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最終回。この本が、いつの日かヨシダさんの元に届きますように。
この作品を書き上げるにあたっての最大の敵。
それは文字数、ページ数でした。
当初の予定では288ページ。それもFさんが相当に交渉して下さったものの揺るがず、ページのレイアウトを変更してどうにか1pあたりの文字数を増やしてくれて、の288ページ。なので、もうコレ以上増やせる見込みはない。
Web版から候補作を抜き出し加筆修正を施したうえに、さらなる削減を強いられることに。
これは中々に厳しいものがあった。
どーーしても入れたい部分、入れたいキャラが居たから。
あぶくちゃんとか。
それでもどうにか進めなくちゃならない。とにかくガツガツ削って、切ったところのバリを取るみたいに均して、くっつけて。また直して。
ただこれが意外と面白い部分でもあって、これはFさんにもメールや電話で話したことだけれど、たとえばゲラの書き込みやメールなどで
AをBにしたほうがいいのでは?
とか、
ABCという流れのうちBだけを切る、みたいな提案を受けて、または指定があって作業するとき。
そのまま言われた通りやっても面白くないし芸がないので、自分でAでもBでもなくCに書き換えてシックリさせたり。
ABCをACDに書き換えて文字数を削減しつつ表現豊かに出来たり。
こういうときが、物凄く気持ちよかった。
やっぱり(文字を)入れるとか(文章を)出すとかいうのは気持ちいいな!
↑ダメ絶対!!
そうこうしていて数日後。
思いもよらぬ朗報が飛び込んできた。
まさかの増ページ。
320ページと約40ページ増!
さらに増量!美味しくなって新登場!
エコでサスティナブルでヘルシーでセクシー!
コンビニのお弁当みてえなこと言ってんじゃねえ。
これは嬉しい誤算だった。
お陰であぶくちゃんの登場シーンが丸々残せた。
それでも日本橋漂流少年だけで数十ページ切ってるし、レトロゲームフィーチャーが弱くなった気はしている。
ただ担当編集F氏からは、執筆時期の違う(Web版は十年近く書いているので最初と直近の作品では別物みたいになっている…)三ツ寺鉄仮面少女と日本橋漂流少年のコミカルな部分はカットして、もう少しシリアスに寄せてもいいのではないか?
という指摘もあった。違うバージョンはウェブで読めますよ、ということにして…。
多分これは正しいと思う。
でも私は断った。
前回のMOTHERの影響って記事でも書いたけど、やっぱり思いっきり賑やかで明るく楽しく喧しくしておいてから、〝あっち〟にどんどん向かっていくのがいいんじゃないかと思っていたので…。
なのでコミカル、メイドさん、カズヤくんとヨシダさんの喧嘩などは出来る限り残して、その代わり細かいところでも切って直せるとこはバンバン切っていった。
メイドさんの部分は切られてたまるか!と思い
「実際にセリフの監修をお願いしました、これはホンモノのメイドさんのセリフです!」
とメールに書いて先手を打ったりもした。
それでも最終的にどう頑張っても6ページこぼれており…こいつをどうにか収める作業は気分がヒリヒリしていた。
切って貼って繋げて直して、とやっているうちに、ものすごい凡ミスをしていることもあったり、実は一箇所直しそこねた効果音があったり。
それでも最後、すぽっと収まったときには物凄く気持ちが良かった。それも、もうゲラに朱を入れるんじゃまどろっこしい、メールに転載?やってられるか!
とFさんに電話をかけ、左手でスマホを握りながらキーを打ったり削ったりして完成させたのだった。
で、実はコレと同時にまた別の問題が密かに膨らんでいた。
ウルトラセブンでブラコ星人がアンヌ隊員に植え付けた胞子のように…。
(誰がわかるんだよ)。
Web版では長い年月をかけて登場したJさんが、書籍版だとかなり唐突に出現し、そのまま重要人物の椅子に座ってしまっているのだ。
これも候補作を選ぶ中で懸念があったし、現に編集部からも指摘があった。
あったけど、どうしようもなかった。
Web版であのふたりがアチコチ出歩くようになり、その結末に登場する解説兼まとめ役みたいなポジションのキャラクターとして登場したJさん。
なので、出そうにも出しようが無かった。今回あのタイミングで出てきたのは、単に私がJさんを書き慣れてきて、もはや自分の中でおなじみの人物になっていたから。
だからカズヤくんとヨシダさんの日常にも溶け込んでいるし、ファミコンを出してきたときにカズヤくんが驚いているのは、普段もっと真面目でカタい印象を持っていたからだ。
なのでもう、こればっかりは悔しいけれどこのまま押し通すほかなかった。
どっか削ってねじ込んだところで結局なんだか不自然で、取ってつけたようになってしまう。それならもういっそ、日本橋漂流少年でしれっと登場するほうが自然な気がして。
意外と完結編以降、あまりJさんの出番が無かった。
三ツ寺鉄仮面少女も、その他の作品も。
三ツ寺のハナシで出てきてなかったのが、書いた自分でも意外なくらいだった。
ただ、文字数が増えたとは言えレイアウトの結果まだハミ出していることがわかり、結局そこまで残したかったものが残せたわけでもなかった。
ページ数を増やしても尚、中身は削る(それでも尚、世界に媚びるみたいに言うな)。
なのでJさんの初登場を改めて書き下ろす余地が無かったのは、今でも悔やまれるところだ。
なんか今日、いつになく真面目だなあ…。
一旦ウンコの話する?
あ、そう?
じゃあ次。
嬉しい誤算、ふたたび。
それが文庫本ではなく単行本での出版になったことだった。
単行本!
デカイし、いいじゃん!!
というわけで、怪奇話集 タクシー運転手のヨシダさんは単行本として出版されました。
そっちのがいいんじゃん?
という編集部内での意見をF氏が私に伝えてくださり、私は二つ返事で了承。
こうすることで文庫より紙面が広いぶん、空間を使った表現も可能になりました。
Fさんが薦めて下さったはずだけど、ドアをドンドン叩かれたり、バタバタ走ったり、効果音が連続するところを上下で区切ったり真ん中に寄せたり。あれは考えてて楽しかった。
書籍化にあたってパワーアップしたところといえば、読書メーターやTwitterでも書いてくださっている方がいらっしゃるけど
エロとグロ。
これはもう、場所の問題で。
小説家になろうさんの基準では、これは逸脱していますNGですまかりならん、ということでも、出版社が考えるところではOKということは大いにあるそうで。
何しろ拾ってくれたFさんが、いの一番に
あのハナシ、完全版がありましたよね?あれをベースにさらなるパワーアップを…!
と言い出すくらい。
そうか、もっとやっていいんだ!
と、アマチュア格闘家からデスマッチ団体に参戦したことで開眼したミスターデンジャーこと松永光弘さん(最終回にしてインディープロレスまで例えに出し始めたよ、このひと)のように。
お手元に単行本をお持ちの方は、是非ウェブと読み比べて見てください。
https://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/931472/
まだお持ちでない方はお近くの本屋さん、または各ネット通販で是非どうぞ!
https://www.yodobashi.com/product/100000009003855632/
出来栄えの差も勿論ながら、本当に自分でも(ここまで書いていいんだろうか)と思うくらいには書かせてもらえた。完結編で味を占めた学習したので、書き下ろしでもメチャ嫌な奴を書けたし、考えてみりゃ飴村行さんとか物凄いこと書いているし…いいのかなあ。
でも出来ることなら書かせてほしいし、どんどん書いて飴村行さんにも届いて欲しい。
コッチにだってアメ村の出てくるハナシが二つもあるんだ。
まだこれからも私が何か書かせてもらえるのか、読んでもらえるのか。
全くわからないけれど。少なくとも私は、ウェブで気ままでマイペースな創作活動、なんてしたくない。そんなものは生きてりゃいつでも出来る。
誰かに何か言われて書かせてもらえるほうがずっといい。
決まりや不安も多いし、厳しいこともいっぱいあったけど、無いよりいい。
自分で勝手に書いて、勝手に載せても読んでくれるような人なんて中々いない。
それがこうしてお店に並べてもらえれば、こんなに沢山の人が読んで感想まで書いてくださる。
どっちが良し悪しでなく、私は出来ることなら仕事として、そして依頼されて小説を書きたいと願ってやまないというわけです。
幸いにして好意的なご意見、ご感想を多数お寄せ頂いているけれど、果たしてこれがどこまで繋がるかわからなくて。毎日、すごく不安で、出さなきゃ良かったと思うぐらい自分で自分を追い詰めてしまったこともあった。
だけど、小説仲間で飲み友達でもある入江弥彦さんから
「期待とは毒でもある」
と言われて、そこで漸く落ち着きました。
このエッセイを全部、とりあえず書こうと思っていたことを書き上げるのに時間がかかったのもそこで。
自分なんかが、自分だって、とウジウジしてしまったことが原因でした。
せっかくチャンスを貰ってもウジついてたら逃してしまう。
そして逃したチャンスを悔やんでも戻っては来ない。
前を向いてGO AHEADしかないのだ。
精進します。応援してください。
というわけで、最後の
お知らせとおねがい。
お買い上げの皆様に於きましては、
ご意見ご感想をお待ちしております!
ネット通販のレビュー欄、またツイッターでも
#タクシー運転手のヨシダさん
を付けてどしどしお願いします!
読書メーター
https://bookmeter.com/books/22011899
お買い求めはお近くの本屋さん、ネットでは版元の宝島社
https://tkj.jp/book/?cd=TD057167
でもお待ちしております!
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東京都千代田区一番町25
㈱宝島社 怪奇話集タクシー運転手のヨシダさん
までどうぞ!
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