「デトックス」とは
こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。
美容やアンチエイジングを機にすると目にする「デトックス(解毒)」と言う言葉。
デトックスサプリメントやデトックス治療など様々な物があります。全てが悪いとは言いませんが、そもそも人体には自然に毒物を無毒化し排出する機能が備わっています。
正しく「デトックス(解毒)」について理解して頂き、不安を煽るマーケティングに騙されない様に、今回はデトックスについて書いてみます。
【体のデトックス機能は肝腎だけ】
外から取り込んだり、体内の化学反応で発生した毒性のある物質は、肝臓で代謝され無毒化され、水溶性の物は腎臓から尿の中に、脂溶性の物は胆汁の中に排出され、便とともに外に出されます。
コレが自然な解毒経路であり、この他にも汗に毒物が排出されたり、髪の毛や爪などの死細胞に毒物が蓄積し排出されると言う経路もありますが、体内にどれだけその毒物が蓄積しているかを知る為の指標として役立つくらいで、汗や髪、爪から毒物が積極的に排出される訳ではありません。
サウナや温冷浴の健康効果についても、「発汗によるデトックス効果」と言うのはサウナ業界のマーケティングイメージによるものです。
とは言え全く無意味という訳でもなく、普段汗をかく環境に無い人達が汗腺を活性化させ、体表の毛細血管を拡張させたり収縮させたりすることで、末梢組織の循環や代謝を促す効果は否定できません。自律神経の交感神経過緊張を和らげバランス良く整える、と言う抗ストレス効果もあるでしょう。
「デトックス(解毒)」を意識したければ、「排便と排尿を滞らせない」と言うことがとても大切になります。ですから、世の中の多くのデトックスサプリメントは、下剤成分や利尿効果のある成分が含まれている事が多いです。
とは言え、利尿効果のる成分は、体が脱水になっても水分を排出させ続けるので注意が必要ですし、下剤で下痢を起こさせる場合、腸液とともにミネラル分も喪われるので、こちらも注意が必要です。
【有効な可能性のあるデトックス法】
急性毒物中毒の方の命を救う為に、医療現場でも使われている治療法があります。
物質を吸着する力の強い活性炭を飲ませる方法、或いは点滴などで毒物やミネラル分(金属分子)と強く結合して体外に排出される、キレート作用のある物質を投与して、体内から毒性物質を速やかに排出させる、と言うやり方です。
ただ正常な肝臓であればほとんどの毒物は無毒化されますので、急性毒性があり命の危険があると言う場合に限って行うべきものです。
活性炭については、食あたりをした場合などには、嘔吐や下痢の原因物質を吸着して排出させるので、水分補給とともに使うと、回復が早まります。
キレート剤にせよ活性炭にせよ、「体にとって毒性のある成分」だけを識別することは出来ませんので、例えば活性炭を料理に混ぜたりすると、料理に含まれる栄養分としてのミネラル分を吸着してしまい、体に取り込める量が減ってしまいますし、食あたりの際や脱水時に、経口補水液などのミネラル分を含む飲み物と併用してしまうと、ミネラル分も吸着してしまうので注意して下さい。
そしてコレ以外の「肝機能をサポートするハーブなどの有用成分」を使った薬剤やサプリメントについては、肝機能が本格的に弱っている人には負担になりますし、正常な肝機能の人にはあまり効果がありません。
二日酔い予防や対策のサプリメントに含まれる成分も、基本は肝機能をサポートする物ですので、特に肝臓に負担をかける時などに、たまに使う分には良いと思います。
【デトックス効果は期待出来ないかも知れない方法】
この他にもたくさんの「デトックス法」が存在します。その中でも有名なのが、「ファスティング(断食)」と「エネマ(浣腸)」です。
一部の人にとって、定期的な断食や浣腸が健康効果をもたらすと言うことは、実際にありますので、そこを否定するつもりはありません。
ただ、ファスティングもエネマも「デトックス(解毒)」を目的にはしない方が良いと思います。
現代人の多くは、起きている間は2-3時間おきに何かを食べたり飲んだりしており、その度に血糖値があがりインスリンが分泌される事が繰り返され、体細胞のインスリン受容体がインスリン刺激に麻痺してしまい、効きにくい状態になっていて、それが肥満の一因とも言われています。
定期的に水分以外口にしない時間を作ることで、インスリンに対する反応性が回復します。その最低ラインが14-16時間と言われており、睡眠時間と合わせてそれくらいの時間は固形物を食べない様にする事で、糖質依存症を緩和し、血糖値の乱高下を改善させられます。
この様な短時間の間欠的断食の場合、断食時間以外の食事制限は一切しないで好きな物を好きなだけ食べて良いとするやり方もあるのですが、精製糖質(デンプン加工品、甘い物)は控えめにして蛋白質源となる動物性食材や様々な野菜を意識的に摂る様にして、血糖値の乱高下を抑える意識も大切になります。コレをする事で、食事総量が消費エネルギーより抑えられれば、健康的に痩せられます。
一方で、この様な間欠的ファスティングをしても、糖質依存がある状態で甘い物やデンプン質と脂質がタップリ含まれる食事を大量に摂ると太りますし、3食食べる時と同じ様な食事をしているとカロリー不足の栄養失調になってしまいます。ですから正しい知識でしっかり準備をした上で行う様にして下さい。
思想や信条により中長期的な週単位、月単位のファスティングをする人達もいますが、長くすればするほどに、骨や歯が脆くなり栄養失調になっていきますので、やるのであれば14-16時間の間欠的ファスティングか、月1回程度の3-5日以内のファスティングをオススメします。
3日以上のファスティングの場合、準備や回復過程を適切に行わないと、健康被害が起こる可能性もありますので、正しい知識と経験のある人の指導のもとに行う様にしましょう。
エネマについても、「定期的に宿便を出す」と言う事がスッキリ感がありデトックス出来ている気はすると思うのですが、正常な体であれば、敢えてエネマをしなくても排便されますし、以前の記事でご紹介した様に、十分な量の水分を摂れていれば、便の滞留時間は半分程度になるので、毎日数回排便出来ている人であれば、エネマを無理に行う必要はありません。
例外的にセンナなどの刺激性下剤を習慣的に使う様な便秘症の方の場合、腸の運動が弱くなってしまい腸壁が黒ずんでしまい、更に薬を多く使わないと出せない状況になります。その様な下剤依存を改善させる意味で、週に1回程度エネマをする、と言う様な使い方はアリだと思います。
ファスティングにせよエネマにせよ、肝臓や腎臓で行われるデトックス機能を高める効果が医学的に確認されている訳ではありませんので、「デトックス目的」に行うことはやめましょう。
また、体脂肪が減ることで、蓄積した脂溶性の物質が中性脂肪の代謝とともに放出され、胆汁に排泄されると言うことは起こりえますので、適正体重へのダイエットが、脂溶性物質のデトックスに有効な可能性は否定できません。
また「レモンなどの柑橘やキュウリなどを漬けた水」をデトックスウォーターと呼ぶ場合もありますが、コレらの水に解毒作用がある訳ではありません。カリウムが多少溶け込んでいるので、過剰なナトリウムを排出しやすくなる可能性はありますし、口当たりよく水を飲めるので、腸管の動きも良くなり、腎機能もフルに発揮しやすくなると言う効果は否定できません。
過度に期待し過ぎずに活用するのは良いと思います。
【活性酸素対策はある程度は有効】
生きている生物の体内における化学反応を代謝と呼びますが、代謝の過程で酸化が起こりますし、炎症反応が起きている場所では活性酸素が大量発生しています。
一定量であれば、自然に備わっている抗酸化作用が働くので問題ないのですが、その能力を超えた酸化が起きてしまうと、疲労や加齢性変化を超えた病的な老化が起きてしまいます。
その為に、抗酸化作用のある成分が多く含まれる良質な食材を意識して食べたり、抗酸化作用のある成分のサプリメントを習慣的に使うことが有用だと言う仮説も存在します。
最近ですと、ビタミンC大量投与や水素ガス吸入などが盛んに宣伝されていますが、本当にそれらが有用なのかは、科学的に検証され再現性をもって確認されてはいませんので、一定の効果以上は期待し過ぎない方が良いでしょう。
特定の癌について特定の抗酸化物質を大量に摂り過ぎると、むしろ発生率が増えると言うことも知られていますので、不自然な形で極端な量の抗酸化物質を摂取する、と言うことは注意した方が良さそうです。
【肝腎のケアは重要です】
以上の様に、広く宣伝されている「デトックスサプリメント」や「デトックス療法」と言う物の多くは、直接解毒作用とは関係が無いことを理解しておきましょう。
そして「デトックス」を意識するのであれば、肝臓や腎臓に負担をかけ過ぎない様にすることも大切です。余計なサプリメントは肝臓に負担をかけますし、無理な水分制限も腎臓に負担をかけます。
肝臓と腎臓が健康であれば、多少の毒物は自然に無毒化して排出されます。
毒物に限らず、口にした物に含まれる栄養分や雑多な物質は全て肝臓で処理されますので、サプリメントや薬物を体に入れれば入れるほど、肝臓の負担になると考えた方が良いです。
ですから、食事として食べる物を自分の体質や体調に合わせて選ぶことが出来ればベストです。
昔の人は「医食同源」や「食を薬となし、薬を食とせよ」と言う言葉を遺していますが、本当に慧眼と思います。
【水分補給のホントのところ】
体質や食事にもよりますが、毎日1.5-2Lの水は飲む様にすると良いです。コーヒーや緑茶などはカフェインを含むので、水分として数えてはいけないと言う説もありますが、カフェインに反応しやすいかどうかで大きく異なります。
コーヒーや緑茶を飲んだら夜寝られなくなるとか、トイレに頻回に行かないと我慢できなくなる、という方は、水分量にカウントしない方が良いでしょう。
逆にそれらを飲んでもあまり体調に変わりないと言う様な飲み慣れている方であれば、水分摂取量としてカウントしても良いと思います。心配なら飲んだ半分量程度でカウントすれば良いですね。
お酒については基本的にはカウントしないことになっていますが、純粋に高濃度の蒸留エタノールを飲むと言うことは少ないですよね。
日本酒やビール、ワインなどはストレートで飲むことが多いですが、ウィスキーや焼酎も、何倍もの水、炭酸水や緑茶で割ったりして飲まれることが多いので、一概に水分補給では無いとも言えません。
とは言えアルコールの利尿効果が強いこともまた事実なので、和らぎ水(チェイサー)を用意しておき、交互に飲む様にすると良いですね。
以前の投稿でご紹介した様に、血液検査や症状で脱水所見が無い程度の水分制限でも、様々な不調の原因となり得る可能性がありますので、意識してこまめな水分補給をする様にしましょう。
注意点としては、氷菓子や冷たい飲み物ばかりを摂り過ぎると、逆に胃腸の血流を悪くするだけでなく、パテやすくなってしまいます。たまに冷たい物を楽しむのは良いとして、水分補給は常温や温かい物がオススメです。
また、最近では経口補水液の認知度もかなりら高まっており、脱水症予防として飲まれている方も見かけますが、「経口補水液は脱水症患者の初期対応用」として開発された物です。
脱水では無い人が飲むと、しょっぱかったり苦かったりして飲みにくいです。
不思議なことに本格的な脱水症になった人は、美味しく飲めますので、経口補水液を美味しく感じるかどうかで、脱水症かどうか判断するのも、簡易的な判断方法としては良いと思います。
代わりにスポーツドリンクでも良いのですが、呑みやすさを優先して糖が大量に含まれているので、血糖値を乱高下させインスリン分泌を促進し、全身の血管内膜を傷つけてしまう、と言うリスクがありますので、ご注意下さい。