#164 大奥づくし-コンプラなき世のフジは強かった!
大奥~第一章~(2004)
大奥第一章は徳川幕府黎明期「大奥」誕生の物語。戦国時代という激動のときを生き抜き、大奥という新しい秩序の中で、熾烈な生存競争を繰り広げた女たちの魂のドラマを、「大奥」史上最も有名な女帝・春日局の半生を中心に展開する。春日局は、ドラマからバラエティまで幅広い演技が注目の、あの松下由樹が演じる。また、高島礼子、瀬戸朝香ら演技派が華を添え、女たちの壮絶な生きざまを描く。
第1話の衝撃
主人公は当時、絶頂を極めた松下由樹が演じる春日局。世に知れた徳川家光の乳母。ドラマの大半が大奥の誕生や権力闘争に割かれるが、第1話のインパクトがヤバすぎる。嵐の夜、夫の田舎侍(神保悟志)と酒を酌み交わす侍たちに裏切られ、家族ごと拉致され、あらゆる財産を奪われ、襲われそうになった末に鬼神と化し、侍らを惨殺する。夫からの庇護はなく、離縁されたうえ、裸足で山を下り、苦労の末、将軍家の下働きの職を得る。コンプラやBPO審査の目が光る現代ではとても描写できないシーンが連続。高視聴率で話題になっていたが、あの当時、親子そろって観ていた家庭はどんな感情だったのだろう?想像するだけでおぞましい。
大奥~華の乱~(2005)
内山理名主演の時代劇シリーズ第3弾。第5代将軍・綱吉(谷原章介)の時代、大奥の権力は綱吉の生母・桂昌院(江波杏子)に集まっていた。綱吉の側近・牧野成貞(平泉成)の娘・安子(内山理名)は、自らの家族を崩壊させた綱吉への復讐のため大奥へ入ることを決意するが、彼女を待っていたのは一筋縄ではいかない恐ろしい女たちだった。
第1話の衝撃
主人公は当時、売り出し中の内山理名。世に知れた徳川綱吉の側室で、ドラマの大半が大奥での権力闘争に割かれるが、第1話のインパクトがヤバすぎる。生来の女好きの徳川綱吉(谷原章介)がこともあろうに自身の乳母であった阿久里(萬田久子)を手にかける。夫で綱吉の部下(平泉成)は忍の一字で綱吉にいたぶられ続けたうえに、娘(内山理名)を夫(田辺誠一)と離縁させて、綱吉の側室に差し出すハメに。その後は藤原紀香や北村一輝らを交えた権力闘争が描かれるが、ドラマのメインはエロ将軍・綱吉に翻弄される女性陣。現代ではとてもBPO審査に耐えられないエグイ作風を当時の家族はどんな感情で見ていたのだろう?想像するだけでおぞましい。
その点、最近の大奥は美しい(1)
NHKで放映された大奥(2023)では男女逆転が話題を呼んだ。特に徳川吉宗を演じたカッケー冨永愛に注目が集まったが、それよりも関心を惹いたのが美少年・万里小路有功を演じた福士蒼汰の美しい所作。役者として一皮むける記念すべき作品となった。
その点、最近の大奥は美しい(2)
フジで久々にリメイクされた大奥(2024)では、幼子を殺されるシーン以外、旧作のようなエグさは影を潜めたが、NHK版の福士蒼汰同様、美しさで魅せたのが徳川家治役の亀梨和也。田沼意次(安田顕)の掌中で操られる不幸な将軍が見せる物憂げな表情が視聴者の視線を釘付けにした。小芝風花、西野七瀬、森川葵ら、若返った女性陣による権力闘争も面白かったが、亀梨和也の存在感が頭ひとつ抜き出ていた、
あの頃フジは強かった
思い返すと、BPOに配慮する必要のなかったころのフジのドラマは強かった。「救命病棟24」時にせよ、「空から降る一億の星」にせよ、「眠れる森」にせよ、ドラマの核に、虐待、近親相関、暴力など、今では描写しづらい過激なシーンが盛り込まれていた。そのようなシーンを待ち望んでいるわけではないが、登場人物の背負っている重荷が切なさに拍車をかける効果があり、ある意味、演出効果は高かったと言える。その点、現代はフジにとって、生きづらい世の中になっているのだと思う。