(感想)吉本ばなな『キッチン』

すごく力をもらえた気がしました。ことばがそっと心に寄り添ってくれる感じです。
初めは文章表現の、天気を表すのにこの単語を使うのか!等が新鮮で、文章ばかり見ていました。でも話がすすむにつれ、細部まで読むのがじれったくなる程物語に惹きこまれ、続きが気になりました。
想像を膨らませてくれるたくさんの擬音語と擬態語、表現。人物たちの心の動きと、着眼点。台所が好き、から話がはじまるのとか、雄一は暇な時間が嫌いとか、えり子さんは大きな買い物をするのが好きとか、細かなところから個人の姿が立ってきました。初めは「知らない」からみかげにとって雄一は冷たい印象だったそう。知ると血が通った存在になっていきました。

料理の勉強を本気で頑張るみかげの姿。みかげはそれを楽しいと言っていました。幸せの中にいて、本当の本気ではない女の子たちとは熱量が違いました。私は幸せ女子の側でした。そっち側にいながら、口だけはみかげの側に行きたい、なんていう人間だと思いました。頑張ろうと思い、勇気をもらいました。
雄一は、明日もすることがないと言っていました。今日から続けて明日もすることがあるのは、幸せなことなんだと気付きました。

スマホのない時代。こういう時代もいいなと思いました。みかげと雄一が電話をしあう場面。今を逃すと連絡の取りようがなくなって、もう会えなくなってしまうかもしれないという。現在だと少ない気がします。

苦しいときこそ、明るく!えり子さんのように。かっこいいなぁ。エネルギーを持ってる人は光るんですね。

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