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山形 真室川町 「工房ストロー」(2)三次郎茄子と八角オクラ
9月の終わりに訪ねた山形・真室川の農家「工房ストロー」の髙橋伸一さん。勘次郎きゅうりを見た後は、広い畑を案内して頂きながら、旬の野菜たちに会いに行きました。
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ちょうど収穫どきを迎えていた「三次郎茄子」は、身のぎゅっと詰まった丸いフォルムのなす。これも真室川に伝わる伝承野菜です。
火を通すと身がとろけるかと思えばそうではなく、しっかりした歯応えが残る果肉。みっしりした感触が新鮮でした。
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三次郎茄子と大葉 梅味噌
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そんなしっかりした食感を楽しめるよう、茄子のタルトのようにしたスコーン。大葉を刻んで混ぜ入れたスコーン生地をタルト生地のように土台にして、梅味噌を塗り、その上にオリーブオイルでグリルした茄子をどんと載せて焼き上げました。
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畑の中でもとりわけ目を引いたピーマン。平たいコマのようなものから細長いものまで形もさまざまで、緑、黄色、赤に紫まで色とりどり。こどもピーマンやミニパプリカなどなど、いろんな名前があることを知りました。
伸一さんが次々にもいで渡してくれるので、私もつられてどんどん口の中へ。生のままでおいしく、フルーツのように甘い。ピーマン特有のものだと思っていた苦味がない。
火を通したらどんな味になるのか想像が膨らみました。
ピーマン山椒チーズ
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ローストしたピーマンの、鼻の高い位置に感じる香り。その高さが山椒のピリッとした香気と近い気がして合わせました。独特のコクはまろやかなチーズに合わせるとおいしいかなと思い、たっぷりのチーズを合わせて。
ピーマンチーズハニーマスタード
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同様に、はちみつのぷわんとした香りもピーマンの香りと鼻の奥で感じる位置が近い気がして組み合わせることに。山椒と同様に少しアクセントを加えたかったので、粒マスタードで辛味を足しました。
そして印象的だったのがオクラ。上向きに実がなることも、そしてこんなにかわいらしい花が咲くことも知りませんでした。
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これは八角オクラ。名前の通り八角形のずんぐりしたフォルムが愛らしいオクラで、真室川の伝承野菜。生でかじると、さわやかな甘み。これも今まで感じていた舌の上に残る雑味が一切ないのが印象的でした。生でいくらでも食べられるような、軽やかなオクラです。
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収穫しそこねた八角オクラが畑に残されていました。これはあえてこのままにしておき、さらに黒く熟れて弾けた種が次のきゅうりにつながっていくそう。
八角オクラ ココナッツとひき肉
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生のオクラの軽やかな甘みに合わせたいと、思いついたのはレモンピールかココナッツ。ただオクラは単体だと、いい意味で存在感が希薄になりがち。生地に混ぜ込んで主役にするのはどうも難しく、今回は肉を入れることに。
ひき肉とココナッツを塩で焼き付けたそぼろ状のものを、たっぷり刻んだ八角オクラの生地と合わせました。
(余談ですがこのひき肉ココナッツも絶品。私はこれを熱々のご飯にのせて、納豆をかけて食べるのも好きです)
オクラ、次回はよりシンプルなマフィンにしたいと思います。
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これから定期的に届けてもらうことにした工房ストローさんの野菜。
マフィンを作り始めて5年。顔を知り話ができる作り手さんの野菜を素材として焼くことの共創感はとても楽しく、新しいやりがいを見つけたような気がしました。次回は何が届くだろうと、予想もできない野菜と向き合うと、マフィンはますます飽きないものになりそうです。
真室川は日本でも有数の豪雪地帯。2メートルを超える雪が積もり、1,2月にはやはり採れる作物はほぼなくなり、畑は一度お休みを迎えるそう。
逆に今は野菜が次々に実る時期で、その成長は待ったなし。この広さの畑で、それをたった一人で収穫し出荷する伸一さんの努力あってこそ届く野菜を、大切に使いながらご紹介していきたいと思います。
写真:志鎌康平さん(マフィンスコーン以外)