〜ある女の子の被爆体験記8/50~ 現代の医師として広島駅で被爆した伯母の記録を。 ③原爆の3エネルギー爆風
〜爆風〜
その衝撃波は、一瞬で家屋をつぶしました。
熱線の影響は、3秒ほどでおさまりましたが、その瞬間、瞬時に家々がぐしゃっと倒壊しました。
爆心地ではほぼ真上から、少し爆心地から離れると斜め上から衝撃が来ました。衝撃波、つまり爆風です。
爆風は3秒で1.5キロメートル、10.1秒後には4キロメートルに到達し、家々は倒壊、人々は下敷きになりました。爆心地から3.7キロメートル離れた広島地方気象台では、風速200メートルを観測したといいます。
また、爆風は一度ではなく、吹き戻しという逆向きの爆風となってやってきて、竜巻や突風にようだったという人もあり、何度も強烈な風に襲われたと多くの証言が残っています。
ガラスによる二次災害
〜ガラスが無数の刃物に〜
さらに、爆風の影響を語るとき、ガラスが生命を脅かした事実を知っておく必要があります。
爆風は、瞬時にガラス窓を吹き飛ばします。気づいたときにはガラスの破片がナイフのように胸に突き刺さっていたという証言は沢山あります。小さな破片が体の片側にびっしりついたまま歩く人々は、大勢いました。
靴のない被災者は、ガラスの破片の上を裸足で歩いて逃げ回らなければな利ませんでした。このように割れたガラスが被災者を苦しめたことは、過小評価できません。ガラスによる二次災害といっても良いかもしれません。
ガラスの傷は、免疫力の下がった被爆者の致命傷にもなりました。
やけど同様、傷が感染すれば膿をつくり、全身に菌が回れば、敗血症となって死に至ります。
やけども同じですが、傷にハエが卵を産み付ければ蛆虫がわいてしまう。
体に刺さったガラスは素手では取りにくいのです。ペンチのようなもので取ろうとしても、ジョリジョリと崩れてしまい、簡単には取れません。
鋭いガラス片が体に埋まったままになり、傷が深まり、痛みに悩んだ人も大勢いました。
「靴を準備しなさい」
余談ですが、ノブコ伯母さんがよく言っていました。
「ガラスの被害を軽く考えてはいけないよ。
爆弾でも、台風、火事、地震、どんな時も、靴を余分に準備しなさい。避難する時はいつだって、足でガラスを踏んでいかなければならない。ガラスの傷の痛みは、人々を歩けなくさせ、逃げる気持ちすら妨げてしまうから、靴は大切だよ」
ガラス製作を災害時の視点からも考えるべき。災害時に豹変するガラス。これからのガラス開発へ期待を!
ガラスは建物にはなくてはならないもの。明るく光を通す窓は、大切です。しかし、災害時には、豹変するガラスの存在を、私たちは平常時には忘れ勝ちです。台風の時にも、地震の時にも、もちろん核兵器の被害など起きて欲しくはないですが、二次災害で命を落とすことは本来防げるはずです。
割れても刺さらないガラス、それでいて建材として丈夫なガラスの開発を、将来開発していただきたいと心から思っています。