
「うおおお!!!!」
竿と揃い、
海面越しを右往左往する真鯖が真青に染まる。
軈て、虹霓を引いた青二才達は
八十を数える金鱗や銀鱗や錦鱗に照り返す清澄な
無何有の郷に瞠若し、目からのみ鱗を落とす。
再度水を得たと取り違え、鯨波を上げる。
『附きが廻った』
『海彼より下り来る一鉤の月影に一度は喰らい附いたにも拘らず、渦中は好転し、雨過天晴した』
『閻魔王の焰える手を淵に押し沈め、搔い潜ったのだ』
『海流たる龍神に乗り、金波銀波の錦を飾ろう』
と。
『水』を得た『魚』の字は『漁』と為る。
水晶宮とは無縁の四角張る硝子に、
星火燎原の水煙が急激に浮き立つ。
龍潜の脈も無い。
板長の浄玻璃の鏡がぎらついたのだろう。
無煙の重箱は竜舎やら宝珠やらと似ており、
七彩の期待を玉為している。
平生は『呟く』場合に行間の荒を捌き、梳るが、
此度に限り鯖を読む。
俎板の上、元い、
無援の活魚水槽に向けていた目の庖丁刀を鞘に収め、
箸を取る。
錦衣とは気遠いが、真に玉食だ。
開けて吃驚何とやら。