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鉄/Fe:ハイパフォーマンスなミネラル

原子番号26の元素。
ラテン語ferrumu(強固を意味する言葉から派生)に由来するとされる。
英語のironは、ラテン語aes(鉱石を意味)に由来する。

地球創生期、鉄をたくさん含む隕石が繰り返し衝突した結果、地球には大量の鉄が存在する。
製鉄によって、人を豊かにも不幸にもしてきた歴史に欠かせない鉱物である。
地球の核では溶融した鉄が、磁石の役割をして地球を取り巻く強力な磁場を生み出している。

鉄は、酸素と反応して赤い酸化鉄の状態で存在するのが基本で、赤土の大地や血液が赤いのも、酸化鉄の色である。

釉薬として焼き物に使うときには、条件や反応する相手によって、赤だけでなく、青や緑、黄、紫、黒など様々な色を生み出す変幻自在さを発揮する。

人体にとっては、血液の赤色成分として酸素を運搬するに留まらず、構造や機能においてハイパフォーマンスに活躍する。

一方で、月経のある女性の慢性的な不調の一大要因が、鉄不足による。
心身の健康において、特に不足を改善したい必須のミネラルであるが、過剰は過剰で毒になる。

鉄ferrum

鉄は、最初の生命からして利用していた根源的なミネラルである。
特に、人の全身の細胞に生命線である酸素を運搬するという最重要の役割を担っている。
それだけに注目されがちだが、全身の機能を担う酵素に不可欠で、美容と健康、不調の予防に欠かせない。


鉄の役割

鉄の役割は多岐にわたる。

赤血球を作る
全身の細胞に酸素を運搬する
骨、皮膚、粘膜の代謝
コラーゲンの合成
白血球・免疫機能の維持
メンタルやマインドの維持
睡眠の維持
消化機能の維持
筋肉の収縮
鉄の欠乏

鉄の不足は、鉄欠乏性貧血を起こすだけではない。
多くの人は、「たかだか貧血」と侮って放置してしまうが、それこそが原因不明の倦怠感や不調、老化の原因になっている。
子供においては、情緒や発達の障害にも関わっている。
特に、月経の開始から閉経までの女性は、慢性的な鉄欠乏で、「隠れ貧血」の状態を改善することで美と健康の向上が可能になる。


鉄不足になりやすい人

月経のある女性
妊娠・授乳中の女性
鉄不足の女性から生まれた赤ちゃん
発育期の子ども
腸内環境の悪い人
長距離マラソンなど激しいスポーツをする人
少食・偏食・加工食品の多食
どこかしらに出血がある人

土壌の劣化により、食物に含まれる鉄の含有量は激減しているので、そもそも食品からは摂取が難しい。
男性は定期的な月経がないので、どちらかというと鉄は過多気味のことが多いが、男性でも、激しい運動をして赤血球が壊れることによる「ランナー貧血」や消化管出血がある人などは注意が必要だ。


鉄不足の症状

症状は多岐にわたり、不定愁訴として片付けられ、原因を見逃されやすい。

めまいや立ちくらみ、頭痛
不眠気味、眠りが浅い
うつうつ、イライラ
産後うつ、産後の精神不安定
赤ちゃんの不眠や落ち着きのなさ
日々怠い、疲れやすい
階段を上ると疲れる
よくあざができる
シミができやすい
飲み込みづらい、喉に違和感がある
関節が痛い


たとえ、血液検査でいわゆる「貧血」と診断がつかない場合も、体の血液の蓄えである「フェリチン」が低下していれば、「隠れ貧血」であり、症状が出る可能性は十分にある。
全国の分子整合栄養療法・オーソモレキュラー療法に精通した医師を受診して「フェリチン」を含めた検査をしよう。


カルシウムの吸収を促進するもの

胃酸

鉄は、胃酸によって吸収しやすい形になる。
胃の機能が低下していて、胃酸が弱い人は、鉄を十分に吸収することができない。
ストレスによる胃の機能低下や、ピロリ菌感染による萎縮性胃炎では、胃酸が十分に分泌されずに鉄欠乏となりやすい。


鉄の吸収をブロックする要因

リン酸塩
シュウ酸
フィチン酸
過剰な食物繊維

これらは、腸管で鉄を吸着して便に排泄してしまう。
リン酸は、加工食品に極めて一般的に含まれる添加物・リン酸塩として口に入ることが多い。
パン・加工肉・練り製品・お菓子類・冷凍食品などあらゆるものに含まれている。
表示は、「リン酸塩」「リン酸〜」などだけではなく、「pH調整剤」「乳化剤」「膨張剤」「イーストフード」の中にもオールインクルードで含まれている可能性もあるし、練り製品に含まれる「魚肉」には、含まれていても表示免除されるカラクリがあるので、注意したい。
これは、その他の大切なミネラルも排除する。

シュウ酸は、食品の中に含まれており、特に、ほうれん草、タケノコ、コーヒー、緑茶(玉露・抹茶)、紅茶、チョコレート、アーモンド、ピーナッツなどがある。何事も過ぎたるは及ばざるが如しで、バランスよく食べよう。

フィチン酸は、玄米や大豆に含まれる成分。
キレート作用が強く、有害物質を吸着除去する効果があり、玄米のデトックス効果を担っている反面、金属イオンと反応して大切なミネラルも除去することが懸念されている。
ただし、元々植物の中に存在する時点で、鉄や亜鉛と結合しており、腸内でその他のミネラルを吸着除去する作用はさして高くない。
リスクで言えば、添加物としてのリン酸塩の方が高いと言える。

食物繊維は、腸内フローラを育てる最高の食材だが、栄養素を包んで排泄してしまう側面もある。食品としてバランスよく食べるのは良いが、食物繊維系のサプリメントをミネラルと一緒に摂ると排泄しやすくなるので注意。


鉄の弊害

鉄は、重要なミネラルには違いないが、過剰になると強力な活性酸素を発生させ、細胞や遺伝子を障害してしまう。
食品は、なんでも「過ぎたるは猶及ばざるが如し」な要素があるが、鉄はその代表である。
鉄が体に過剰に蓄積する要因は、


鉄剤・鉄サプリメントの過剰摂取
輸血の繰り返し
慢性の炎症:感染症・自己免疫疾患・癌など
症状としては、
倦怠感
脱力感
皮膚が黒っぽくなる

などがある。

一般的に男性や閉経後の女性では鉄剤は必要としないので、むやみに飲まないようにする。
特に、最近は、吸収が良すぎるサプリメント「キレート鉄」(フェロケル)が人気だが、自己判断で飲むことで鉄過剰症のリスクがある。


鉄を含む食材

肉や魚、貝類などの動物性食品に含まれる鉄と野菜や海藻類、穀類などの植物性食品に含まれる鉄。
鉄には、ヘム鉄・非ヘム鉄といいう2種類があり、それぞれ吸収率・安全性などが違う。

ヘム鉄:動物性食品中の鉄

ヘム鉄は動物性たんぱくに包まれた状態の鉄で、
最も吸収効率が良く体に取っても安全。
特に他の食品ととっても吸収を妨げることはない。
肉や魚、貝類に多く含まれ、15〜25%が吸収される。

非ヘム鉄:植物性食品中の鉄

非ヘム鉄はほうれん草や小松菜、プルーンやドライフルーツなど、ひじきなどの植物性食品に含まれる鉄。
吸収効率が悪く2〜5%
食品中の鉄が多くても、体に吸収されるかどうかは別問題。
さらには、食物繊維やお茶やコーヒーに含まれる色素成分・タンニンと一緒に摂ることで吸収が妨げられてしまうので、ますます吸収が悪くなる。


鉄のサプリメント

鉄のサプリメントにも、ヘム鉄と非ヘム鉄がある。
ヘム鉄の方が吸収率がよく、胃腸障害などの副作用がない。
ただし、鉄の不足は、腸内環境の悪化による鉄の吸収障害や再利用障害が原因になっていることも多いので、腸内環境を改善するアプローチを同時にやらないことには、いくらサプリメントを飲んでも吸収されないことも多い。

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