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差別のない世界へ――小手鞠るいさん最新作『空と星と風の歌』

今回ご紹介するのは、小手鞠るいさんの最新作『空と星と風の歌』です。

『空と星と風の歌』(小手鞠るい・作 堀川理万子・絵)

「わからないだろうなあ、
日本社会で、自分が日本人であるということを、
砂つぶほども疑ってみたことのないだろうあなたには、
到底、わからないでしょう。
ま、わからなくて、当たり前だけれど。」


中学1年生の空奈(そらな)が、在日朝鮮人二世の金洪才(キムホンジェ)さんからかけられた言葉。
空奈の心は大きく揺さぶられます。



空奈の夏休みの宿題のテーマは、「家族の仕事」でした。
母とふたり暮らしの空奈は、フリーライターである母の仕事を体験することに。
インタビューに同行し、そこで金さんと出会ったのです。

「アボジ」とは朝鮮語でお父さん、「オモニ」はお母さんを意味する言葉だということ。
日本が朝鮮を侵略し、植民地として支配していたこと。
「朝鮮人」であるために受ける、醜く、根強い差別のこと。

金さんが語るのは、空奈が知らなかったことばかり。
学校で教えてもらっていないこともあるかもしれません。
でもそれは「知らなかった」言い訳にはならないと、空奈は心から思います。
みずから知ろうとしなくてはいけなかったのだと。

金さんとの出会いが、空奈を変えていきます。
自分を知るために、父を知り、母を知り、その上でほかでもない自分自身を生きていく――未来を向いて一歩を踏み出したのです。


空奈のエピソードのあとには、母が韓国人であることを理由にいじめられた少女、美星(みせい)、日本を離れアメリカで「自由」を感じた、車いすの少年風太の物語がつづきます。

差別のない真に自由な社会を求める。
3つの短編から紡がれるのは、力強いメッセージです。

本作の絵を手がけたのは、堀川理万子さん。
2脚のいすは、向かいあう人と人、そこから生まれる対話を予感させます。

167ページ、小学校高学年から。
(小手鞠るい・作 堀川理万子・絵)

童心社が発行する「母のひろば」714号(2023年11月)に、本作の作者・小手鞠るいさんが寄稿くださいました。
こちらもぜひご覧ください。

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