「It's My Life」
先日子どもたちの通う小学校で運動会があり思い出した話。
新都社で連載していた「音楽小説集」内の一編。四年前、娘が小学二年生の頃の運動会を題材に書いたもの。「音楽小説集」は歌詞の引用が問題となり公開凍結中。指摘作品を削除すれば再公開は可能なのですが、したところで別方面から違う話に対して指摘があるかもしれないので、復活の予定は今のところありません。
今回の話は歌詞の引用はありません。
作中に出てくる「マッドカプセルマーケッツ小学校」は、娘の通う学校名として過去作で使用したもの。
メンバーシップ様向けの記事となります。
以下本文
「It's My Life」
娘の通う市立マッドカプセルマーケッツ小学校の運動会に行ってきた。コロナ禍の中、午前中で終わりの短縮プログラム、保護者観覧は二名のみ(就学前の子供を連れて行くのは可能)というものだった。運動好きではない(というより、競争だとか、皆と同じ動きをしなければならない、というのが理解出来ないのだろう。私に似て)娘のココは「九月に戻ればいいのに」とぼやいていた。そうすれば運動会本番を永遠に迎えなくていい、という事だろう。そうなると今度は運動会に向けての練習をいつまでもしなければならなくなるが。
プログラムの切り替えや、お茶を飲むタイミングを促す際に、BON JOVI「It's My Life」が度々流れていた。
一年生の50メートル走の後、早くもココ達二年生の演技が始まる。昨年は時間があったのでFoolin「パプリカ」、マッドカプセルマーケッツ「WALK!」と二曲演れたが、今年はドラえもんのオープニングテーマだけである。猫の手の形をした手袋と、猫の尻尾をつけて、ココが踊っている。やる気は全く無さそうに。昨年はインフルエンザで一家全滅からの回復直後という、かなりの悪コンディションであったが、もっとやる気はみなぎっていた。ココにすれば「今さらドラえもんですか」という感じなのだろう。家ではアメリカのオルタナティブ・ハードロックバンドSystem Of A Downの曲やら、アニメ「銀魂」の歴代オープニングソングに合わせて踊ったりしているのだから。
サクサクと演技は進み、また「It's My Life」が流れる。二年生達が座っている席の後ろからココにねぎらいの言葉をかけ、開放されている体育館へ妻と息子の健三郎とで向かう。ミニカーを使った長いレースが始まる。
先日、私の勤め先で働く従業員とこんな話を交わした。
「地に足着けたら、死んでしまう」
彼とは十年以上の付き合いとなる。今の勤め先への日雇い派遣常連から脱出して自社バイトとなった先達である。彼の数カ月後、私も同じ道を辿った。その後の会社拡大路線の中で、私は運良く社員登用されたが、年齢が一回り上の彼は、どれほど責任のある仕事を与えられ続けても一従業員であり、残業時間が一人突出していた存在であった。私もいろいろ部署を変遷してきたが、彼も諸事情あって、私と同じ所に来た。働き方改革で残業時間も減り、現在の彼の手取りは十二、三万にまで落ちたとか。若い頃は某社の海外部署で働くやり手だったとか。かつて私も彼の手助けで機械を直してもらった事が度々あった。
「残業代減ったと言っても、社員なら○百万は年収保証されてんのやろ」彼と金の話なんてした事無かったのになあ、と思う。お互い日雇い派遣時代、梅田にあるビルに直接給料を貰いに行っていた。そこは顔馴染みの常連達と情報交換の場でもあった。どこそこは楽だ、どこそこはもう仕事を貰えないらしい、今度の大口募集どうする? みたいに。夢の途中の若者やら、とにかく日銭が必要な者達や、自ら足を踏み外したもの達や。
彼はビルから出た後パチスロ専門店に入っていった。
年齢は一回り違うが、偶然誕生日も血液型も同じ。ハードロック系の洋楽の話も出来た。最も、ブリティッシュ・ハードロックを基盤に置く私と、モトリー・クルーやガンズ&ローゼスなどがメインの彼とは少し毛色が違った。
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