レトルトに やきもちを焼く 料理人
先月に引き続き、妻が親知らずを抜く日がやってきました。
先月の妻は、親知らずを抜くのが初めてだった事もあり、当日の朝はかなり落ち込んでいる様子でした。普段は家に虫が出た時と、高い所の物を取ること以外で、私に頼ることなどない妻が、ご飯を作っておいて欲しいと頼って来るほどでした。
しかし、今回は何も頼ってくることはありませんでした。なぜなら前回、私が妻のために作った料理は、親知らずを抜いた後に食べるにはあまりにも気が利かないものだったからです。
まあおそらくそれ以外にも、出勤前の私になるべく負担をかけないようにと気を使ってくれたのもあるとは思いますが、やはり妻に頼りにされないというのは少しだけ寂しいものです。
その日、妻は朝から近所のスーパーマーケットに買い出しに行きました。私が娘の面倒を見ていられる時間が10時半までだったということと、幼稚園が夏休みで、元気がありあまってる娘を連れて買い物に行くのは想像以上に体力を使うし、何を買わされるかわかったもんじゃないからです。
妻が帰ってくるまでの間、私と娘は、祖父母の家から借りてきたダイヤモンドゲームで遊んでいました。近頃娘はこのゲームにハマっていて、一日に何回も付き合わされます。はじめのうちは、娘に負けることなんてなかったのですが、子供の脳みそは本当に吸収が早いもので、今では本気を出しても勝てない事がしばしばあります。
しばらくすると、エコバッグをパンパンにした妻が帰ってきました。どうやら、親知らずを抜いた後でも食べられそうな物を買い込んできたようです。
胡麻豆腐や卵豆腐、チョコプリンなど噛まなくても食べられるようなものが、所狭しと冷蔵庫にしまわれていきます。
その他には、ストローで飲めるタイプの紙パックに入った野菜ジュースや、アーモンドミルクもあります。どうやら食事がままならないのを予想して、飲み物から少しでも栄養を摂取しようとしているようです。
そして、キッチンの向かいにあるステンレスの棚には、レトルトの白粥と、玉子粥と、カニ雑炊が、朝の通勤ラッシュの整列乗車のように並べられています。順番は前から、白粥、玉子粥、玉子粥、カニ雑炊、白粥、カニ雑炊の順です。
この並び方に何か意味があるのかどうかはわからないですが、あまりにもキレイにまっすぐ並んでいるレトルト食品たちが、私には少しだけ、憎たらしく見えました。