都会における有事への備え
NPO法人口から食べる幸せを守る会 第12回全国大会(熊本)は刺激的なプログラムで溢れていた。本当にあっという間の1日で、学びの多いプログラムであった。
その中で、熊本のシンポジウムということで「有事への備え」というシンポジウムも開催された。このシンポジウムの内容を踏まえつつ、自分なりに考えた都会における有事への備えについて考えてみたい。
シンポジウムは、東北震災で福島第一原発にも近い高野病院の社本博医師から。とてもベーシックな話ではあったが、日頃準備できていないものは有事にもできない。しかも自分がどこで被災するかもわからない。だからこそ、自分自身でできることはしっかり準備しておくことが重要という話だった。
山本千恵子さん(看護師)は熊本地震で自分自身も被災してしまい、うまく動けない中、やはり熊本県民が動かなければならないと立ち上がった心の変化もお話いただいた。被災したときは被災者(被害者)であるが、食支援に関して私たちは支援者にもならなければならない。そんなことすら今日始めて感じた。
権頭重賢さん(ケアマネ)は令和2年の熊本南部豪雨災害を経験された。とにかく食料がない。あっても期限切れだったりして、被災後すぐに食料がなくなった経験から、定期的に期限切れ近い災害食の試食会などして、災害食に慣れておくことの重要性を強調された。また、準備にあたっては、高齢者が食べることも想定しなければならないとのことだった。
榎本淳子さん(看護師)は、物を準備することも重要だが、その物流も重要であることを示してくれた。どこがどのような災害に被災するかわからない中、日頃から具体的なルートを考えることは難しくても、物資の流通をいち早く考えるというのは的確なアドバイスを頂いた。
建山幸さん(看護師)から時間軸で支援するものが変わっていくことを教えていただいた。病院も、職員も被災してしまう中、どのような支援が今必要なのかが変化する。直後、1ヶ月後、6ヶ月後、大きな震災ならそれ以上。支援の時間軸についてとても有用な話だった。
このような学びの中で、私の地元、東京都新宿区について考えてみた。地理的に水害は考えにくい。小さな神田川が流れているが、水量コントロールするシステムもできているし、川沿いの面積も小さい。となるといわゆる首都直下型地震。
最初に思ったことは、熊本などで聞く「避難所」が成立するのか?という問題だ。家屋倒壊などの被害があっても、収容できる場所はどこなのか?学校や公民館は人口に対して少なすぎる。興味があり調べてみたが、熊本県の人口密度が 241 人/㎢、新宿区のそれは19,567人/㎢と80倍近い。避難所の人口密度が80倍!それは無理。そう考えると決められた場所だけでなくオフィスビルやコンサートホール、国立競技場、映画館のようなところが場所を貸す形になるかもしれない。
そこに新宿ならではの特殊事情もある。外国人が多いことだ。言葉がわからない人もいる(子供だけ日本語ができるとか)。もちろん文化、風習が異なる。ハラルフードなど食にも関係する。
支援物資の流通はさらに深刻だ。決められた避難所以外が多く、さらにライフラインのない中の自宅待機者が多い。状況の把握をしようにも、全体を把握するのは困難を伴うだろう。
そう考えると、都心が被災したときは本当に大きな被害となり、政治、経済も考えると、日本の危機になる事態になるだろう。しかし、暗い話ばかり言ってられない。できることはなんだろうか。
結局社本先生に立ち戻り、各家庭でどれだけ準備できるかということだと思う。2,3日で復旧はしない想定で、自分の家族だけは暮らせる備えをしておくことだけだろう。それでも自宅が被災すれば準備したものが使えないかもしれない。だから準備しないではなく、それでも準備しておく。そういうことだと思った。
今回のシンポジウムは本当に学びになった。このような話が熊本で聴けて感謝だ。