【宝探しとは】 プレミアム音楽朗読劇 VOICARION 「スプーンの盾」
いちばんいけないのは、お腹が空いていることと、独りでいること
本作の主人公の1人、天才料理人カレームの思いは、上記「サマーウォーズ」の栄おばあちゃんの名言に引き継がれている。
「お腹が空いているから、人の心は荒む。お腹が満たされている人は、みんな笑顔になる」
フランス革命の最中を生き抜いたカレームは、そんな思いから食事を作る。それがナポレオン配下の外務大臣タレーランの目に留まり、カレームは「キュイジーヌ」という「軍隊」でフランスの食事による「外交戦争」を担っていくこととなる。
一方のナポレオンは、文字通りの軍隊を率いて戦い抜き、とうとう自らに志尊の冠を戴くようになる。
戦いしか知らないナポレオンと、料理しか知らないカレームの間に一見共通項は見当たらない。でもどちらも「硬いパンの上に構築」されている人生であると気づいた時、彼らの間には友情が芽吹いていく。
戴冠式前夜、これが最後になるだろう、と低く告げながら、カレームの厨房につまみ食いにいくナポレオン。
皇帝となったナポレオンを待つのは、急転直下の人生だ。
セントヘレナ島へと流されたナポレオンが最後に思い出したのは、この時、カレームが作ってくれた、「あらゆる素材が詰め込まれたコンソメスープ」だったり、未完成の工芸菓子「ピエスモンテ」の上でダンスを踊った瞬間だったりするのかも知れない。
カレームと話している時のナポレオンの表情は、とても柔らかだった。
世界の殆どのものは食べられない。だけど、神さまは、所々に美味しい宝物を隠してくれている。その宝物を探すために、僕は生まれてきたんだ。
確かに世界の殆どのものは、食べられない。でもその中にある宝物を見つけるのが料理人、という心の向きが、妙に響いた。
世界の殆どの事柄は素通りされてしまう。だけれど、この世界には、たくさんの輝きが隠れている。そういった輝きを、まるで宝探しのように見つけた時、その人の世界には光が溢れ出す。
それは、誰かの何気ない一言であったりもする。
ナポレオン以外の登場人物は、全員架空または脚色が多い人物かと思っていたら、タレーランもカレームも実在の人物だった。
これだから歴史は面白い。
終わりなき世界の晩餐会に、我々は招かれた客なのだ
今、欧州では、お腹を空かせている人、終わらない不安を抱えたまま数ヶ月を過ごしている人が数多くいる。
爆弾や戦車ではなく、皆がスプーンを手にして、温かいお食事と他愛ない語らいの時を迎える日が1日でも早く来ることを願ってやまない。
VOICARION凄い。
確かに朗読劇なのだけれど、そうとは思えないほど凄まじかった。平田タレーランに終始ゾゾゾゾゾしっぱなしだった。
最後の挨拶で知ったのだけれど、とっても有名な人だった。(ごめん)
舞台奥の一段上がったところに、下手向きに座って演奏をしているオーケストラの絵面が、まるでフェルメールの絵画のようだった。
極上。
明日も良い日に。