(感想)桜庭一樹『青年のための読書クラブ』(新潮文庫)
浪漫がつまっていました。なぜちょっと昔の時代の話はこうも心惹かれるのか……。
ある時代の一人が主人公の話ではなくて、連作短編の形で
各時代の女学校の読書クラブが描かれる話でした。舞台となる場所は変わらないけど、時は流れ在籍する子たちがどんどん変わっていきます。部室自体もどんどん古くなります。長い時間の流れが描かれることによってか、人物との距離が、一枚フィルターをかけたように少し離れて感じました。もうずいぶん前のことだから一緒にいることはできないけど、少しのぞかせてもらってる、そんな感じでした。
現在進行形ではなく、「こういうことがありました」と日誌の形で締めくくられる各話。その各話は、それぞれの時代で部員が書いた文章です。
今は戻れないその日々の輝きが見えて、手に入れられないからこそさらに増す憧憬に身を焦がすような気持ちでした。部員手書きの文章だというのも良いのかもしれません。一冊なので誰でもどこでも見れるものではなく、実物を手にしないと見ることが出来ない。読み手が一対一でその物語と向き合っているような印象で、勝手に彼女たちと通じ合ったような気持ちになっていました。
描かれている、無責任に他人を持ち上げては少しスキャンダル等あるとすぐに蹴落とそうとする、周りの圧力は恐いなと思いました。信じていたものに裏切られると、怒りになるのか……それはとても恐いことだと思いました。信じてたのに!って、期待通りの行動をしないと言われてしまう。
読書クラブの少女たちは個性的だけど、普段は学校の中でも目立たずひっそりと本を読んでいます。けどふと主役に躍り出たら、誰にも負けない強い「らしさ」がありました。文学がからむと、その情熱が彼女たちを動かす。本の思いを汲んだ少女たちの行動、、。雰囲気が初めから終わりまで好きでした。
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