民問題やテロ、そして上手く生きられない若者がどのようにしてイスラム国に傾倒していくのかがつづられています。この作品では、クラウド写真集「美しい国の人々と戦争」と著者のメッセージ動画がVideo on the Bookとして見ることができます。

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著者紹介

著者は共同通信社記者である津村一史氏。津村氏は1979年、鹿児島県に生まれ、東京大学法学部を卒業し、2003年に共同通信社に入社されました。カイロ支局を経て、2015年から本社特別報道室。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の公式メンバーとしてタックスヘイブン(租税回避地)の実態を暴いたパナマ文書報道に参加されました。ICIJは2017年のピュリツァー賞を受賞しました。同年からローマ支局長になられています。


この作品のポイントと名言

めまぐるしく動く世界情勢の中で、日本という国と、日本人がどのように生きていくべきなのか。中東で起きていることを少しでも身近に感じ、本書が読者の皆さんの考える小さなきっかけになれば、望外の喜びである。(まえがき、p4)

カリフとは、イスラム教徒にとっての最大の敬愛の対象である予言者ムハンマドの後継者を意味する。樹立を宣言した「国」の名前は「イスラム国」(序章、p18)

ただ、あまりにも米国目線に立った「無辜の民をいたぶるアサド政権」という見方に依拠しすぎたため、どの辺に「真実」があるのかという見極めができていなかった自分を反省しているのだ。(第一章、p52)

園田らユニセフ職員がシリアで活動できるのは、現実的にはアサド政権側の支配地域に限られており、「ホットスポット」と呼ばれる、反体制派が勢力を拡大させている地域では、思うような支援が展開できないというもどかしさも、園田は感じているようだった。(第一章、p62)

山頂付近から見下ろせるダマスカス市街地の眺めは素晴らしく、内戦が始まる前は、家族連れやカップルでにぎわった名所だったが、重要な軍事施設もあるカシオン山には、その後、自由な出入りができないようになった。(第一章、p89)

数年前までは無名だったバグダディが、「イスラム国」を、アルカイダをしのぐ存在にまで押し上げたスピードは、日本の読者の認識も追いつかないほど急激なものだったといえよう。(第二章、p117)

「イスラム国」を標的とした米軍の空爆が始まった2014年8月以降、イラク北部での「イスラム国」の攻勢は鈍ったといい、「イスラム国」は、モスル周辺の道路を封鎖し、住民の出入りを禁止、掌握地域の防衛に注力し始めた。(第二章、p124)

思想的なこだわりを持たない彼らにとっては、「イスラム国」の庇護下で安全に「商売」ができる状況はむしろ好都合なのだという。(第二章、p130)

タクシー運転手のルアイ・バハサム・トゥビアの左腕は、「イスラム国」の戦闘員に折られて、曲がったままだ。前歯も折られ、体には五発の銃弾の跡がある。(第二章、p142)

「イスラム国」は2014年の夏、イラク北部シンジャールに進撃した。少なくとも五百人のヤジド派住民が虐殺されたうえ、「戦利品」として多数の女性が拉致され、性奴隷にされた。(第二章、p146)

「外国人が斬首されれば大きな国際ニュースになる。だが報道されないまま、多くのシリア人が毎日首を切られ、殺害されていることも知ってほしい」(第二章、p155)

自国で味わう疎外感からやむにやまれず「イスラム国」への合流を望む移民の姿や、故郷での弾圧に耐えかねて、「イスラム国」に渡るしか選択肢がない人々の姿が浮かび上がる。(第三章、p191)

長期間に及ぶシリア内戦が、市民の生活だけでなく心までも貧しくしてしまったなら、こんなに悲しいことはない。(第四章、p212)

湾岸戦争とイラク戦争を経て、中東では今また、過激派組織「イスラム国」と有志国連合との戦争が行われている。「イスラム国」を標的とした有志国連合による空爆を主導しているのは米国である。(終章、p250)


dZERO新人HKのひとこと

 イスラム国周辺のことは複雑でよく分からなかったのですが、この作品を読んで、情報がすっきりとまとまりました。なぜ、イスラム国が台頭して来たのかもよく分かり、どうして欧米などの若者がイスラム国に傾倒するのかも理解することができました。
 著者が現地取材をしてくれているために、そこで暮らす人々の生の声が伝わり、臨場感があって、遠くの国で起きている出来事などではなく身近に感じることができました。宗教間の対立が起こった背景もしっかりと書かれていて、ここまでこじれてしまったら、もはや分断しか選択肢が残されてないのかな? と平和の尊さを実感しました。
 イスラム国といえば強烈な映像が時折インターネットに流れており、どうして先進国の若者が魅了されるのかさっぱり分からなかった(イスラム国に入ったら二度と帰国できないし、殺されるかもしれないのに)のですが、心の隙をつかれているのだなと思うと、私も魅了されていてもおかしくはなかったのだなと思いました。

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