八本目の槍
これは、賤ヶ岳の七本槍と呼ばれた小姓組七人(加藤清正(虎之介)、福島正則(一松)、加藤嘉明(孫六)、平野長泰(権平)、脇坂安治(甚内)、糟屋武則(助右衛門) 、片桐且元(助作)の物語。
そして彼らから見た八本目の槍「石田三成(佐吉)の物語。
七人七様の目線からホログラムのように浮かび上がる石田三成の深さと優しさ、その頭脳、その生きざま、その想いに圧倒されます。
物語の舞台は、彼らが秀吉公の小姓組として出逢い、青春を共に過ごし、やがて関ヶ原の合戦で袂を分かち、その後豊臣が潰えていく前夜まで。
滅びに向かってひた走る豊臣家を支えようと、もてる知力の全てを尽くして緻密なシナリオを書き続け、同時に、そのシナリオが狂う事を承知で、仲間の為を想って行動した三成を、七人がそれぞれどんな想いで見ていたのかが描かれます。
七人のうち、ある人は自分の信じた正義に生き、ある人は愛に生き、ある人は武士の矜持に、ある人は友情に生きました。運命に逆らった人もいれば、それを受け入れた人もいました。
関ヶ原で七人が悩み抜いて出した答えは、それぞれにとって正解だったはずです。
それでも、後から分かって来る事がある。
三成の死後、七人が互いにパズルのピースとなって、三成の描いた理想や想いを分かってゆく終盤は圧巻です。
もっと早く理解したかった。
何故もう少し早く理解してやれなかったのか?
早すぎた天才であり友であった男を想って七人も、読者も涙する、そんな本でした。