一瞬の夏
つい最近、沢木耕太郎さんのインタビュー番組を見た。
歳を取ってなおダンディでかっこいい方だ。
この本のモデルになったカシアス内藤さんも出演されていて、思わず本棚から単行本を引っ張り出した。
遠い昔、大学生になったばかりの頃出会った本。😊
ボクシングになんか全く興味なかったのに、擦り切れるほど読んだ本。
きっかけは一人の同級生だった。
その日、突然の雨に振られ、駅に向かって走っていた私は、誰かが追いかけて来る気配に振り返った。
「あ、K。」
正直苦手なタイプだった。長身でちょっと不良っぽく、いかにもチャラそうで、いつも周りに女の子がいっぱいいる同級生。
「何?」
電車の時間を気にして明らかに迷惑そうに聞いた私にKは
「白い服は雨に濡れると透けるから....」
とビニール傘を差し出した。
コイツは女子と見れば誰にでもこういう気障な事をしているに違いない....。そう思って
「要らない!別に気にしないし....」
と傘を押し返そうとしたのにKは譲らず、怒ったように言い返した。
「それで電車に乗るんだろ。俺が気にする....」
そう言って、傘を押し付けたままKは走り去り、後にはポカンとした私が残った。
当時彼がバイブルみたいに何度も何度も読んでいた沢木耕太郎の「一瞬の夏」
彼を理解したくて手に取り、私自身が沢木耕太郎にはまった。
「バーボンストリート」「深夜特急」「チェーンスモーキング」「壇」「凍」
昔から誰かを好きになると、その人が好きな本を好きになる。
そして、恋が消えても、本は残る.....。
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