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【家族とは】 劇団チョコレートケーキ 『つきかげ』
劇団チョコレートケーキの前作『白き山』の続きの物語。
斎藤茂吉が東京に帰ってきてから過ごした家族との数ヶ月が淡々と紡がれていく。前回とは違い、「斎藤家」の一室オンリーのワンシチュエーション構成だ。
何か大きな事件が起きるわけではない。淡々と、老いていく両親と子供たちとの日常が紡がれていくだけ。
まさに「生まれてから死ぬまでをどう生きるか」が切り取られている。「難しく考えるから、人生は難しくなるのです。生まれてから死ぬまでをどう生きるか」とは、輝子さんの言葉だけれど、本当にそう。でも、人はなかなかシンプルには生きることができないのだ。いや、シンプルに生きたくないだけなのかな。
自分は世界の中心だって決めたの
奔放に生きながらも、家族への思いやりや献身も併せ持つ母輝子の強さに憧れる。「優しくしよう」としているわけではなく、どうやらこの人には困りごとがあるから、手を差し伸べよう。「助けてあげよう」「差し伸べてあげよう」ではないのだ。そういうしなやかで健やかな優しさを持つ人の輝きは、周りを勇気づける。お手本にしたいと思わせる。
いつしかも 日がしづみゆき うつせみの われもおのづから きはまるらしも
句集「つきかげ」同様、この物語もこの詩で終わりの始まりを迎える。幕引き自体も、本筋同様、何か取り立ててドラマチックなことが起こるわけではない。淡々と茂吉の終のすみかとなる新宿のお家にお引越しをして、終わり。
北杜夫(ドクトルまんぼう)の誕生すらも、さらりと触れるのみ。人間の営みの中の一コマ程度の扱いです。それがとても、我々の人生との地続き感を感じさせる。
こういう他愛のない家族の時間が、かけがえのない時間だったのだと後で気づくのだろう。お正月に、どんな顔をして家族に会いに行こうかな。
句集も、改めて読んでみなければなるまいな。
明日も良い日に。
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