286DAY -自分が高3までに読んだSF4選・後編-
後編です。詳細は前編を参照してください。
・月は無慈悲な夜の女王 ロバート・A・ハインライン作
アイザック・アシモフやアーサー・C・クラークと並び、SF界のビッグスリーなどと称されることもしばしばあるハインラインの傑作に数えられる名著である「月は無慈悲な夜の女王」。
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まず名前がとても好きな作品だ。その名前は作品を読むことで各所に見られる要素を非常に想起させてくれる。戦略兵器としての月。革命国家としての月。全てが終わった後にも何事もなかったかのように冷ややかに佇むであろう月。あらゆる場面を一語で表しきっているその題名は、とてもスタイリッシュでかっこいい。
舞台は未来。地球は地球連邦が統治し、月は流刑地として数百万もの人口を有しており、インフラや社会制度も企業や個人によるもので賄われる劣悪な環境であった。その中月では連邦に対する不満が爆発し、主人公は高性能コンピュータであるマイクとともに地球連邦に対し独立を宣言する。
「三体」で描かれる人類の世界観に全体的に革命要素を付け加えたような感じだが、三体は最終的に宇宙全体の話に移っていくのに対し、本作は最後の最後まで人間のエゴや本質が、独立戦争というシンプルな形で描かれる。
とてもわかりやすい構図のため読者もわかりやすく、「ソラリス」のように個々人の本質ではない集団心理の本質の一つをつくのが本作と言える。
間延びした感じもなく、歯切れの良いボリューミーな一作品として仕上がっているのもおすすめポイントだ。
・標本作家 小川楽喜作
今までの三作は、SF小説として歴史に残る名著ばかりであると思う。だが自分は本屋でふと買った本作が、「三体」「ソラリス」「月は無慈悲な夜の女王」にも負けないSF力、エンターテインメント性、そして狡賢さを兼ね備えていると思った。
本作は2022年に第10回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞している。
舞台は西暦80万2700年。人類は滅亡し、高等知的生命体「玲伎種」によって過去の作家が再生され、不老不死の肉体と一つの願いを叶えることを報酬に永遠に小説を執筆させられ続けていた。巡稿者であるメアリ・カヴァンは彼らの執筆を見るうちに、作家たちの心理と「玲伎種」の目的に近づいてゆく。
自分はこれを読んだ瞬間。「ずるい作品だな」と思った。作者がやっていることをそのまま小説の設定の肝におくとは。しかもおもしろい。なおさらむず痒い気分にさせられた。大いにヤキモキさせてもらった。
だがこうして壮大な世界を創造し、訳のわからないど道理を展開して最後に結末を痛快に書き切る。これもSFの一興と思った。だからこそ、本作は強くおすすめしたい。