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算命学余話 #U48玄「還暦と時代の変遷」/バックナンバー

 前回の余話では格法の1つである墓殺格を紹介しました。墓殺格の条件は既に説明しましたが、種類については日干が十種類つまり十干の数だけあり、該当条件となる干支のセットは日干に対して2種類なので、都合20種類の組合せがあるということになります。干支のセットは六十花甲子の呼び名の通り全部で60種ですから、墓殺格に該当する確率は月干・年干でそれぞれ60分の2。この確率が高いと見るか低いと見るかは意見が分かれるところですが、月干・年干が共に墓殺格に該当するともなれば確率は相当下がり、この場合の該当者は墓殺格の意味合いを数倍に加算して考える必要があります。逆にいえば、墓殺格に月干・年干のどちらかしか該当していない人は、共に該当する人に比べればまだまだ逃げる余地が残されていると見做すことができるのです。
 墓殺格に限らず、局法や格法、守護神、忌神、天中殺等々、何かと物々しい名称が並ぶ算命学ではありますが、その条件に該当する宿命だからといって現象の緩和や解消の方法がないわけではなく、むしろ鑑定者はその緩和・解消策を探すのが仕事だと言ってもいいくらいです。くどいようですが、宿命は陰占陽占共に自分自身だけで成り立つ風景ではなく、周囲の人間や環境との関係性を表すものであり、現実の人間関係ひとつ変えるだけでも宿命の星々の輝きは変化してくるのです。

 上述の墓殺格を例に挙げるならば、仮に年干支が墓殺格に該当する宿命だった場合、年干は父親、年支は母親と捉え、この両親が健在のうちは墓殺格にがっちりはまるので当人は家を出た方が発運すると、一般論としては判断します。しかし順番からして親は子供より早く他界するものです。両親共に他界した後ともなれば、年干支の影響力は弱まりますから、この人は墓殺格としてはかなり軽微な該当者へと変わっていきます。
 もちろん、常識的に考えれば両親が老衰して死去するまでにはそれなりの年月がかかり、両親が若くて健在ということは同時に子供がまだ若年ということですし、若年ということは人体図の初年期を通過中ということですし、初年期ということはつまり年干支の影響をもろに受けているということです。別に墓殺格に該当していなくとも、平均的な家庭に生まれたなら人生の初年期は誰でも両親の影響下にすごすものですし、親との関係性次第で仲が良かったり反発したりし、その結果成人後は親元に残ったり巣立ったりと道が分かれるのです。こうした意味で、格法に該当したからといって一喜一憂する必要はないし、家と縁がないからといって特別な不幸が約束されているわけではないのです。要は現状の人間関係や環境とどう上手く折り合っているか、後天運で巡ってくる好機の到来を活かせたか、つまり生き方・考え方がその時々の風向き、時代の趨勢に合っているかどうかが命運を分けるのです。

 算命学余話第48回は、何となく12回ごとに鑑定志望者向けの理屈話が続いている流れに従って、時代の変遷について考察してみます。周知の通り、日本はここ半世紀ばかり平和が続き、平和ボケが社会問題を引き起こしつつあるほどですが、この平和はいつまでも続くのでしょうか。いまなお生きている戦時体験者の老人が子供の頃は戦争真っ盛りで、人の命は紙のように軽く使い捨てられていたような印象がありますが、こうした時代の人ほど命を惜しむ傾向が強く、逆に平和ボケで命も人権も過剰なほど守られている現代の若者の方が、ゲーム感覚で人生をリセットできるものと命や人生を軽く見る傾向があるように思われます。
 戦時は人命すなわち寿が翻弄されたばかりに、戦後はその反動で相剋する官(名誉)と印(知性)が乱高下した時代だと考えられないでしょうか。そんな五徳のパワーバランスから歴史の流れを見ることはできないか、算命学の理論から切り込んでみます。宿命を鑑定する技術を紹介するものではありませんので、算命学の理論から推理できる大局的な話に興味のある方のみご購読下さい。

 算命学の基本である六十花甲子は、日毎に日干支が変わっていき、60日で一周します。また月干支は月毎に変わって60カ月で、年干支は年毎に変わって60年で一周します。つまり年月日の3つとも同じ干支の並ぶ日というのは60年に一度しか巡って来ず、或いは60年経てば同じ干支の並びが繰り返されるということになります。このため同一の年月日が巡ることを還暦と呼び、日本では長寿のお祝いをしたりしますが、本来の意味は人がオギャアとこの世に生まれた瞬間からたゆまず時を刻んできた時代の気がひと巡りし、60年を過ぎた今、再び同じ気が巡り始めたということになります。

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