【感想】2回目の映画、Dr.コトー診療所を見てぐしゃぐしゃに泣いてしまった話
※映画のネタバレあります。
ご注意ください。
ちなみに1回目の感想はこちらです。
今日、12月30日、2回目の映画Dr.コトー診療所を見てきました。
気づけば初日に見てから2週間経っていました。
この2週間は、映画の提示した16年後の志木那島、16年後のみんなのことを自分なりに受け入れ、起きた出来事を整理し、咀嚼するのに必要だった時間だと思います。
毎日映画のことを考えながらいろんな媒体のインタビューを読んだり、聞いたりしました。
そしてドラマを見てもう一度解釈を深めて、今日2回目を見てきました。
そもそも、リアルタイムで見てから16年、「志木那島はどうなってるかな」「みんな元気に過ごしてるかな」「剛洋くんは医者になったかな」「彩佳さんは無事戻ってきたかな」「コトー先生にまた会いたいな」とか想像·妄想しまくってた人間が、映画で大量の情報を脳みそにぶち込まれて平気でいられるはずがなかったんですよね。
自分が考えてた理想よりも現実はずっとずっとシビアで、それに対してショックも受けた。
だからちょっと混乱もあったし、受け入れるのに時間がかかってしまったんです。
剛洋くんに医者になって診療所を継いでてほしかったけど、現実は大きく違っていたし、原さんにも元気で漁師を続けていてほしかったけど、いきなり大怪我してるし、コトー先生にいつまでも元気で笑って幸せでいてほしかったけど、大変な病気にみまわれてるし……。
そんな厳しい現実を、受け入れるのにちょっと時間がかかってしまっていました。
でも、監督や吉岡さんが「なぜ今コトーをやるのか」をつきつめてこの映画を作ったという事実。
"どんなに厳しい現実でも、生きていくということ"を伝えるものなのかな、と今は感じています。
それがわかって、気持ちが整理できた気がしました。
恐ろしいほど畳み掛けられた厳しい現実に見ている方が心を折られそうになったけれど、その中でも諦めないコトー先生や剛洋くんや原さん、成長するハント先生やそばで支えてくれる彩佳さんたち家族の存在を描いた作品なんだと納得できたんです。
そして、インタビューにも助けられました。
剛洋くんが医者になっていなかったこと、本当に悲しくてショックで残念で、落ち込むコトー先生にめちゃくちゃ感情移入していたんだけれど、キネマ旬報の吉岡さんのインタビューで「剛洋くんが背負った島民の期待による重圧、お母さんがいなくてどれだけつらかったか」について富岡さんと話されていたと見て、スっと納得できるようになったんです。
原作漫画では、島から奨学金を出すことが剛洋くんのプレッシャーになることを避けるために原さんは船を売ってマグロ漁船に乗りました。
ドラマでは、原さんの船を漁協で買い戻し、原さんは漁師に戻って、剛洋くんは島に奨学金を出してもらって中学へ通い続けます。
そんな剛洋くんが、島民たちから当然のように「剛洋は立派な医者になって島へ戻ってくる」「コトー先生の跡を継ぐのは剛洋しかいない」と思われ、期待を受ける……それがどれほど大変な重圧だったか。
たった一人で島を出て、東京で勉強する剛洋くんに、コトー先生も含め、みんなが無意識のうちに期待しすぎていたのかもしれません。
そして剛洋くんには、お母さんがいなかった。
原さんには心配かけられない、これ以上苦労をかけられないという気持ちが大きかったはず。
憧れのコトー先生には、期待してくれてる先生には、重圧について話せない。
絶対に落とすことができない成績が落ちていって、大学の奨学金が打ち切られたとき、休学してバイトしてもお金が足りなかったとき、剛洋くんはどれだけ絶望しただろう……そんなふうに考えるとやるせない気持ちになります。
そして勤務したクリニックで起きた事件。
「苦しむ患者さんを前に、医者じゃない僕は何も出来なかった」と言った剛洋くん。
医者への憧れが強すぎて、医者という職業をいつの間にか神聖視しすぎていたのかもしれないですね。
「医者じゃないから救けられなかったと思ったのなら、良かったよ、君は医者にならなくて」
コトー先生の厳しい言葉。
一度目は医者じゃない君にもできることはある、医者だけが人を救けられるわけではない、というメッセージだと感じました。
二度目の今回は、2003年のドラマ8話で、原さんがコトー先生にかけた言葉を思い出しました。
「医者だって、ただの人間だろ」
医者だからといって、すべての人を救けられるわけじゃない。
原さんは剛洋くんにメスを持った人間が何もかも思い通りになると思ってほしくないと、あのとき言っていました。
だから、コトー先生の今回の言葉には、そういう意味も込められているのかなと思いました。
そんな言葉を受けた剛洋くんが、倒れたコトー先生に諦めないと叫ぶ父の姿を見て、心臓マッサージを続けて患者を蘇生させる。
医者という職業に、ある意味囚われかけていた剛洋くんが、自分の力で人を救った瞬間でした。
剛洋くんが心臓マッサージをするために走り出したとき、泣いちゃったなあ。
嬉しかったよ。諦めないでくれてありがとうと言いたい。
正直、2回目を見るのに本当に勇気が必要な映画でした。
コトー先生が大好きなので、先生が苦しむのを見るのはつらいです。
1回目映画を見たとき、自分が大変な病気なのにもかかわらず、島のことを心配したり、診療所の統廃合の話をしたりする姿に、恐ろしくなりました。
もっと自分を大事にしてって叫ぶ彩佳さんの気持ちが痛いくらいわかってつらかった。
それは2回目もそうだったけれど、まだ生きていたい、彩佳さんと生まれてくる子とこの島で生きていきたいと慟哭した姿を見て、どちらも五島健助という人の本心なんだとわかりました。
医者として島に居続けたいし、大好きな人とこの島で暮らしていきたい。
コトー先生はただただどうしようもないくらい、正直なだけだったんだなあ。
診療所で、「必ず全員救けますからね」って呼びかけたコトー先生。
「コトー先生は全島民1800人の診察をしていて、病歴などすべて頭に入っているからこそこの言葉を言える」とインタビューで語っていた吉岡さんの言葉を思い出して、なんという医師だろうと、また涙。
この言葉にこそ、島に来てから約20年のコトー先生の歴史の重みを感じました。
そして心臓マッサージ中、彩佳さんにまで異変が起きて、ついに倒れてしまったコトー先生。
原さんの「俺は諦めねぇぞ!」という言葉に反応し、みんなの叫びに応えるかたちで体を起こしました。
1回目は、ひとり倒れる姿が痛々しくて、誰かコトー先生を救けてほしいと思っていましたが、筧さんと吉岡さんのインタビューで納得したことがありました。
コトー先生が倒れたとき、確かに和田さんが走り寄るんだけれど、抱き起こしたりはしなくて、それは「和田さんは、コトー先生が必ず起き上がるとわかっていて、それを待っていた」からだったと言っていて、もう素直に凄いなと思いました。
信頼を超えて、「起き上がってくるでしょ」って"わかってる"からそれを待ってる。
だからコトー先生が起き上がったとき、和田さんはいつも通り冷静だったんですね。
原さんとした諦めないという約束に応え、本当に起き上がった先生。
患者さんを蘇生させた剛洋くんに微笑み、彩佳さんを救ける指示を出し、みどりさんの手術をする。
コトー先生もフラフラで立っているのもやっとなのに、手術を始めるとき呼吸を整えて自らメスを握るシーン。本当に凄まじい覚悟と、医師としての使命を全うする決意が伝わってきて涙が止まらなくなりました。
ラストシーン、1回目は正直最後にコトー先生が映るまで冷静に見られませんでした。
でも落ち着いて2回目を見ると、立てられている旗は変わらず「Dr.コトー診療所」だし、ちゃんと診察室から先生の診察を終えた村長が出てきてるんですよね。
そして生まれた子供が力強い足取りでコトー先生のもとへ。
子供を抱き上げるコトー先生の絵が美しい。
銀の龍の背に乗ってのイントロが流れてエンディング。
ぐしゃぐしゃに泣いてしまいました。
ということで、1回目は情報量のすごさに感情がなかなかまとまらなくて大変だったけれど、2回目で無事号泣したお話でした。
他にも災害現場で患者さんにお礼を言われるハント先生に泣いたり、どんなときでもみどりさんを大切に思うなみちゃんに心があったかくなったり、「スイッチオン!」っていうコトー先生が可愛さのかたまりだったり大好きポイントが大量にある映画だったので、絶対3回目も見に行きます!
どんなに厳しい現実の中でも、誰かが亡くなる姿を描かず、生き抜く姿を描いてくれた、映画Dr.コトー診療所を作ってくれた皆様、本当にありがとうございました。
大好きです!