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本の紹介・読書の記録

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2023年9月の記事一覧

「意外と知らないお酒の科学」を学ぶ

ウイスキーについてはかなり勉強したが,お酒全般についてはよく知らない.そこで,たまたま検索に引っかかった本書「意外と知らないお酒の科学」を読んでみた. 国内外の様々なお酒の種類や作り方が紹介されているのはもちろん,様々な酒器の説明などもあって,なかなか珍しい本だと思う. なお,この本は癖が強い.かなり強い. 例えば,純米酒と醸造酒の違い.これらの違いについては何となく知っている人もいるだろう.醸造酒は純粋に米と麹のみから作られるのではなく,醸造アルコール(米を発酵させて

「グッド・ウイスキー・タイム」で楽しく学ぶ

元宝塚娘役トップで,自分のバーを長らく経営している新谷さんによるウイスキーの解説本.初心者向けで,とてもわかりやすく書かれている.ウイスキーを飲み始めた人やウイスキーがちょっと気になる人が気軽に読めると思う.マンガやイラストも多いので. これからウイスキーを学ぼうとする人の1冊目として良い本だと思う. ウイスキーの好みを表現するために,あるいはウイスキーの香りと味の特徴を区別するために,本書では一貫して,「フルーティーテイスト」,「ミディアムテイスト」,「スモーキーテイス

「ビジネス教養としてのウイスキー」を学ぶ

マッカラン60年の落札額は驚異的で別世界の話だが,そのマッカランがスポンサーとなり,オックスフォードやケンブリッジを含む英国の大学で学生対象のテイスティングセミナーを開催しているといった話も興味深い. どこか弊学でセミナーしませんか? 投資してのウイスキーの話ばかりではなく,庶民の酒だったウイスキーが,オークションで競売されるようになるとは誰も思わなかったウイスキーが,ここまで世界的に認知されるようになったのはどうしてなのかという歴史的経緯も解説されている. ウイスキー

「しろがねの葉」の意味を知る

戦国末期から徳川の治世に移った時代,石見銀山に生きた1人の女性の生き様を描く.読み応えがあった. 第168回直木賞受賞作ということで,まったく内容を知らないまま,「しろがねの葉」を読んだ.読み始めたのは入院している間で,退院後に読み終わった. 新潮社では以下のように紹介されている. 読み初めてすぐに感じたのは,漢字が多いということ,そして,その読みが難しいということ.読めない漢字がたくさんあった.それでも,物語に引き込まれた. © 2023 Manabu KANO.

風評加害を行う「正しさ」の商人は誰か?

キーワードは「風評加害」.世間では「風評被害」が問題視されることはあっても,その風評の発端となった加害者や風評を広めた加害者が注目されることはほとんどない.自分勝手な正義を振りかざし,科学も事実も無視して,被災地や被害者のことなど眼中にもなく,ただただ自分の立場を主張するために嘘を吐く人達.そのような風評加害者を明らかにすると共に,風評加害に積極的に対応しないことの問題点を指摘しているのが本書「「正しさ」の商人」だ. 東電原発事故そのもののみならず,それに端を発する情報災害