見出し画像

渚にてを観る

今はもう描かれない未来のお話。
こういう終末系の話は腐るほどあるので今さら取り立てることもない気がするが、存外丁寧なストーリーテリングとところどころに散りばめられたユーモアがいい塩梅。
終末系のいいところは「自分がこの状況に置かれたらどうするかな?」と想像しやすいことで、ついつい没入してしまうことにある。この映画もそれぞれの選択に共感できる部分があって中々に切なくなるのであった。
以外とディテールが凝っているところが気に入っている。特に核戦争が起きたら石油が枯渇し、馬に乗り始めるという発想は俺の中になかったため、けっこう感心した。確かにそうなるだろう。

しかしながら多くの映画がそうであるように、この映画もまた時代の産物でしかないことを明らかにしてしまっている。小説とは違い、どんな映画であれどその宿命からは逃れられないのである。
要は冷戦期にしか通用しない描写が多いのだ。
その最たるものがラストの警鐘だ。今の時代にあれを見て迫真性を感じる人はいないと思う。結局な人類は賢かったということで、なんやかんや今に至るまで生きながらえている。この時代に絶滅という言葉に真実味を覚える人は多分ヤバい人だ。
映画というのはたかだか100年程度しか歴史がないため、それがどんな作品であれど普遍性というものを獲得しえないということをこの映画を通して再認識したのであった。

ただそうしたものをノスタルジーとして消費することは好きである。あの誰もいない世界で一人うろつく水兵の姿は少し興奮した。夜中に誰もいない街を散策する楽しさを1000倍にしたような非日常である。
まるでFalloutだ。
そうしたさみしくて誰一人いない世界で生活する喜びだけを抽出し、純化させたのがFalloutなのだろう。やはりあれは良いゲームである。
そういやFallout4では潜水艦で彷徨う艦長が出てきた。あれは渚にてを参考にしたのだろうか。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集