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ポーター先生、結局戦略はどう作ればいいんですか?

組織、会社をどういう風に動かしていこう、と誰もが寝る前には頭を悩ませていると思います。リソースをどこに配分するのがいいのか、どの分野を広げていくのがいいのか、悩みはつきません。ぼく自身もそんな一人です。

次の打ち手をどうするのか? 今考えている打ち手は本当に正しいのか?

悩みを解決するためには、いつも本にあたります。今回の悩みは「戦略」についてだな、戦略といえばマイケル・ポーターでしょう。ということで、この本を読みました。

マイケル・ポーターの競争戦略!

めちゃくちゃ面白いです。3周読みました。

ファイブ・フォース分析!

バリューチェーン!

なるほど!

よしよし。これで次にどんな打ち手をとるかは完璧だ!と思いました。3周読みましたので。ファイブ・フォース分析をしてバリューチェーンを設計すれば怖いものなし!

まずはファイブ・フォース分析だ!

ファイブ・フォース分析!

簡単にファイブ・フォース分析についてさらっておきます。

ファイブ・フォース分析とは、サプライヤー、買い手、代替品、新規参入そして競合の5つの要素から業界構造を分析するというものです。

この本でかなりしびれたのは

「SWOT分析には・・・思いつくままに項目をあげるだけで終わってしまう。・・・どんな問題が頭に浮かんだかで、内容はランダムに変わる」

というSWOT分析との比較です。一方でファイブ・フォース分析は、客観的なツールであり事実と分析に立脚しているためただの箇条書きではない、ということです。(SWOT分析とは、S:strength(強み)、W:weakness(弱み)、O:opportunity(機会)、T:threat(脅威)の点から組織の外的要因・内的要因を分析する手法です)

なるほど! たしかに、その時の気分で結果が変わるような分析は良くないですね!

うちのサプライヤーは医薬品業界か、買い手は患者さんで、代替品はサプリメントなど。。。

ふむふむ。・・・。これって次の打ち手は分からないのでは?

そうです。3周読んだので気づきましたが、ファイブ・フォース分析は「業界構造」を分析するためのものであって、次の打ち手が決まるような魔法の分析ではないのです。

もちろんポーター先生は、ファイブ・フォース分析だけではありません。

バリューチェーン分析だ!

バリューチェーン分析!

バリューチェーンとは、製品を設計、生産~サポートまでの活動の集合を表します。

たとえば、車椅子の販売というのが最終的な製品として。設計から行うのか、中古品を回収するのか/大量生産するのか、サポートは行うのか、など企業によってその選択は違います。

そして、分析のうえではROIC(投資資本利益率)が重要です。言ってしまえばポーターの戦略はいかにROICを上げるか、ということです。

まずは、他社(他の医療機関)のROICを調べるぞ!と、思いましたが診療所は一般企業ではなく、公開情報もないので正直分からん。医療法人の場合は報告義務があるものの、普通の企業と違いなかに利益を残そうとしないのと細かい動きが分からない。。。○野研究所から業界分析のレポートを買うべきか?

いや、ROICは計算できないもののバリューチェーン分析だ!

研究開発はしない。サプライチェーンとして、薬の製造から入るのは非現実的。製造オペレーション、マーケティングは。。。頭にあるものを書き出して、と。というか、これは現状自分が考えてきたものを書き出しているだけでは。。。

もしかして、もしかするとポーターの競争戦略って役に立たないのでは?

いや、そんな訳はない。ここまで世界を席巻するポーター先生の戦略論が役に立たない訳がない!ぼく自身が未熟なためにポーター先生の戦略論を使いこなせないのだ!エッセンシャル版ではなく、本家の競争戦略を読むべきか。

とりあえず、これでは次の打ち手が固まらない。

そんな時には本屋にいきます。そんなときに巡り合ったのがこれだ!

戦略サファリ!

これもめちゃくちゃ面白い!

めちゃくちゃ面白いながら、だいぶ読みにくいです。読みにくい原因としては、訳者自身も触れていますが、翻訳が流暢ではないです。それでも、読みにくさを補って面白いです。

ざっくり言うと

ポーターの競争戦略は戦略の10個ある派閥(スクール)の1つにすぎない

ということです。

そもそも「戦略」の定義が非常に曖昧である、というところから始まります。「戦略」とは、はじめに固めたものを遂行するものなのか、それとも都度都度変更するのか。「戦略」を考えるのは経営トップだけなのか、組織全体が考えるのか。

などなど。

そのうえで、SWOT分析はデザイン派閥、ポーターはポジショニング派閥などと分類し検証されていきます。

ポーターの戦略の欠点

そこで指摘されているポーターの欠点がいくつか指摘されています。

・1つの戦略に固執するのは組織の視野を狭めてしまう

・戦略をトップダウンにするため学びがない

・データから戦略を作るため形式的になりすぎる

・戦略作成に関する理論が存在しない

・論文としてのデータとして、量的な差別化にバイアスがかかる

・既存の確立されたデータからでしか分析できない

など。非常に説得力のある形で論じられています。特に衝撃だったのは、「戦略作成に関する理論が存在しない」のです!ポーター先生は戦略の「分析」については論じていますが、戦略の作成方法については論じていなかったんです。

さらに、これは医学としての研究手法的にも馴染みやすかったのですが、統計的なデータ処理をするためにデータの取りやすいことにエビデンスが溜まりやすい、ということです。新しい業界を作るということや、質的な評価は研究手法として評価がされがたいということです。

ここで指摘されている欠点はエビデンスどうこうではなく、構造的な問題なので、ひっくり返すことはとても困難です。

結局、戦略はどう作るのか?

ポーター先生もあてにできないことが分かったので、ミンツバーグ先生(戦略サファリ)のもとで新しい戦略を作るぞ!

と言いたいのですが、ミンツバーグ先生は繰り返し言います。

「戦略は複雑です。単純化すること自体が間違っています」

ということで、やっぱり自分でうんうん悩みながら戦略を考えるしかないようです。銀の弾丸なんてなかったんです。

即効性はないけど素晴らしい戦略サファリ

戦略サファリは、ばらばらな戦略論を一つにまとめあげる強力なガイドブックです。

先日、ALL STAR SAAS FUNDの経営と組織戦略についての話を聞かせていただきました。

その際に、ああこれはラーニング派閥的部分とポジショニング派閥的な部分が入り混じっているなー、などと非常に考えやすくなります。

ということで、戦略サファリおすすめです!

こういう戦略などのビジネス本の読書会などないかなー、と思っていたのですが、それがMBAかと気づきました。もし、こういった本の読書会や議論したい、などあればぜひ教えてください!

補足:ポーター先生は偉大ですよ

流れ的にポーター先生は使えないねー的な文脈になったのですが、非常に強力なコンセプトを与えてくれます。

ファイブ・フォース分析では、収益構造の大枠は外的要因(業界構造)による影響の大きさがわかります。そしてバリューチェーン分析も手法そのものより、企業の活動全体が最適化されることに意味があるということや、差別化のポイントを意識する強い助けになります。

戦略サファリでも、どの戦略にも一長一短があると言われており、ポーターの戦略も使う場面の問題です。

ただ、ポーターの戦略が広まったのはコンサルが力を持つのと並行してと言われています。そのため、現場への理解が深い場合には、分析をこねくりまわすよりも直感的な発想の方が「答え」に近いのだと思います。

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