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架空書籍紹介(169冊目~175冊目)

169冊目「ニッチを集めて」

一億人に一人程度の共感しか得られなさそうなニッチ向けのジャンルに特化した官能小説家の話。「世界中で80人に届けば十分」と豪語し、超ニッチ系の作品を量産した。彼の死から数百年後、彼の産んだジャンルはそれぞれがメジャーとなる。彼の性癖が世界を歪ませた。

※実際には全人口=読書人口、ではないので、一億人に響けばいいという作風に80人の潜在読者がいるわけではない。

170冊目「漢字全部」

1ページ1文字ずつ漢字を紹介する。読み方、書き順、画数、その漢字を使った単語及び掌編小説を掲載。常用漢字、人名用漢字、中国の漢字などを合わせて、全8万ページとなる大作。となる予定だったが、漢字は増え続けるために未完となった。執筆陣に行方不明者も続出した。

※息子向けに常用漢字分だけでも作成しようとしたが、今のところ全然進んでない。

171冊目「人は知っていることを知りたがる」

似たような本が乱立し、またそれが読まれる事情の裏側について書かれた本。「九割がた知っていることだろうけど、一割くらいは未知のことが書かれているかもしれない」という心理や、新規情報に触れるのがつらい身心状態の読者の存在などに触れる。

※実際年齢を重ねると、新しいことよりも知っていること以外手を伸ばしにくくなるとかなんとか。

172冊目「墓場まで持っていくつもりだった」

家族にも友人にも、ネットで言うことすら躊躇うような、墓場まで持っていくつもりの話を、出版してすっきりしてみよう、という企画。性産業で働いていた話、犯罪歴、セクハラ、パワハラの懺悔録など。話題になったせいで執筆陣全員が身バレした。

※実際墓場まで持っていくようなつもりの話は、全部匿名で出してしまった方が楽になると思う。


173冊目「押しかけ家電修理」

動かなくなっていたDVDレコーダーが、ブレーカーが落ちた直後復活した。家電の不調はブレーカーを落とせば直るんだと勘違いした著者による、押しかけ修理話。Xで「家電の調子が」とポストした相手を特定して家に忍び込み、ブレーカーを落とす。もちろん捕まった。

※ドライヤーと電子レンジをうっかり同時使用した際に居間のブレーカーが落ちた。するとどういうわけか、しばらく前から電源が入らなくなっていたDVDレコーダーが復活した。それを受けて書いたもの。

174冊目「スズメバチ撃退法」

ベランダにやってきたスズメバチを見て悲鳴をあげて逃げた作者による、いかにしてハチを安全に撃退するかを研究した日々の記録。最終的に彼は一撃でかつ安全に倒せる化学物質を開発していく。一方彼の妻はスリッパでスズメバチを叩き潰していた。秒殺だった。

※実際には研究ではなく、ハチ撃退スプレーどこだったっけ、と右往左往しただけ。妻がスリッパでスズメバチを叩き潰すところは現実そのまま。

175冊目「妻と手を繋ぐこと」

妻と歩く時に大抵手を繋いでいる夫が、指摘を受けて考えたことをまとめた一冊。自分たちでは日常でも他人にとってはそうでないこともあるらしいこと。目的地に向かって歩くのではなく、歩くだけでエンタメなこと。子どもたちの前でやると断ち切られることなど。

※小学校の運動会への道のりで、妻と手を繋いで歩いたことを書いたら、意外と反響があったこと。自分たちでは日常でも、他の人にとってはそうではないことがある、という視点から。家族が順番に体調を崩していたので夜の散歩は途切れている。


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泥辺五郎
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