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『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』を観る

『クレイヴン・ザ・ハンター』の時も思ったが、やはり映画は再撮影しまくると単調になりがちである。
『クレイヴン』の時ほど平坦な印象は受けなかったが、それでも画が狭くなる上に話の展開にもあまり驚きを感じられなかった(とはいえこれはマーケティングが下手すぎるのも一因ではないかと思う。レッドハルクの存在を先出ししたのは悪手ではなかろうか)。何が凡庸な印象を醸成しているかというと、会話シーンに芸がない他、そもそも会話シーンが多いために苦痛というほどではないものの、感情が“凪”の状態で固定されたままになってしまうのである。
ほかにも日米間の緊張が高まる流れがあまりアツくない。これが例えば調子がいい時の庵野秀明やならインド洋に向かう艦隊をワイドで撮って「第7艦隊」などのテロップ付きで見せ、粛々と事態が進行していく様子を楽しく盛り上げてくれるはずである。
とはいえインターナショナルポリティカルスリラーとしての伸び代は十分に感じた。「アダマンチウムの利権を巡ってのゴタゴタ」というネタ自体はけっこう面白く、ヒーローが政治に関与するワクワク感は近年のMCUでは味わえなかったので、この路線で何本も見たい。
日本がやたらと強気で粋がってるのが変な感じである。アメリカは外敵に襲撃されまくっているので国力が大幅に低下しているのはわかるが、それにしてもあそこまでオラついているのが面白い。しかし日本ではなく中国にしなかったのは「それをやってしまうとシャレにならないからだろうか」と思ったり。
少なくともスティーブ・ロジャースなどというコンパウンドVを打っただけでアメリカの代表面をするBANされてないだけのいけ好かないチーター野郎とは違い、自分の職責と立場に苦悩しながらも等身大の人間として「アメリカの理念」を体現しようと頑張っているサム・ウィルソンの好感度は大いに上がった。
これもまた『クレイヴン』と同じなのだが、役者の顔の重要性を再認識できる映画でもあった。ハリソン・フォード等のスター俳優の存在感で保ってるシーンが多い。元ブラックウィドウの人やぽっと出のジャンカルロ・エスポジートも存在感を発揮していたので、この先もあれやこれやの因縁を見せてくれるとうれしい。

作中と同じく様々なゴタゴタを抱えていたこの映画だが、それでもこの先もサム・ウィルソンの活躍をもっと見たいと思った。


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