![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/60809331/rectangle_large_type_2_ae1417fa73377f344a3acb6d21744f38.jpg?width=1200)
炸裂!ヘルパー寸勁!(動画解説付き)
時効だと思うので告白します!
介護福祉士である私はこれまでの介護業務の中で一度だけ人を…
殴りました!m(__)m
それも武術でいう高等技法を用いて…
もちろん、単なる暴力なら虐待ですから、その理由を説明します。
それは数年前に働いていた障がい者のグループホームでの出来事でした。
このグループホームでは成人した発達障がいのある男性5名が共同で生活されていました。
ちなみに私が介護士(ヘルパー)として障がい者のグループホームで働いていた理由は、私の息子も自閉症で知的障がいがあり、親亡き後の息子の生活の場として可能性があるグループホームの現状を知りたいという考えからでした。
さて、その日は ベテランの女性の調理ヘルパーが夕食に生姜焼きを作られて、食卓に5名の利用者さんが集まり、夕食の食事介助がはじまりました。
そのときグループホームには私をいれて3名の支援者がいました。
調理ヘルパーの女性はキッチンで片付けをしており、スタッフは2階の事務室で書類整理をしていました。
そして、私は1階の食卓で利用者さん全員の食事介助を1人で行っていました。
つまり、一人で複数を見ている状態でしたが、これはいつもの光景。
日本の介護施設は慢性的な人材不足でもありますが、仮に手厚い支援を考えて介護士を増員すると国から頂ける財源が限られているので、今度は人件費で赤字になって事業所が運営できないという事情もあります。
ともかく、そのような一対多数の環境の中、利用者の皆さんも一筋縄ではいかないキャラクター揃いで、それぞれが独自の行動を起こされます。
例えば、ちょっとでも目を離すと、他の利用者さんの おかずを食べてしまったり、自身に注目を集めようとしてワザと味噌汁をこぼしてみたり…。
他にも書ききれない(いや、書けないような)様々な行動を仕掛けてくるのですが 、その状態が想像ができない方々のために喩えとしてお伝えするなら、五つ子の世話に奮闘する大家族番組みたいな感じ…とでもいいましょうか…。
もちろん、実際は五つ子は幼児ではなく、体も大きく体力もある成人男性ですけどね。(・_・;)
それでも数年、働いていると馴れてくるもので利用者の皆さんとコミュニケーションをとりながらも、先手をうって動くことで様々な危機回避しながら食事や入浴を促すことができるようになってきます。
その日も問題なく、一番手のかかる40代の利用者さんの食事が無事に終了。 その方の食後の服薬介助のために、食卓の横にある金庫型の薬箱へ行き、薬を取り出していました。 すると突然…
「ヴッ!ヴグッ!ヴヴッ!ヴヴヴ~ッ!」
と後方から呻き声が!(◎_◎;)
「○○さん(利用者さんのお名前)!!どうしたのぉ~!!」
と、調理の女性ヘルパーがキッチンから大声を上げました。
何事か?と思い、振り返ると食事が終わった40代の利用者さんとは別の30代の利用者さんが顔を真っ赤にしながら唸っていました。(゚Д゚;)
調理の女性ヘルパーはキッチンから利用者さんに駆け寄るでもなく、ただ固まったままオロオロしていました。
ビックリして駆け寄り、様子を見ると何かを喉に詰めたようで、息苦しそうにされていました。
すぐさま顔を横に向けて口に詰まっている食べ物を取り出そうと試みましたが、利用者さんが凄い力で抵抗し、顔を横にすることができず、ただ生姜焼きの肉を口の中に詰め込んでいることだけがわかりました。
このときは、口に手を入れませんでしたが、実際にそうした対応をすると歯で指を噛まれてしまうことがあるので気をつけないといけないことを後で知りました。
「ダダダダダダ~!!」
と2階で事務仕事していたスタッフさんが階段を駆け下りてきて
「てんかん(発作)ですか!」と言われました。
「いや、何か食べ物を詰まらせた感じです!」と私が応えると、スタッフさんは直ぐに利用者さんを背後から掴んでイスから持ち上げるようにして立たせました。
そして、自分の片足を相手の足に絡ませつつ、両手で利用者さんの腹部を抑えて、上半身を使って利用者さんが前屈みになるようにして詰まっている物を吐き出さそうとしていました。
専門用語でいえば、誤嚥の対応法で有名な「ハイムリッヒ法(腹部突き上げ法)」です。
しかし、利用者さんは逆に身体をそらせて、顔を上にあげて抵抗するために上手く行きません。
通常なら喉に物が詰まると吐き出そうと考えますが、利用者さんは逆に飲み込んでしまおうとしていたのです。
私も協力して二人掛かりで上体を押さえつけていましたが、その力は強く、まったく曲がりませんでした。
それどころか体を左右に揺するのでスタッフさんがお腹を圧迫する位置が若干ズレてしまっており、ハイムリッヒ法が上手くいかず。
結局、利用者さんが暴れる動きを抑えるので精一杯の状態になっていました。
そこでスタッフさんは時折、肩甲骨の間を叩いたりもしていました。
これも専門用語で言えば「背部叩法」ですが、利用者さんは一向に吐き出す気配がありません。
「ヒューッ!ヒューッ!」
…と息を隙間から漏らしながら、利用者さんは目から涙を流し、どんどん顔色が変わっていきました。 (゚Д゚;)
「これはマズイ!このままでは窒息死する!」
と思い、スタッフさんが利用者さんの背後で抱きついて抑えている状態のまま、私は片手で利用者さんの体を抑えつつ、反対の拳を鳩尾に当てて側面から正面に回り込み、半身をズラした体制から、ほとんど無意識に近い状態で「寸勁(すんけい)」を打ち込みました。
「寸勁」というのは主に中国武術で用いられる「短い距離で打つ打撃法」のことです。
映画俳優で武道家でもあったブルース・リーがワンインチパンチと称したデモンストレーションを空手大会や映画の中で行ったり、様々な格闘技漫画の中で必殺技として登場したことで有名になったテクニック。
その用法や技の名称は様々ですが、このとき私がやった技のメカニズムは、身体を脱力させた状態からイメージによる流れ(感覚)を作り、足首→膝→腰→背中→肩→肘→拳の順番にその力を連動させることで発生する慣性力に重心を移動(体重の重み)を加えていくことで、密着した状態からも威力を出すことができる用法でした。
もっとわかりやすく例えるなら、パントマイムで行う波の動きを足から手までの間で行い、その動きに体重を乗せるようにして拳で体当たりをしたような感じです。
つまり、寸勁はそうした身体操作を連動させて一瞬で行うという高等技法なのです。
何故、私がそんな技が使えるのか?という理由は、何だかんだと武術や格闘技を30年やっている武道オタクだからですが、ここでは話が脱線するので経歴に関して興味のある方はプロフィールをご参照ください。
とにかく、拳を身体に密着させた状態で力を集めて突き上げました。
「陸奥圓明流奥義!無空波~!!(※1)」
…なんて必殺技を繰り出すようなセリフを言ってるゆとりは全くなく、無我夢中で無意識に寸勁を放っていました。
(※1:喩えがわからない方は漫画「修羅の門」をご参照ください)
すると…
「ごぶっ!ボト…ボト…」
利用者さんの口から、生姜焼きが固まりとして出てきて…
「すぅ~っ… はぁあああああぁ~~~っ!」
と利用者さんは呼吸をはじめ、顔色が見る見るうちに健康な肌色に戻っていきました。 その後、水を飲まれる姿を見て私もスタッフも調理ヘルパーさんも
「はぁ~~~~」
…と安堵の溜息を吐きました。
「いや~ホンマにビビったわ~」
とスタッフさんが言っている傍で、ふと利用者さんをみると寸勁のダメージは全くなく、ケロッとした表情で先程、苦しみながら吐き出た生姜焼きの肉を床から拾って食べようとしていました。
「落ちたものを拾って食べたらダメ~ッ!!」(゚Д゚)ノ
その様子をみて調理ヘルパーさんが我に返り、大声で阻止されました。(~_~;)
しかしながら、まさか介護現場で寸勁を使う日がくるとは思いもよらないことでした。(゚Д゚;)
ただ、このとき私が寸勁を使ったことは傍にいた調理ヘルパーさんもスタッフさんも誰も気づいておらず、このことを知っているのは寸勁を使った私と、寸勁を受けて命拾いした利用者さんの二人だけでした。
いや、もしかしたら利用者さんも気づいてなかったかもしれません。
寸勁は通常のボディブローとは違い、密着させて打つため外傷ができることはなく、内部に力を浸透させる技であり、ピンポイントで腹部を突き上げていたので、ある意味、正面から形を変えたハイムリッヒ法を適切に行ったに過ぎないともいえます。
結果として利用者さんは、その後、スッキリした表情で笑っており、翌朝も普段通り起床して食事もとられ、何事もなく過ごされていました。
誤嚥された際は寿命が縮む思いをしましたが、利用者さんが助かって本当によかったです。
しかしながら、このときの対応で学んだことは多くありました。
まぁ、ハッキリ言ってしまえば、色々と大失敗でした。(-_-;)
まず根本的な問題として服薬介助に移行している際に他の利用者から目を離してしまったこと。
そのため、その後は一人で介助を行わず、服薬に関しては調理のヘルパーさんにも手伝ってもらえるように役割分担することを反省しました。
また吸い込んで食べる利用者さんの食事は一口サイズぐらいの刻み食にすること。(これは調理ヘルパーさんの課題として)
あと、誤嚥の際は一刻を争うので、万が一に備えて人がいるときは指示を出して救急の電話をさせておくこと。
そして、誤嚥の対応を知識として再認識しておく必要性を感じました。
介護現場は突発的なことへの対応力が試される場所だということを改めて痛感させられた出来事でした。
日々修行!m(__)m
【どうしても寸勁がイメージできない方はココをクリックして動画解説をご覧ください!】