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①まとめ編: 限界社畜が失われた10年を取り戻すためにWEエクセレンスを受験してみた話

なんせ受験者自体が少なく、情報が限られているワインエキスパートエクセレンス試験。
受験してみて色々と思うところもあったので、検討されている方の一助になればと体験記を書いてみました。

エクセレンス受験のまとめとキーメッセージ

まず今回受験してみて一番のキーメッセージは「いつか受けてみようかなと思っている人は、今すぐにでも受けるべき」です。
その根拠は後述するとして、まずは私自身の受験について総括します。

  • エキスパート取得は2012年なものの、直近9年程ほぼワインを飲まない生活から、新年の抱負で突如受験を決意

  • スクールは一次・二次対策ともにADV大友先生講座を受講

  • 一次試験対策時間はスクールの授業時間等を含めて計126h。試験対策開始しようと思ったその日にコロナ発症し、結局試験直前8日間で詰め込む羽目になり地獄を見た

  • 二次試験対策時間はスクール含めて計39.5h。10月末のケナーを滑り込み受験するというドMな所業のおかげで着手が遅れ、地獄を(以下略)

  • 一次・二次合計で約160h程度と簡単な試験ではないが、巷で言われるような「教本丸暗記」「一年前から対策」等は一切不要であった

  • 資格意義については賛否あるが、私にとっては10年近く離れていたワインが再び身近になり、意義ある受験だった

実は今回、下調べ等全くせずの「ノールック開始初日即申し込み」をかましたために受験に至れたわけですが、後から見つけた「歩くソムリエ教本にならないと受からない」「自作ノートびっしり作って一年前から対策しないと無理」みたいな情報を先に見てしまってたら、きっと受験を敬遠していたと思うんですよね…。

そこが今回最大の思うところでして、私のような例もあるので、皆様もっと気軽に挑戦され、少しでも受験者が増えるといいなという思いで、以後この受験記を書いていきたいと思います。

経緯(ただの与太話/飛ばし推奨)

実は今回、9年程ワインからサッパリ遠ざかっていた挙句、新年の抱負で「そうだエクセレンス受けよう」とJR東海もびっくりの突発的かつ完全なる思い付きにて受験を決意しました。
「ワインは月1~2回、外食時に少し飲むくらい」という完全ご無沙汰生活からの思い付きエクセレンス。我ながら頭がおかしい!

WE取得は2012年と早かったのですが、本来ならエクセレンス受験を意識し始める頃の2015年、色々な事情が見事に重なって、完全にワインから離れてしまったんですよね。(※主に社畜的事情。この9年間ひたすら仕事してた記憶しかないからな…)

ワインとのご縁が薄れすぎてWEバッジも紛失し、ワインスクールのテキスト類も全部捨ててしまっていたほど。もう言ってみれば「失われた10年」。
今となっては、せめてもう少しなりともワインに触れておけば、スクール通いとは言わずともワイン会や試飲会に時々顔出すくらいはしておけば…と思うことしきりなのですが、まあ後悔先に立たずですね。

今だから言えるっ!実はWEのバッジも無くしちゃって既に持っていなかったよ!!(テヘペロ

その失われた10年から受験に至る経緯ですが、一番大きかったのは昨年10月期に何気ないきっかけで受講したADVのクラス。
「こんなに何もかもキレイサッパリ忘れた状態から、数回授業を受けただけでこんなに理解が深まるんだ!」といたく感動し、もう一度ワインの勉強をしてみたいと強く思いました。
その流れで新年の抱負を考えたら「そうだエクセレンス受けよう」に至ったわけです。
今思えば「そうだWEもう一度受けよう」位が適切だった気はしますが…まあその辺は結果オーライよ!←そうか…?

さて、一次・二次それぞれの対策は別記事で記載予定ですので、このまとめ編では以下、「そもそも受けるべきか」「受けるとしたらまず何をすべきか」など、最初の意思決定にまつわる論点3つについて触れたいと思います。

論点①: そもそも受験すべきか?意義は?

結論を再掲すると「いつか受けようかな、と思っている方は今すぐにでも受けるべき」となります。以下、理由を記載していきます。

まず「受けて意味があるのか?」ですが、正直私に言わせれば「趣味の資格に意味を求めてはいけない」に尽きます。
もっと言えば、そもそも業務独占資格以外に大した意味なんてないでしょ。そんなこと言ったら私がその昔取得した基本情報技術者やらネットワークスペシャリストやらなんて、今となってはWE以上に無用の長物ですよ。

いきなり極論になってしまいましたが、もう少し丁寧に言うと「唯一確固たる意義などは当然無いが、資格受験を一つのツールとした意義づけは各人でいくらでもしようがある」が正しいでしょうか。
例えば私の場合「ワインのリハビリ」の役割は明確に果たしてくれました。「もう一回勉強しよう」なんて、確たるマイルストーンでもないと絶対に挫折しますからね…。
それなりに負荷のかかる試験なのでモチベーション維持のために何らか目的はあった方がいいでしょうが、「一般呼称の時の知識を忘れちゃったから」でも「いつかWEコンクールに出る準備」でも何でも、個々人で意味付けが少しでもできれば受験には十分かなと。

要は「意味があるのか」なんて考えるからには頭のどこかに少しは「受けてみようかな」という気持ちがあるわけで、だったらシンプルに受けてみればいいのでは、という主張です。
受験料もWSET Diplomaみたいな上級国民ご用達プライシングでもないし(受験料: JSA会員17,720円/一般25,030円)。挑戦して失うものも少ないのです。

「とはいえ受けて何の直接的メリットがあるのさ?」と思う方も多いと思うので、私自身の体験から少し記載してみます。

  • 最新の教本の内容やフォローアップセミナーなどを通じ、最新状況やトレンド、ホットトピックにキャッチアップできた(私ほどのブランク受験は珍しいにしても、受験資格が一般呼称から最低5年後なので、殆どの受験者は知識が古くなっているタイミングです)

  • 試験勉強を通じて興味を持った地域・品種・銘柄を試し新たに好きなワインが増えるなど、ワインライフが確実に豊かになった

  • 対策講座のクラスメイトや、合格後に入れる「エクセレンス縦の会」など、受験前後を通じてコミュニティが開拓できた

  • (全くの想定外でしたが)合格後の会話で「資格お持ちですか?」「エクセレンス取りました」「わーおw」的なやりとりが意外と何度も発生しているので、ステータス(?)を求める方にも思ったより向いていそう

「苦労の割にメリット少なくない?」というあたりは別途「今後資格の価値を増していくには」を少し考察してみる予定です。

…で、戻りますが「いつかは受けるかも」程度の関心があるならば、今すぐにでも受ける事をお勧めします。その理由は3つです。

  1. そこまで大変な試験ではない

  2. 難化意向がはっきりしてしまった

  3. 対策が通じるうちがお得

以下、順に補足していきます。

1.そこまで大変な試験ではない
決して楽な試験とは言えません。一方で、「こんなポンコツが、9年もサッパリワインから遠ざかってた状況で、試験直前8日間で詰め込んでも」なんとかなってしまう試験ではあるのです。(※スクール利用前提ですが)

巷で言われるような「教本丸暗記」やら「一年前から準備」やら「自作ノートびっしり」やらは全て「十分条件であって必要条件ではない」です。
この十分条件でしかない要素がなぜかあたかも必要条件かのように一人歩きしていて、その結果敬遠する人が多くなっているのでは…?というのが、今回筆を執った最大の理由でもあります。

まずは「巷で言われてる程大変な試験じゃなさそうだ」とお考えくださいませ。

2.難化意向がはっきりしてしまった
これは今年最大のドラマがあったところ…!
要はこちらのエクセレンス試験、「今後さらに難化することはあっても、易化することは無さそうだ」ということです。

まずは、リンク引用になりますが、今年の合格状況をご確認下さい。

WEエクセレンスの数字を抜粋すると、受験者111(+越年3名)、合格者29(+越年2名)。ストレート合格率は14.4%と、昨年2023年(14.8%)と同程度となりました。

問題はここから。
実は昨年2023年は「劇的に難化した」年で、例年約27~30%程度であった2022年以前と比べると半分に近い合格率でした。
そんなわけで今年は「昨年さすがに絞りすぎたので緩和されるのでは?」との下馬評がありました。
かつ一次試験の段階では44名通過と、昨年(19名)から大幅に増加したので「やはり昨年絞りすぎたソムリエ協会が反省して、合格水準を戻してきた」という評すらあった程。

ところがどっこい蓋を開けてみれば!!
なんと一次通過から最終合格までに半分以下に絞られました。(111名受験→一次通過44名→テイスティング通過30名→論述通過19名)
昨年は二次では殆ど落ちていませんので(一次通過19→テイスティング通過19→論述通過16名)、要は「一次ではなく二次で落とすスタイルに変更したが、合格水準自体は元には戻さない」ということですね。

さんざん「絞りすぎたので戻すのでは」と注目されていた中でのこの結果、もはやJSAからの確固たる意向を感じる返答といっても良いのでは。
昨年そのままではなく、一次から二次に絞りどころを変えてきたあたり、より一層「ちゃんと考えた結果こうしてるよ」というメッセージが透けて見えます…。

ゆえに、「今日が一番若い」ではないですが「今すぐ受けるのが一番簡単」である可能性が極めて高いと言えます。

3.対策が通じるうちがお得
これは「そうこうしているうちに試験の形式や内容が大きく変わって、現在有効な対策が通じなくなるかもしれない」ということです。

エクセレンス試験は2018年(シニア時代)に突如筆記が全問記述式(原語)、テイスティングもフルコメントに変更
になり、騒然とした過去があるのですよね。(※2017年までは筆記は選択式、テイスティングもコメント部分は選択式で品種や産地のみ記述式)
下記リンクは変更があった2018年に2次受験された方のブログですが、当日の会場の緊迫感・動揺ぶりが伝わってきます…。

遡ればその前から難易度等の変更はあったようで、エクセレンス移行対象のシニア呼称が2013年以降取得の方のみなのも、それ以前とは難易度が大きく異なるからだそう。

そんな一定周期で変更が繰り返されて来ているエクセレンス試験ですが、実は今年もやや不穏な動きがありました。
教本でもフォローアップでもない内容からの問題が出たのです。(これまでは原則教本またはフォローアップで扱われた内容からのみの出題)
今回は問題数が少なかったので大勢に影響する程ではなかったですが、今後この傾向が強化されるとかなり対策がやっかいになりそう。

これに限らず、常に試行錯誤されてきた試験なので、いつまで現行の試験対策が通じるかはわからないと言えるかと。
前述の通り、現行の対策があれば決して難しい試験ではないのですが、対策無しで臨むとなったら正直かなり厳しい。
傾向が大きく変われば、スクールがノウハウを蓄積するにも2~3年は必要と思われ、その間の受験はかなりハードルが上がると思います
今の対策が通じるうちに受験する事を全力でお勧めしたいです。

ちなみに私の場合、受験資格が発生する2017に受けていたら選択式で受けられていたわけなので、まさに「受けられるときにすぐ受けておけば…」と大変後悔した個人的なトラウマからも、一層強調したいポイントとなっております。

論点②: 何にどれくらい時間がかかる試験なのか?いつから準備?時間確保はどうしたら?

結論から言うと、「スクール利用前提であれば」にはなりますが

  • 「スクールの授業に出席できて(約6カ月、計30時間程度)」

  • 「一次試験直前(2週間ほど前〜)に計8日間(80時間)ほど勉強時間を確保できて」

  • 「二次試験対策に計30時間程捻出できて(1.5カ月間で)」

  • 「一次・二次両試験の2日間平日に休みが取れれば」

十分合格が狙える試験です。要は試験直前までは、2週に一回程度のスクール授業に出席する以外の時間はな〜んも要らないのですよ。
こう見るとそこまで極端に高いハードルではないはず。
なおスクールは欠席して録画を2倍速で見ればさらに時間短縮はできたりしますし、一次試験直前対策は最低40-50時間程度でも行けそう。(一次試験編参照のこと)

上記の具体的な内容は一次試験編、二次試験編に譲りたいと思いますが、少しだけ触れると

  • 授業はとりあえず出ただけ(私は予習復習は一切しませんでした)

  • フォローアップセミナーは東京分出席・大阪分録画聴講しましたが、正直これは無くても何とかなった(理由は別途)

  • 一次直前対策はスクールで提供される対策問題を8日で1,600問覚えきっただけ

  • 二次対策は直前対策講座を受講の上、テイスティング及び論述の想定問答をまとめて、試験前日に覚えきっただけ(私の場合ブランクが長すぎたため、並行してワインマーケットパーティさんの週一ブラインドイベントでリハビリをしましたが)

  • 試験日の休暇確保は試験申込日時点でガッツリ職場のカレンダーブロックして予防線張りまくっただけw

なので、時間確保といってもそんな大層な覚悟は必要なく、WEが受験できた状況の方は問題無く時間確保できるはず
というか、WEの方がスクールの授業時間は多いので、WEより時間確保のハードルは低くすらある。

ということであまり参考にはなりませんが、強いていえるとしたら「忙しい人程、短期記憶の恩恵に頼れる直前詰め込み型を選択してみては」という感じでしょうか。

論点③: スクールに通うべきか?通うとしたらどこが良い?

これも結論から言うと、通う一択です
以下、その根拠と、もし通わないとしたらどう勉強するかという点に触れます。

まずスクール一択の理由。冒頭から何度も「教本丸暗記は不要」と書いてきましたが、それは飽くまでスクールである程度覚えるべき範囲を絞ってくれているからに他なりません。
エクセレンス試験は飽くまで「教本の重箱の隅をつつくような、細かくマニアックな情報が出る試験」であることは間違いないです。
なので、覚えるべき対象の道しるべがなければ、まさに丸暗記に近いレベルは必要になって来ます。
その道しるべとして働いてくれるのがスクールです。灯台無しの広大な夜の海に漕ぎ出す勇気は私にはありません。

次にお勧めのスクールですが、正直私は他のスクールに通ったわけではないので、正確な比較評価はできません。
…なのですが、試験結果のリンクにもある通り、大友先生受講生のWE合格者占有率が昨年約90%、今年約95%と圧倒的実績ですので、まず数字的に見ても大友先生講座はほぼ間違いない選択だと思います。

また、実際の講座の内容もその数字を裏付ける素晴らしいものでした。

  • 大友先生自身が各種セミナーへの参加や協会誌の内容把握などを通じ常にアンテナを張り、ソムリエ協会の意図を把握の上で授業コンテンツ(解説資料や予想問題)を作成されているため、予想問題の精度が非常に高く、覚えなくて良い箇所も的確に判断されていた

  • 「教本に更新があった箇所」等、重要かつまとめに時間のかかる情報の抽出・整理をして提供して下さるため、学習時間を大幅に節約できる(自分で何かをまとめたりする必要がほぼ一切生じない)

  • 上記のソムリエ協会の問題意識や教本変更箇所について、過去数年にわたる変遷も含めて整理されており、長くエクセレンス講座を担当されている講師ならではのノウハウとして蓄積されている(一朝一夕で真似できない内容)

  • 授業内容や予想問題に関する質疑などにタイムリーかつ丁寧に対応下さる(私は直前に着手して猛烈に追い込んだため、授業が全て終わってから大量に質問が発生してしまったのですが、全て丁寧に答えて下さいました)

  • 試験直前の激励、試験会場での留意点や試験後の労りなど、細かい点もフォローして下さる

クラスメイトやエクセレンス既取得者の多くの方もお勧めされていた点も付記しておきます。

なお今年からADVではなくヴィノテラスでの講座提供になるようですが、ライブ配信でもスムーズに授業される先生ですので、ヴィノテラスでの配信クラスでも全く問題ないと思われます。

スクール選びのまとめとして一つ強調したい点は、スクールの最大のキモは「精度の高い予想問題集を手に入れる事」だという点です。
一次対策編を見ていただくとわかりますが、一般呼称と違い、正直講義のわかりやすさはあまり合否に関係ないです。通学かオンラインか等も同様。
「精度の高い予想問題のノウハウを蓄積している講師」を選ばれる事を強くお勧めします。その意味では、エクセレンス講座開講年数の浅い講師は私なら選びません。

なお、何らかの理由でどうしてもスクールに通えないという方向けに、「もし私がスクール無しで対策をするとしたら」ですが…。

完全独学でしたら、下記の問題集を利用する事になると思います。
但し、ADV講座では重要度順に対策問題を大幅に絞って提供下さり、その結果最低750問程度で合格を目指す事も可能なのですが、こちらの問題集だと計4500問程度は学習することになると思います。
当然ながら6倍近くの労力が必要になりますので(原語のフルスペル暗記は結構大変ですので、1問の重みが大きい)、時間は大幅に余分にかかることになるかと思います。
※オンデマンドで購入可能時期が限られるようなので、今年の問題集で様子を探っておきたい方は注意です

また、「スクール以外」という趣旨とはずれますが、ワインブックスクールさんは料金が安いので、スクールに通えない理由が金銭的なものであれば、選択肢になるかと思います。

少し拝見したところ、ある程度コーチ的な立ち位置の指導・サポートがありつつも、生徒自身の自助努力または生徒同士の相互扶助的な部分も多い形態にお見受けしました。
手取り足取りのADVクラスとは良くも悪くも趣が異なりそうですが、そのあたりは好み次第かもしれません。
「二次対策のみのスポット利用」をされる方もいるようで、それもありですね!
(個人的にも、二次対策講座は一次に比べスクール間の差も少ないのではと予想します。だったら安いほうがいいという考えはアリですよね)

以上の通り、独学や低価格でも対策できなくはないかもしれません。
…が、人間「時間」ほど不可逆で貴重なものはありませんので、お金で買える時間は買うが吉です。特にこのエクセレンス対策においては凄まじくROIが高いです。余程の事が無い限り、スクール利用をお勧めいたしますし、その中でも大友先生講座は非常にお勧めです。

長くなってしまいましたが、まとめ編は以上です。
よろしければ、一次試験対策編・二次試験対策編もご覧ください。

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