高校理科がわからない理系大学教員
私にとっては大学の専門分野より高校理科の方が難しい。
だから今、必死になって学び直している。
昔の私は落ちこぼれだった。
「不良」とまではいかないが、優秀ないい子ではない。
授業が始まっているのに非常階段で先輩とたむろして生徒指導の先生に怒られていた記憶がある。
授業はあまり覚えていない。
受けた記憶があまりない。
ほとんどは夢の中にいたと思う。
なぜそんなのが理系に進学したのか。
私は普通の落ちこぼれとは少し違うところがあった。
中学生の頃から現代物理学が大好きだった。
量子力学や相対性理論なんかを取り扱う分野だ。
宇宙も好きだった。
ブラックホールやビックバンの話なんて大好物。
わけのわからない星の名前をたくさん覚えたりして満足したりもしていた。
でも、模試を受けると行ける大学なんてどこにもない。
私はなんとか推薦で入れる大学に潜り込んだ。
大学に入ってからは楽しかった。
1年生の時に受けた現代物理学概論のテストで追試になる人が続出する中、95点でぶっちぎりでパスしたことを覚えている。
それ以外の科目は追試だらけだったのだが。
それでも研究室に配属されると、自分で考えて実験して新しいことを発見する一連の研究が楽しくて仕方なかった。
高校理科の知識はなくてもなんとかなった。
専門分野に関連する範囲については研究しながら身につけていった。
そんな私が今、必死になって高校理科を学び直している。
なぜか。
入試の採点をしなければならないためだ。
記述問題の場合、正解に辿り着けていなくても部分点が結構入る場合がある。
点数の付け方はある程度パターン化されているが、それでも受験生が何をしたかったのか読み取るためにある程度の知識が必要となる。
大量の答案用紙を採点するため、瞬時にそれを見極めなければならない。
だから、今になって高校理科を学び直すのだ。