グラベルライドに感じる初期衝動と、ハイカー&トレイルランナーの参入余地。
20年近く、自転車旅をしてきた。実はハイキングよりずっと長い。
そんな僕は時間を経て、再び自転車旅の初期衝動に出会ったかもしれない。
自転車を使って旅を楽しんできた僕たちのユーザー(遊び手)目線と、外遊びを提案するドリフ目線での考察を以下に記載します。
グラベルライディング・バイクパッキングの価値実感と、現在のハイカー・トレイルランナーからの参入余地が大きいと感じたことが記載のきっかけです。
◾️僕たちの自転車旅の変遷
2005年頃にルイガノの街乗りMTBを買ったことをきっかけにスタート。
大阪高槻から、難波や京都に自走往復で70kmグルメ旅をすることからはじまった。
2008年頃からは、KHS(折り畳み)、Cannondale(ロード)の2台体制で日本縦断セクションライドを実施。青森ー呉(広島県)間はコンプリート済み。
この頃はまだ小さなバックパックを背負ってライドしていました。
2015年頃〜現在では、ブロンプトン(折り畳み)、Surly Pacer(ロードメイン)、モンスタークロス(グラベルメイン)の3台で、バイクパッキング、グラベルライディング、街旅を使い分けている。
もう20年近く、レースジャージやレーパンを履く事なく、普段着の延長のアウトドアウェアで「旅」としてスポーツバイクを楽しんできた。もはやライフワーク。
◾️人生を変えた「ULハイキング」への傾倒
2010年から始めたULハイキング。
自然の中を黙々と歩き無心になれる時間。
見た事のないワイルドサイドの景色。
自らの足で踏破していく達成感。
装備や工夫により広がる知見とそのアウトプット。
日本のULハイキング初期から楽しんだことが現在のドリフに繋がっている。
その価値はワイルドサイドの「旅」にある。
この経験なしに、グラベルやバイクパッキングへの言及には至らない。
◾️バイクパッキングというオーバーナイトサイクリングとの出会い
2015年くらいに知ったバイクパッキング。
自転車に荷物(宿泊道具など)を括り付けて走る旅のスタイル。
ハイキング装備を活用してチャリ旅ができるのが嬉しかった。
ホテル泊にせよ、キャンプ泊にせよ、背中に荷物を背負わずにオーバーナイトの旅に出る。正確には「キャリア+パニア」という従来からあったランドナースタイルとの違いがあり、僕らは輪行前提で移動や組み立て含め、サクサク軽快に進みたいので取り外し不要なパッキングスタイルが好みだ。
伊豆大島や佐渡、能登半島なんかは気持ちよかったな。
ハイキングなど歩き旅との違いは移動距離。人力移動は変わらず進める距離が5倍にはなるのも醍醐味だろう。
ULハイキングの装備と知見が全て活かして旅ができることが、自分との相性でもあり、ハイカーとの相性の良さでもある。
◾️日本版ロングトレイルと自転車の相性
2014年春、塩の道トレイルを3日間歩いた。野宿のような行為をしながらする歩き旅は刺激的だったが、基本的にはトレイルよりも、街中やロードサイド、山麓や田んぼの畦道を歩くシーンが多く、正直飽きてくるのだ。
「これチャリでやるべきだな」と感じていた。
2023年夏、みちのく潮風をバイクパッキングで行くというアイデアを同時期に話していたマサシ君と行った八戸ー久慈間のDay1の約100km(標高約1,200m UP)でも同じことを感じた。通常は3−4日で行くルートを1dayで走り切るスピード感と、ルートの6-7割を占める何でもないアスファルト区間の退屈さを想像した。ここの歩き旅は過酷すぎる。。。
「僕はチャリでその景色が見たい」と思った。
もちろん歩き切る達成感はあるだろう。でも行程を1/3に短縮することで移動距離はグラベルに寄せて100kmを走破すると1日歩き回ったのと同等の疲労感と達成感があるのだ。勤め人の休みの有効活用としての自転車ドーピングが最適と感じている。
同様に、2024年4月のふくしま浜街道(双葉-松川浦)ーみちのく潮風(松川浦ー名取)のハンモック泊2daysでも確信につながった。自転車だと「遠回り」して、より快適なワイルドサイド(グラベル)を走ることができるんだ。
舗装道路というインフラが行き届いた日本版ロングトレイルとチャリの相性は抜群だ。
◾️都心から電車1時間の1dayグラベルライディングへの目覚め
2022−2023年と2年連続でニセコグラベルにエントリーし感動した。
ニセコじゃなきゃ味わえない景色とライド。わざわざ時間と旅費をかけてでもくる価値のあるイベント。前後の北海道を堪能すること含め、そう確信していた。
その一方でアクセスのための時間と費用、宿泊費を考慮すると当然負担に思う気持ちもあるし、毎年参加を続けるのも鮮度感含めて躊躇してしまっていた。
そんな中で出会ったのが、都心から普通電車の延長で、アクセスに片道1,000円台でいけるグラベルトリップ。
2023秋の「南房総バイクパッキング」で感動。
2024春の「南房総バイクパッキング」で近場のグラベル旅のポテンシャルを確信。
その翌週の「ふくしまGRAVEL TRIP」で遠回りしてでもグラベルを探し続けるライドの醍醐味を味わい、
さらにその翌週の牛久への「ラーショライド」で1day グラベルライディングが、まるでトレイルランニングをしている感覚であることを実感。
グラベルライドは「必ずしも彼の地まで行く必要がない」気楽さを伝えたい気持ちでいっぱいになったのが、この記事を書きたくなった理由なのです。
未だスモールカルチャーの領域にあることも、天邪鬼な僕たちが魅力に感じる一つの理由かもしれない。
◾️必要な装備について
①グラベルを不安なく走れる自転車
僕たちなりの解釈としては42c以上のタイヤを履いた自転車だと思う。そんなグラベルバイクや、リジッドMTBを走れる仕様にしたモンスタークロスが安心して気遣いなく快適に乗れる仕様。多少のロード(アスファルト)の推進力を犠牲にしてでも勝るグラベルライディングの心地よさを感じられる方に振りたい。
尚、32cタイヤでグラベルを40km程度/日ライドしたことありますが、素人レベルでは安定性に欠け、走れるコンディションも限られ、疲労度もMAXでした…。
また、グラベルの下りにおいてはディスクブレーキの恩恵を感じます。
(上級者は問題ないのかもしれません。)
②バイクパッキング装備
1dayかオーバーナイトかで大きく異なるが「バックパックを背負わないスタイル」が快適なライドには必須。
バイクパッキング装備の中身はハイカーにはお馴染みのアイテム群だ。
オーバーナイトなら、大きめのサドルバッグに
加えて、フロントバッグとフレームバッグの類、なんなら大きめのスタッフサックを括り付けられるケージが装備できれば無敵だ。
1dayならそのうちの1つくらいあれば十分なはず。
あとは服装こそ何でも良いのだ。山服でも街服でも自身の快適限界を満たす服装であればどうでもいい。少なくともライド用のウェアは不要だ。
◾️マーケットの余地
ハイカー1,000万人、ランナー1,000万人と言われる市場はシェアソースになる余地が大きい。あくまでその双方をライフワークにしている僕たちの意見だが、どこか確信に近いものを感じている。
旅をする感覚。移動する感覚。ワイルドサイドを行く感覚。
そして体力ベースでの親和性。
加えて現有の装備をそのまま使える効率性。
ロードバイク人口はその1/10の100万人と考えると、ワイルドサイドの遊びに親和性があって、そもそものパイの大きいハイキング・トレイルランニングをターゲットにする発想はチャンスでしかないと思う。
(追記)ターゲットと考えるトレイルランナーはコンペ思考の少ない人達を指す。
◾️参入障壁
①初期投資の金銭的課題
エントリーバイクであれば、最低限の投資としては20万円程度で始められる。
しかしそれではハマったら早晩グレードアップしたくなるのは自明。
ある一定買い替えやグレードアップ不要なチャリを組もうと思ったら、最低40万円は必要となる。ハマるかどうかわからない趣味に、40万円をポンと払うハードルはあって当然。ましてやパッキング装備を揃えようと思ったら+5万円くらいかかるはず。(ハイキングのテント泊装備で全部で20万円くらいでしょう。)
②ルート組みの難易度と経験・知見不足
自転車屋でさえ、ルート組める人は少ないんじゃないかなと最近思う。
グラベルバイクの本来の遊び方を実践して提案したり、引っ張っていける店や場所や人が足りていない気がする。現在はその遊びとセットとして提案して欲しい自転車屋の全てがその機能を果たしているとは言い切れない気がする。
数少ないグラベルライドイベントがその役割を果たしているのが現状。
◾️課題とリスク
①マナーによってはグラベルの地権者などとのトラブル発生
公道ではない道を通ることもある。つまりは私有地的な場所を勝手に走っているかもしれない。何か言われたらそのルートは通れないことになる。ハイキングでもトレランでも一緒ではあるが。。。
②トレイル・グラベルを共有するハイカー・ランナーの権利主張
みんなのトレイルだが、トレイルには序列とも言える暗黙のルールが存在していて、生活者>ハイカー>トレイルランナー>チャリという構造。
勘違いしたチャリの人達の行為は即批判の対象になるだろう。我が物顔で走るトレイルランナーが批判の対象になるのも一緒。それ以上になると思う。
ただし、年齢構成からもハイカーは固定観念の強い層多いことから権利主張の老害と化すことも文化の発展の障壁となっているのかもしれない。その辺は時間の経過により解決されるかもしれない。同時にハイキング・ランニング・チャリをシンクロして楽しむようになることで相互理解が進む可能性はある。
③人口増加により文化が荒れていくこと
これはスモールカルチャーに参入者が増えマス化すると必ず発生すること。一方で前述の参入障壁はかなり大きいので、その領域に到達するまでには相当な時間がかかるはずだが。仮にそうなったとすればマーケットは外遊びシーンに置いて驚愕の伸長を遂げていることになる。うーん。まだその想像はつかないなぁ。。。
◾️広げるためのプレイヤー(考察)
「リアル」で体験を共有したり、初期は引っ張ってもらったりすることが必要な遊びではある。ゆえにキッカケの提供が必要ですね。
①遊びと一緒に提案できる自転車ショップの存在
自転車屋や自転車メーカーがその機能を担えることがベストの形だろう。
クローズドでルートを共有したり、少人数でのライドイベントがベターだろう。
一方で、手間・負担を考えると急激に拡大・進行する感じはしないんですよね。
②ハイキング・トレイルランニングのショップ/メーカーの領域拡大
ハイカーやトレイルランナーとの接点がある場所や店が遊びを主導していく形だろう。次の遊びとしての提案余地は大きいからチャンスはある。
一方で、課題は現状では自転車を売るわけじゃないので、イベントや周辺装備の販売では採算は期待できないこと。自転車屋と組んで何かをする方法はありますが、長続きするスキーム構築は難しいかもしれません。
OMM BIKEは好例ですよね。ドリフのお客さんでもOMM出たいから自転車買ったって人居るもん。すごい。
③地元の観光資源化したい自治体主導のプロジェクト
ニセコグラベルや各地の林道活用に代表されるような形態。
地域の自然資源を活かしてオフィシャルに人を呼ぶスキームづくり。
課題は既に多々あるんだろうけど、予算と人を使えて、無駄な口出ししない運営ができたらここが一番可能性がありそう。ただし、イベント1発に頼ったり、現状の関与人口の少なさでは効果薄になってしまうのかもしれない。それならばハイカーやランナーとのシェアトレイルの構造にして「3シーズンいつでも楽しめる」環境がベターなのかもしれない。
「みちのく潮風」などロングトレイルの利活用の推進と参入者拡大に寄与しそうだ。
④ルートを引けるスキルを持った個人(ルートファインダー)
既に遊んでルートを複数知っている人や、地形図アプリなどを利用して自らルートを引ける人の存在が貴重になってくる。ルートファインダー個人がショップやメーカーと組んでライドを企画する形もあるかもしれない。価値はあるので稼げる仕事になってくる未来も無くはないですね。そうなったら楽しいのかどうかは別ですが。
◾️バイクパッキング&グラベルトリップ専門店の可能性(妄想)
ドリフが、信頼できる自転車のメカニックと組んで、自転車販売と、旅や遊びの知見と合わせてシナジーを生む拠点を作れる可能性を妄想することがある。バイシクルガレージブランドとの連携や新たなプレイヤー創出、クローズドのイベントなどとの連携は余地がありそう。レンタル可能な共用車を持つ選択肢もあるだろう。
もちろん、外遊びの達人たちのフォローが必要ではあるが、知見がスケールする仕組みを作ることが出来ればそんなことも可能かもしれない。
妄想を2年以上続けて寝かせているアイデアではあるが、人との巡り合わせさえあれば、一気に進むこともゼロではないかも。(採算などをシミュレーションしたことはない。)
以上。
また、考えに変化やアクションに進展があったら記載します。