タイムとミイラとおじいちゃん
「タイム」というハーブをご存知でしょうか。
聞いたことはあるけれど、実際に使ったことはないと言う方が多いのではないでしょうか。
爽やかな香りが特徴で、肉の臭み消しや、煮込み料理にはもってこいです。特にミートソースとは相性抜群です。
そんな「タイム」を私は好んで頻繁に使っています。
バジルだと華やかすぎるし、ローズマリーだとポップすぎる。そんな時にちょうどいいのがこの「タイム」です。
主張は強すぎないのですが、ちゃんと存在感があり、料理をこなれた感じに演出してくれます。
ハーブの中でも、殺菌効果や防腐作用が非常に強いのが特徴で、古代エジプトではミイラの防腐剤としても使われていたそうです。
話しは変わりますが、私は祖父が大嫌いでした。
祖父は昔の人にありがちな、いつも何かに怒っていて、非常に気難しいタイプの人間でした。
まだ幼い頃、そんな祖父にいきなり
「のり巻きだー!」
と言われ、シーツのような白い布で頭の先から足の先までぐるぐる巻きにされたことがあります。
遊んでいてそうなったのか、お仕置きをされていたのか、今となっては覚えていないのですが、まるで生きるミイラ状態の私はとにかく息が苦しくて、身動きが取れなくて、必死に
「ちょっとタンマ!」
「タイム!タイム!」と叫んでいました。
なんとか海苔巻きから解放された私は、恐怖におののき泣きじゃくっていたのを覚えています。
そんなこともあってか、出不精だった祖父が、当時恐竜や化石に夢中だったわたしを連れて、上野にある「国立科学博物館」に連れて行ってくれたことがありました。
巨大な恐竜の骨や、アンモナイトの化石などに非常に興奮したのを覚えています。
大人になるにつれて、祖父とはほとんど口を聞かなくなりましたが、国立博物館に連れて行ってくれた事は唯一、祖父との楽しい思い出です。
時空を越えて思い出を蘇らせる「タイム」。
これからもたくさん使っていきたいと思います。