いきなり塊根沼にハマった話(1)アデニウム
人は突然恋に落ちる。理由なんて後づけである。そんな風にある日突然わたしはアデニウム アラビカムというやつに恋をした。
そもそもエケベリアなどの小さな多肉が無事冬越しするだけでいっぱいいっぱいだったのに、いきなり塊根植物に挑戦という暴挙に出た。恋に落ちるってそういうことなのか。無理とか考える前に気持ちが止まらない。
塊根植物=コーデックスは葉じゃなく根に水分を貯める多肉植物だ。何気に検索していたらぷっくりした根元が愛らしいオブジェのようなアデニウム・アラビカムに心を鷲掴みにされ、まるで盆栽を愛でるような気持ちになるぜと盆栽を育てたこともないのにドキドキしてきた。(不正脈かも)
会う前に下調べをしてみると、あのムッチリ変形大根みたいな形にするにはなかなか手間がかかるみたい。素人には難しいのでは??
だがすでに形が整ってるものはすんごい高い!
しかし夜中にアラビカムの情報ばかり見ていたらもう小さくでもいいから欲しくて欲しくてたまらなくなった。今すぐ逢いたい、興奮して眠れない。Youtubeの育て方動画を見まくり、とりあえず気を沈めるためにAmazonでアラビカム種を注文した。(なぜ種から?!)
翌日は走って園芸店に行った。(ほんとに走った)以前、小さなアラビカムがいくつかあるのを見て「ちっさ!」と素通りしたのを後悔した。でもちゃんと残っていた。塊根の幅は3㎝くらいだか小さくても形がよい。
精神安定剤のように大切に持ち帰りあちこちから眺めてニヤニヤした。不気味なものを見る目で猫たちが遠巻きにしている。
そして飽きずに塊根植物専門のネットショップを覗き見してたら拳くらいのプリプリした塊根のアデニウムを発見した。大きくて立派なのは何マンもするが、このくらいなら手が出そうである。一口食べたら止まらないおやつのようだ。
だがやはり塊根植物は実際に見てから買いたい。あのぷりぷり塊根部を触って確かめたい。
何かが欲しいという人間の欲求は寝不足だろうが疲労困憊であろうが、違うところから力を湧かせてくれる。
会社からの帰り道、そのショップに走った。駅から遠いし人混みを逆行してやっとたどり着いたのは古いマンションの一室。だがドアを開けたとたん、珍しいアデニウムやバカでかいアガベやらが所狭しと並んでいて思わず嗚咽した。欲しいものだけがたくさん詰まったおもちゃ箱のような部屋だ。中には200マンとかするアガベがいる。すごくいい形の大きなアデニウム・タイソコトラナムもある。
ここにあるのは海外から抜き苗(土から出されて根を切られた裸状態)で輸入され、日本で発根させた塊根たち。こんにちわ、はじめまして。目がギラついてるけど怪しいものではありません。
このショールームからまだ葉が出ていない小ぶりでお手頃価格のアデニウム・アラビカムを大切に抱えて帰り、さっそく植物育成ライトの下に並べた。
ミニアラビカムと一緒にあちこちから眺めながら、このアラビカムがうまく育ったら、あの大きなタイソコトラナムもいつか迎えに行こうと思いを馳せるのであった。
たった2つのアラビカムを買っただけで、育てきってもいないのにおかしな話だが、こうやってわたしは塊根沼にハマっていったのである。
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