龍の目が光るとき @46
IDがなぜ「dragon_eye」になってるのかというと、この龍の目のことをnoteの最初に書きたかったからだ。いや、実際書いて投稿もしたんだけどね。その時は名前も Dragon_Eey だった。でも気が変わって本名で自分をさらけ出してみようと思ったわけだ。ただアイコンの写真は20年前のネパールをさまよってた頃の写真だが・・・。そろそろ今の写真もさらけ出したいが、それにはちと勇気がいる(3年前の写真はある日の投稿に何気に貼ってあるので、物好きで奇特な方は探してみて下さい)
ということで前置きが長くなってしまったが、封印を解いて「龍の目」について書きたいと思います。
龍の目
安木屋場と円のあいだの海岸通りに「かがんばなトンネル」というトンネルがある。全長20mほどのとても短いトンネルだ。
そのトンネル越しの東シナ海に太陽が落ちるとき、そしてその夕日がちょうどトンネルと重なるとき、そこは龍の目(ドラゴンアイ)となり、光を放つ。
しかし、夕日の沈む位置は日々ずれてくるため、この地に龍が降りたつのは年に2回、春分の日と秋分の日の前後1週間だけなのだ。トンネルの向う側の夕日の軌跡上に、わずかでも雲がかかると龍の目は光らない。
おまけに日本一雨の多いこの島ときている。すべての気象条件と時期とがうまくかみ合わないと見られない、それはトンネルという人工物と大自然との織りなす、まさに奇蹟の瞬間なのだ。
実際、この島に戻ってもう6年が経つがいまだに光輝く龍の目を見たことは一度としてない。下の写真はまだまだ未完成な龍の目だが、それでもこんなに光を放つ。山の斜面が龍の胴体、トンネル部分が目と頭になる。
この日は夕方まで激しい雨が降っていたが、日没一時間前にその雨はピタリと止み、そしてあっという間に雲が流れて晴れわたった。しかし残念ながら、水平線の少し上にわずかに雲が残ってたので、鈍い輝きになったのだ。
本当に龍が降臨すると、龍の目はこのように光を放つ(写真は他サイトより拝借した)
NET上にもいくつか動画が挙がっているが、その中でも平井さんの動画が素晴らしい。24分と少し長めだが、夕日が龍の左斜めの頭上から、ゆっくりと徐々に徐々にトンネルと重なり、龍の目になるまでの軌跡がワンカットで記録されています。
龍が降臨するのはわずか4分ほど、トンネル中央にピタリとはまって光を放つのはほんの1分ほどだが、ゆっくりと降りてくる夕日の軌跡、波のざわめき、背後のオレンジ色に輝く夕焼け、ときどき立つ龍の鼻っ柱の波しぶき、光る龍の目に吸い込まれる自動車、目が消えた後の静かに打ち寄せる波、そして島っちゅたちの歓声、それらすべてが24分のひとつの物語になってるようだ。
タイムリスト
13分30秒~ 龍 降臨
15分30秒 ピタリ中央
17分40秒 龍 退去
18才までこの島にいたのだが、その時はまだ「かがんばなトンネル」は無かったので、この光景を見ることはなかった。海岸沿いの道路を整備し、山を切り開いてトンネルが開通したのが1998年のことだ。トンネルという人工的な物、いわば自然破壊ともいえる場所に、大自然の神はこんな奇蹟をおこしてちゃんと帳尻を合わせてしまう。
夕日の軌跡を計算してこのトンネルを設計したわけでは決してないだろう。たまたま季節の節目に夕日がトンネルにピタリとはまっただけで、それをたまたま人が発見しただけのことだ。しかし、それは先に書いた刹那にみる夢とよく似ている。神はあらかじめこの場所を知っていたかのごとく、龍を降臨させるためにこの地にトンネルが出来たとしか思えないのだ。
人が一瞬で自然を破壊し、神はその位置に太陽を配置するまでの果てしない物語を紡ぎ、そして僕は神の創った夢の一瞬を今、現実の世界でみている。いや、この瞬間さえも神の夢の途中なのかもしれない。
自然を壊す人間、その壊された場所に神はそれを上回る超自然現象を与えた。しかし、この地は決して神の領域ではない。もちろん人間の地でもない。ここは大自然とおろかな人間との共存の地であり、人は決して大自然を越えることなどできない、人は大自然の中のほんのちっぽけな存在でしかなく、ここはそれを知らしめる為の場所なのだと思う。
龍は実在しない架空の生き物だ。そして、世界中に龍にまつわる伝説や言い伝えが残っている。
中国では帝王のシンボルとされ、水中に棲み、鳴き声で雷雲や嵐を呼び、竜巻になって天空に昇り自在に飛翔するといわれている。ヨーロッパでは「ドラゴン」になり、その姿はトカゲやヘビに近い。インドでは「ナーガ」になり、蛇神や水神として祀られている。
そして日本では「九頭龍伝承」が有名だ。九つの頭を持った龍を退治にいったヤマトタケルノミコトが、呑み込まれた腹の中から龍を滅多切りにし、その血が「血染川」なって三日三晩流れた。その九頭龍の霊魂を供養し「九頭龍権現」として祀られている。かつて鬼として恐れられていた九頭龍は、水神になって雨と水を農村に与え助け、雨乞いの神となったのだ。
ちなみに僕の住む集落は龍郷(たつごう)、つまり「龍のふるさと」だ。龍の起源は案外この地にあるのかもしれない。