あまりに深すぎるJack Strattonの世界[3] Vulfpeck結成前の活動「DJ Paradiddle」
KINZTOのDr.ファンクシッテルーだ。今回は「どこよりも詳しいVulfpeckまとめ」マガジンの、11回目の連載になる。では、講義をはじめよう。
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今回も、Vulfpeck(ヴォルフペック)のリーダー、Jack Strattonのサイドプロジェクトを解説していこう。今回はJackが、Vulfpeckを始める前、「どういう作品を作っていた」かだ。
Vulfpeckの宣伝戦略の核となっているYoutubeチャンネル。2020年5月現在、登録者数は40万人に届こうという大人気チャンネルだが、そのアドレス名が「DJparadiddle」となっているのは意外と知られていない。
DJparadiddle。DJパラディドルだ。これはいったい誰のことだ?
そう、これもリーダーのJack Strattonのことである。
この動画が、現在のYoutubeチャンネル「Vulf」で、一番最初に投稿された動画だ。
四本の動画を組み合わせ、ひとつのリズムを叩き出すこの動画。これがJack Storattonの当時(2008年)の活動、「DJ Paradiddle」としての最初の動画になる。当時はhttp://www.djparadiddle.com/というサイトも制作していた(現在はクローズ)。
もちろん、動画の撮影・編集はすべてJack Storatton本人だ。他にも、こんな作品がアップロードされている。
この動画(2008年)は以前紹介したオンラインリズムマシン、「Funklet」につながっていくアイデアだろう。Funkletは2011年にJackの友人のRob StensonとDevin Kerrによって制作された。詳しくはこちら。👇
他にもDJ Paradiddleとしての活動は、こんな動画がある。
おそらく最初は、このチャンネルは「DJ Paradiddle 」だったのだろう。当時はまだVulfpeckは存在しなかった。ここでJackは自己の複数のプロジェクトの動画をアップロードし続けていく。
そしてこのチャンネルにVulfpeckの動画も投稿するようになり、現在のロゴの入った「Vulf」チャンネルになったのだろう。
ここから見えてくるのは、「Funklet」のときと同じく、Jackのドラマーとしてのセンス、テクニック、そしてファンクのグルーヴに対する執着心。そして、それらを「分解して再構築する」という、テクノロジーを経由した発想だろう。学生時代にBoss SP-303というサンプラーに夢中になった彼は、やはりサンプリングによる無機質な音が組み合わさった結果生まれる、人間的なビートというものに惹かれていたのだ。
このDJ Paradiddleの活動と並行してJackはGroove Spoonというバンドに関わり、そこに在籍したJoe Dart、Antwaun Stanley、また同時期にMy Dear Discoというバンドに在籍したTheo Katzman、Joey Dosikらと、Vulfpeckとして活動していくことになるのである。
◆著者◆
Dr.ファンクシッテルー
宇宙からやってきたファンク研究家、音楽ライター。「ファンカロジー(Funkalogy)」を集めて宇宙船を直すため、ファンクバンド「KINZTO」で活動。
◇既刊情報◇
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